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地下室ダンジョン~貧乏兄妹は娯楽を求めて最強へ~  作者: 錆び匙
3章 貧乏兄妹は強さを求め龍狩りへ
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73.兄妹は戦闘準備を進める

お待たせしました。

「よし、準備できたか、ハル」


「大丈夫。ポーションとかの消耗品も平気だよ」


「じゃあ、行くか」


「レッツゴー‼」


 傭兵団の戦闘を見て、改めて自分の戦い方を考えてみて。結局は今まで通りレベルと火力でごり押しと決めた。人員という手数が無いのだからこれは仕方がない。

 今は12月。リムドブムルと出会ってから随分と時間が経った。とはいえまだ1年も経っていないことを考えると早かったな、と思う。

 いつも通り転移の間を抜けて森林に降り立つ。


「よし、ハル。リベンジマッチだ。行くぞ」


「りょーかい」


 俺たちが戦場にと選んだのは一番手前側の壁際。傷を負ったリムドブムルは巣へと帰り、回復を試みるため、森林の奥の方にある巣からできるだけ遠ざけようという理由だ。

 そして。今回は今までとは違い、色々な小細工を用意してきていた。


「おにい、行くよ。それ」


 ハルが手に持っていたナイフに魔力を流し、上へと投げる。当然のごとく、このナイフがただのナイフであるわけがなくて。


「よく燃えるなぁ」


 ナイフには2つのごみスキルが付けられていた。それが『発火』と『暴走』

 発火は文字通り使うとライター程度の火が発生するスキルである。そして『暴走』


 暴走はハルもよく使うスキルで魔力の流れを乱し、魔法の威力を強化する。ただこのスキルには大きな罠があった。魔力が乱れているのだ。当然繊細な魔法を使うことはできず、魔法の火力だけに任せた力押しとなる。

 ハルはそれを魔力操作のパッシブで無理やりいつも通りに魔法を使っている。

 前衛技能でも同じような狂化というスキルがあるらしい。

 では、このスキルを物が使ったらどうなるのか。普通ならどうにもならない。暴走も何もそもそもの魔力が無いのだから当たり前だ。しかし直前に魔力が籠められればどうか。スキルの発動とは別の物からの無理やりの魔力供給。

 暴走のスキルは籠められた魔力をふんだんに使い、その物体の崩壊と共に使うはずだった魔法を強化する。

 この方法は、魔法の媒体となる物に加え、暴走のスキルと、強化される側の魔法の用意が必要になる。

 さらに言えば物は魔力を溜め込むことはない。そこに無理やり魔力を流し、少しの間だけ、魔力を留まらせるという高等技術。

 それの結果が使ったもの全ての消滅なのだから、使う人はいないだろう。


 暴走と発火の付与されたナイフはハルから魔力を供給され、小さな火を強化する。


「どんどん葉っぱが無くなってくね。後、熱い」


 強化された小さな火は大きな火球となり、ダンジョンの丈夫な生きた葉へと燃え移り、焼いていく。その結果が疑似、山火事だ。

 この森林に茂るほどの木となると、油程度では焼くことができないだろう。だからこその、この方法。葉だけを広範囲にわたって除去するには最も良い方法だろう。

 ちなみに葉以上に丈夫な木はおそらく燃やすのは不可能だと思われる。見上げてみれば葉の付いていた枝は良くて焦げ付く程度で殆ど無傷だった。


「これで後は切るだけだな、『スピード』『パワー』」


 足を曲げ、刀を抜く。

 そして、強斬。刀を斜めに振り下ろし、葉の燃え尽きた木から順に斜めに切っていく。

 このダンジョンの木はとてつもなく丈夫だ。持って帰ることさえできれば、現代の鉄筋コンクリートの強度上回る木造建築だって作れるだろう。

 ならば、と考えた。その強度を使えばトラップが作れるのではないかと。

 確かにリムドブムルは丈夫だ。傷を負わせ落下させたとしても地面に落ちる程度ではたいしてダメージを負わないだろう。柔軟で丈夫な体が衝撃を和らげるに違いない。

 しかし落ちる場所が地面ではなく、剣山の上であったら。ある程度間隔を空けて植わっている木も鋭くとがらせれば、体の大きなリムドブムルにとっては恐ろしいトラップに成り得る。

 木を切る場所は地面から約5メートルほど。しっかりと刺さる長さを保ちながら上空との距離を空けてリムドブムルの位置エネルギーを大きくする。


「よし、できたぞ。ハル、魔玉渡してくれ」


 しばらくして周囲の木を斜めに切り終え、次はハルから魔玉を貸してもらい、アイテムポーチから大量の金属系素材を取り出す。それは今まで入手した金属素材の全てだった。


「よし、いくぞ。『錬金』」


 右手で上にとげを向けた木に触れて、左手を素材の山の中に埋める。錬金を強制的に使い、木の表面だけでも金属に変えていく。

 わざわざ魔玉からはハルの魔力を抜いて俺の魔力を込めてあった。魔力を補充しながら次々と木の表面を金属に変えていく。

 その間、ハルは切り倒した木のいらない部分を押して運び、モンスターの接近を遅延させる即席の塀を作っていた。

 切った木の全てを金属に変えた頃。魔玉の中の魔力は最初の半分ほどになっており、周囲には様々な色で光を反射する大きな棘がいくつもそびえ立っていた。


「じゃあ、おにい。いくよ」


「了解。失敗すんなよ」


 上に手を向けてみればそこにはリムドブムルが優雅に飛んでいるのが見える。これから勝負する相手。相手にとって不足はない。


「行くぞ‼」


「行くよ‼」


 ふたりの威勢の良い声は森林に響き渡り、その手からは魔力が迸るのだった。

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