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80.兄妹はスタンピードを乗り切り帰宅する

 凶暴なモンスターたちの雄叫びは鳴りを潜め、スライムやゴブリンが動いているのが遠くに見える。


「さすがにこれで終わりかな?」


 森林のモンスターの集団が全滅してから既に数十分が経った。その後もちらほらとモンスターが現れたが、今ではそれも無くなり見えるのはスタンピードとは関係なく出現したのであろう1層のモンスターのみ。


「そうだな。経験値稼ぎも終わりだな。いやー、結構上がった」


 前にステータスを見た時からレベルが2上がった。考えてみればあの熊もかなりの経験値があったのだろうと思う。今回のスタンピードで、計4体のユニークモンスターを倒すことができた。

 熊以外のユニークモンスターは魔法もスキルも使わないで勝てる程度の強さではあったが、それでもユニークモンスターだ。ドロップは期待できるだろう。

 討伐したモンスターのドロップアイテムは全て俺とハルのアイテムポーチに【獄門】から直接収納したため、何がドロップしたかは把握できていない。これからゆっくりと確認していく予定だ。


「うーん、暇ではあったけど満腹だし、動いてないから楽だったね。この後どうする?」


「もう夜だし、風呂入って寝ないか? さすがにリムドブムル戦もあったし疲れた」


「そうだねぇ。そう考えたら眠くなってきちゃった。私先にお風呂入っていい?」


「いいぞ。俺は装備の手入れしてるからゆっくり休め。んじゃ、帰るか」


「そうだね。ほいっ」


 ハルが軽く手を振り上げると、【獄門】により開いていた穴が消える。

 俺はそれを見届けてからアイテムポーチに手を入れ、低階層の金属素材を大量に取り出す。

 目の前にある【バインド】と『錬金』による金属の茨は迫りくるモンスターに耐えるため、より強力な素材に変えてあり破壊することは容易でない。

 左手で低階層の金属素材に触れ、右手で茨に触れ、『錬金』を使う。茨の素材が変化したことを確かめてから刀を当てれば、茨は容易に切れていく。


「これでいいか」


 アイテムポーチには大きな茨のままでも入るのだが、今後何かで使おうとしたとき、大きなままの状態だと使いづらいのでこのように小さくしてから収納するのだ。


「よし、帰ろー‼」


 ハルが元気よく地下室へと帰っていくのに苦笑いしながらついていく。そういえば。

 後ろを振り向いてみれば、入り口など目指す気配も無く這っているスライムが見える。


「今回のスタンピードはリムドブムルを討伐したことと関係があるのか?」


 家に戻り、武器を磨きながら考える。ハルは装備を脱ぎ捨て風呂へと向かっていった。

 今回のスタンピードだが考えてみればいくつか不審な点がある。タイミングのこともあり俺たちはリムドブムルを討伐したこと、または討伐に使ったあの大爆発がスタンピードの直接的な原因だと思っていた。

 だが、爆発が原因だとしたらモンスターは俺たちに向かってくるだろう。となるとリムドブムル討伐で、何かが起こったという可能性が高い。

 俺たちが罠で倒したモンスターの中にスタンピードを引き起こすようなモンスターはいなかったので、特殊モンスターが現れたということはないはずだ。

 となれば、リムドブムルを倒すとダンジョン全体がスタンピードを起こすということだろうか。いや、そんな事実があるとするならば俺たちが知らないはずが無い。最近ではダンジョンの情報も調べているのだ。中でもリムドブムルに関する情報は多く集めていたつもりだ。

 そしてもう1つの違和感。


「タイミングが変なんだよな」


 段々眠気と共に頭が回らなくなってくる。寝落ちしてもいけないので思ったことを口に出してみて目を覚ます。

 あのスタンピードがいつ起こり始めたのかは正直なところよく分からない。俺たちが気づいたのは森林からモンスターが出ていくのを見た時だ。

 とはいえ、ダンジョンの入り口に溜まっていたモンスターの種類からそこまで時間が経っていなかったことは分かる。戦闘中か戦闘後か。内的要因か外的要因か。


「外的要因?」


 ダンジョンの階層ごとに現れるモンスターの種類は何処のダンジョンでも同じだ。それならば、今回の明らかに異常なスタンピードの原因が俺たちのダンジョンのさらに外にあってもおかしくはないのではないか。

 手近にあったパソコンに手を伸ばし、その手を止める。


「おにいー、お風呂あがった。おやすみぃ」


 ハルはふらふらしながら自分の布団を敷き、寝てしまう。


「明日でいいか」


 磨き終えた武器をアイテムポーチに入れ、金庫に仕舞う。すぐに風呂に入り、いつも通りハルの隣に布団を敷き、俺も眠りにつくのだった。

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