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地下室ダンジョン~貧乏兄妹は娯楽を求めて最強へ~  作者: 錆び匙
3章 貧乏兄妹は強さを求め龍狩りへ
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69.傭兵団は難なく森林へ

 傭兵団のメンバーがダンジョンに進み、リーダーの男があるアイテムを取り出す。未だ日本では見つかっていないアイテム。見た目はまるでガラケーのようで半分に折れる金属のような石のような素材でできたもの。

 リーダーは慣れた手つきでそれを開き口元へと当てると、そこへ魔力を流す。

 そのまま英語でしゃべりだしたリーダー。しかしその声と重なるようにして案内係やついていく野次馬の頭の中に声が届いた。


「こんにちは もういちど わたし じょん あんがす べつ だいひょう」


 その声はとても拙く片言ではあるが皆の頭の中にしっかりと日本語で浮かぶ。

 訳すのならば“こんにちは。改めまして、私はジョンです。angus anotherのリーダーをしています。”とでも言ったところだろう。

 初めて見る翻訳の魔道具に周囲の人たちは驚きの声を上げる。


「さき はなす された きまり まもる おねがい」


 先程注意事項として言われていたルールを守れということか。

 ルールは敵の処理は全てこちらで行うのでモンスターへの敵対行動をとらないこと。騒がないことなど複数。ここについてくる人には念入りに説明されていた。

 無作為に集まったように見える複数の野次馬パーティーも厳正な抽選で見事あたりを引き当て、同行を許された者たちなのだ。当然、抽選に落ちた者は森林にて到着を待つこととなる。


「さいご これ ほんやく どうぐ はなす できる きく できない よろしく」


 最後に言うが、このアイテムは翻訳する魔道具であり、話した言葉を翻訳して相手に聞かせるが、話された言葉を翻訳して聞き取ることはできないと。つまりは話しかけたければ英語にしろと。そういうことだ。


 上の方の階層では傭兵団の実力を見ることは不可能だった。当然と言えば当然だろう。ある程度までステータスを上げていればそこらのモンスターなんて軽く蹴るだけで吹き飛ぶのだから。

 ただ、吹き飛ばすわけでもなく。軽く蹴飛ばすことで、ほとんど原型をとどめたまま殺していくのは、その技量の高さが窺えた。


 時間はかかりながらも順調に歩みを進めていく。その行動には何の支障もなく、時間通りに進むことができている。

 ホブゴブリンは軽い蹴りで一撃。黒狼は傭兵団のパーティーが剣を軽く振るうと首が宙を舞った。

 人化牛はスキルで一撃。それが最初に手に入れられるスキルである強斬なのだから驚きだ。

 と、まあ、戦闘風景については見ることができないため、24人の傭兵団のメンバーを3人ずつ8グループに分け、余った一人のところへ日本人を入れることで、戦闘の記録をとることができた。

 とはいえ、見ていた日本人のレベルと傭兵団のレベル差が大きすぎて戦闘を視認できなかった者もいたらしい。それについても強度いくつの力をもってしても速さを捉えることができないという記録にはなるのだが。

 ボスの討伐は想定よりもはるかに早く、10秒も掛からない。その結果、傭兵団24人が森林に着いたのが2時30分。


 とうとうここに外国人による日本初のリムドブムル討伐が記録される。




 森林の入り口の方から歓声が聞こえ、そちらに向かって数体のモンスターの気配が流れていくのを感じる。

 それを気にすることもなくあくびをする2人の影は高き木の枝の上。地上にいては心が休まらないので木の上に上がってきていたのだ。

 特にやることも無いので、パルクールの真似事のようなことをして遊んだりなどしていた。それでも暇なものは暇。

 兄妹の気持ちは欠伸として外に現れ、付近のモンスターを殲滅してやろうか。

 そんなことを考えると共に歓声が聞こえてきたわけである。

 安易な気分で余計なことをしなくてよかったと密かにため息をこぼす。


「やっときたねぇ。うわぁ、強いなぁ」


「そうだな。モンスターの対処も手慣れてるようだぞ」


 傭兵団が来た方へと首を傾けてみれば寄ってきたモンスターを音もなく殺す4人の姿。

 そして反省した顔でたたずむ複数の日本人。


「ん? あれは、ガラケー?」


 ハルが傭兵団のメンバーが取り出したものに首をかしげる。


「看破の結果はどうなってるんだ?」


「うーん、こんな感じ」


『翻訳の携帯具…言葉を周囲の人の理解できる言語へと変えて届ける』


「まんまだな。あと魔力の消費も少なくない」


「うん。さすがに翻訳と、私たちには英語しか聞こえないから近距離専用のテレパシーかな。戦闘中には使えないだろうね」


 翻訳の携帯具を持つものが話すたびに魔力が流れていくのが見えて、英語のみが聞こえる。当然のごとくさっぱり理解できなかった。そしてその言葉を聞く度に同行者であろう日本人が少し首を傾げ、納得したような顔で続きを聞くということを繰り返していた。


「たぶん、翻訳の精度もそこまで良くないな」


「表現の違いとか常識の違いで、直訳だとおかしくなるみたいな?」


「どうだろうな、聞いてみないと分からないが」


 翻訳の携帯具がバッグに仕舞われるのを見届け腰を上げる。


「Let's go」


「あっ」


「初めて聞き取れたな」


「だね」


 兄妹は武器を構え、森林の中へと歩を進める傭兵団その他諸々を木の上からこっそりと尾行するのであった。


 全てはリムドブムル討伐のために。


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