23 再び、ラジオについて
「皆様、ごめんください。『ラジオinドリーム』パーソナリティの地蔵堂真一です。そして」
「え⁉これまたやんの⁉」
「そして!」
「…不定期開催なのか…。えー、皆様、ごめんください。同じくパーソナリティの牧ヶ花麻希です」
「このラジオは、私たち二人が、皆様から寄せられるお便りにお答えしながら、適当なタイミングで雰囲気に合ったクラシックをかけていこうという番組です。さて、二回目ですね」
「そうですねー…二回目って、どんなリアクションすればいいの?」
「牧ヶ花は前回の放送から何か反響とかあった?」
「ねーよ!そもそも前回のやつリスナーいたの?記憶に残ってる限りだと、お便りくれたの身内だけだったような気がするんだけど」
「まあいいんだよその辺は。このラジオは、どこかに流れてるかもしれないし、だれも聞いてないかもしれないラジオなんだから」
「ずいぶん適当だな…」
「それでは早速お便りに参りましょう!ラジオネーム『甘味処喜見城』さんからいただきました。ありがとうございます」
「ありがとうございます」
「『ごめんください』ごめんください。『さて、僕は普段、喜見城でお菓子を作っています。お菓子作りは非常にワクワクします。季節に合わせてお菓子を考えたり、オリジナルお菓子を創作したりと、とても楽しいです。また喜見城では、天界でしか手に入らない食材も使えるのでとってもおいしいお菓子ができます。いつもはつまみ食いばかりしていたうちの主も、最近は、友達にあげるんだ、などと言って僕のお菓子を手土産にしてくれるので、とてもうれしいです。皆さんはお菓子作りなどされますか?また、好きなお菓子等ありますか?』とのことですが…」
「もうね、喜見城ってだけで≒身内だよね」
「あはは~『主』だってさ。実は我々、おそらくこの『甘味処喜見城』さんのお菓子食べたことあるんですよね」
「すごくおいしいよね。言葉で言い表せないくらい」
「ねー。ものすごくおいしいんですよ。ドレッドノートなんて目じゃないくらいに。さて、お菓子作りね、私は時々やるよ。と言っても『甘味処喜見城』さんみたくすごいものは作れないけど」
「ああ、そういえばクッキーとか作ってたね」
「牧ヶ花は?」
「わたしも時々作るよ」
「下宿先で?頑張るね。どんなの作るの?」
「う~ん、クッキーとか、マフィンとかかな」
「今度食べさせて!」
「どうやって持ってくんだよ」
「私の家で作って。お勝手貸すよ。材料揃えとくし」
「え~…まあ、いいけど…。でもあんたんちの台所か。なんかかまどとかありそう」
「さすがにかまどはないよ。ある物と言えばピザ窯くらいで」
「ピザ窯あんの⁉」
「好きなお菓子については…」
「ピザ窯スルーかよ」
「好きなお菓子はいろいろあるけど、私の一押しは『甘味処喜見城』さんのお菓子かな」
「分かるわ~。はずれがないよね。食べると天にも昇る心地だもん」
「牧ヶ花も来たい?こっちに」
「もっと生きたいわ。しかもあんたのとこは天じゃなくて冥土だろ」
「はい、『甘味処喜見城』さんには、番組特製オリジナルステッカーを差し上げます。さー、続いてのお便り参りましょう。ラジオネーム『荒れる日本海』さんからいただきました。ありがとうございます」
「ありがとう」
「『地蔵堂さん、牧ヶ花さん、ごめんください』ごめんください。『前回の放送、楽しく聞かせていただきました』いたぞリスナー!」
「ほんとだ!いた!リスナーいるの?とか言ってごめん!」
「『私は空蝉で霊媒師をしている者です』霊媒師⁉『ある時ラジオのチャンネルをひねっていたら、突然ものすごい霊の気配とともにこの番組が流れてきて、とてもびっくりしました。一緒に聞いていた友人に聞こえるかと尋ねると、聞えないと言われたので、どうやら私のような者にしか聞こえないようです。皆さんは最近、どんなことでびっくりしましたか』とのことですが…」
「そりゃびっくりするよ!」
「まさか現実世界にリスナーがいるとはね」
「どうやってお便りきたの?」
「お葉書をいただきまして…」
「妖怪ポ〇トかよ!」
「牧ヶ花は何かびっくりなこととかあった?」
「友人が突然死んだことです」
「何だって⁉誰だ急に死んで牧ヶ花を悲しませるやつは⁉」
「お前だお前!」
「えへへ。でもそっちなの?びっくりしたこと。幽霊と暮らし始めたことの方じゃなくて?」
「確かにそれもびっくりしたけどね」
「牧ヶ花はね、実は幽霊と暮らしてるんですよね」
「朝起きたら夢の中の人がいるんだもん。しかもなんかちょっと透けてるし。でも、それもこれも地蔵堂が死んだことに始まってるでしょ。やっぱり地蔵堂の死が一番かな。後、夢が死後の世界だったってことにも驚いたわ」
「私も最初、三途の川わたる手前の出入国審査のとこで説明してもらった時はびっくりした」
「冥土の近代化!地蔵堂はほかにびっくりしたこととかないの?」
「う~ん…何なら今びっくりしてるけどね。現実世界にリスナーがいて、しかも霊媒師だなんて。牧ヶ花、もし会ったら私を降霊してもらって」
「なんでだよ。わたし達ちょくちょく会ってるじゃない。わざわざ降霊してもらわなくても地蔵堂とお話しできるのに」
「なんか一度降霊されてみたいなって思っちゃって。どんな感じなのかなって」
「…いや理解できないわ、その気持ち。そもそも霊を呼び出すとか、危険なことなんじゃないの?」
「何の前触れもなく突然呼び出されたら、我々もびっくりだし、場合に寄っちゃふざけんなってなって、危険なことになることもあるけどね。事前に分かってれば準備できるし」
「なんか、家突してくる彼女みたいだね。『来ちゃった♡』『連絡くらいしろよ』みたいな」
「はい、『荒れる日本海』さんには、番組特製オリジナルステッカーを差し上げます。では曲にいきますか。びっくりと言ったら、あれかな」
「何?ハイドン先生のとか?」
「そうそう。フランツ・ヨーゼフ・ハイドンの『交響曲第九十四番』。いわゆる『驚愕』ってやつです。冥土フィルハーモニー管弦楽団による演奏です。どうぞ」




