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地下室ダンジョン~貧乏兄妹は娯楽を求めて最強へ~  作者: 錆び匙
3章 貧乏兄妹は強さを求め龍狩りへ
68/132

68.傭兵団はダンジョンへ

大変お待たせしました。

体調不良に陥りましたが無事回復しました。

本日9月1日。

夏休みの終了と共に投稿再開です。

 人気のない森の中。風は無く木々は揺れることもなく、聞こえるのは獣たちの唸り声。そんな中、異常なほどに気配を薄くして木に持たれながら会話する2つの黒い影。


「なぁ、リムドブムルの攻略が来るのは午後からだったよな」


「うん、午前中から道案内ありでダンジョンに潜って森林に着くのは3時って言ってたね」


「だったらここまで早く来る必要なかったんじゃない?人いないし」


「私、また着替え中に人に見られそうになるのは嫌だからね」


「あぁ、そんなこともあったな」


 手に持った懐中時計を眺めてみれば、2本の針が指すのは真上。つまりは12時ということ。3時ほどに来るというのだからさすがに早く来過ぎだと思う。

 アニメなんかだと1時間前にデートの集合場所に来てしまう人が描写されているのを見るが、さすがに3時間とはどうなのだろう。正直俺は1時間前でも早すぎると思う。

 集合は20分前から10分前ぐらいがちょうどいいというのが俺の持論だ。何か仕事で大事な人と会うわけでもないのだから。



「おにいは、ぼーっと何を考えてるの。あ、『亀裂』」


 暇を持て余しにそんなことを考えていれば、ハルからの質問が飛んできて。ついでにモンスターも跳んできた。尚、そのモンスターは亀裂の魔法で一刀両断にされた模様。

 人が来た時のために音の出る爆破系の魔法は禁止してある。


「早く来過ぎだと考えてたんだよ。電子機器も娯楽グッズも無いから暇つぶしもできない」


「モンスターがちょこちょこ来るから寝ることもできないしね」


「片方が寝たらもう片方が暇になるからな」


「暇だねぇー」


「暇だなー」


 のんびりと見上げてみれば見えるのは空を舞うリムドブムル。先程、頭上を覆う木々の葉を落としたおかげで上がよく見える。

 空は遥か高くに見える天井で。


「ハル、ここの天井ってドンくらいの高さあるんだ? 明らかに降りてきた階段より長いが」


「うーん、1000はあるよね。さすがにこの高さは分からない。でも高さ1キロあったら十分だよね」


「たしか世界一高い建物も1000メートルは無かっただろ。たぶん」


「横はその何倍だろうね」


「見当もつかないな」


 横を眺めてみれば見えるものはたくさんの木々。壁なんて見えやしない。


 会話は終わり次に話すことも思いつかない。兄妹となると常に一緒にいるので新しい会話が無いのだ。

 兄妹は3時間もの待ち時間を強いられ、いや、自分からなったのか。ともかく、海外から来た傭兵団が森林に姿を見せたとき。2人の目はうつろとなり唯々、近くに来たモンスターを狩っていたのだった。



 そしてこちらは海外から来た傭兵団。その名前を『angus another』。

 ダンジョン探索のためにダンジョンに興味を持った傭兵を集め、リーダーであるangusが作り上げた傭兵団だ。

 人数は不明だが、上位のグループのレベルは50を超えているという。これは日本で最もレベルの高い勇者でさえも簡単に倒せるほどのレベルだ。

 その中でも今回、日本に来ているのは24人。説明によれば戦闘するための探索者が20人で、物資などの補助のためのメンツが4人だそうだ。ちなみに補助のメンバーでさえもレベルが30を超えているのだから笑えない。


 今日はダンジョンに潜り実際にリムドブムル討伐を実践することになっており、東京ダンジョンの前には傭兵団の戦闘要員20人と森林に行くことができる上級探索者たち。他にも多数の報道陣や、広場を埋め尽くさんばかりの野次馬や観客が集まっている。


 このような傭兵団だが、2日前には大きなホールでの通訳付きの講演会が行われており、そこではリムドブムル討伐の方法以外について実にたくさんのことが語られていた。その情報は傭兵団が独自に集めたものや、国を回る間に知りえた情報であり、日本人にとっては初めて聞くようなことも多数含まれていた。

 まずはダンジョンのルールについて。これは誰もが知っている通り4人を超えた人数の探索を禁止する。これを破りガン・セーンの手痛い仕打ちを受けた政府には身に染みて分からせられたことであった。

 ただ、この情報にももっと細かいルールが発見されている。

 どういう仕組みなのかは分からないが5人以上で探索していたとしても、それぞれの動作が4人ずつであれば問題が無いということ。

 つまり8人で潜っていたとして、モンスターが現れたとしても4人だけが戦闘態勢に入り残りの4人は何の準備にも入っていなければ共闘の扱いにはならないそうだ。

 しかもダンジョンはこの判断を視覚的な情報で行っているらしく、戦わない4人は武器を構えず戦闘の体勢すらも取っていなければ、いくらモンスターに殺気を飛ばしていても問題が無いらしい。

 それに加えこのルールを破ったことへのペナルティー。日本で一般に知られていることと言えばアイテムドロップや経験値が無いことと、なんらかの障害が起きる可能性のあること。ただ、傭兵団はこれ以外の部分に目を付けていたらしい。

 何故最初にダンジョンに潜っていった人は帰ってこなかったのか。

 入り口で電子機器が使えないことや、ステータスの発生に驚き、ダンジョンの中へ潜らなかった人は問題が無かった。

 ただ、世界中どこでも組織で行動しダンジョンの奥へと進んでいった警察などは帰ってくることが非常に少なかった。

 そこで勇気なのか、この傭兵団は実際にその状態を作り出し、実験してみたらしい。

 結果、モンスターがおかしくなった。モンスターが何故か強くなって行ったり、統率の取れた動きをして退路をふさいだりなどと。

 それは明らかに侵入者を殺す意思が示されていた。尚、その状況は付き添ったステータスを上げた傭兵団のメンバーが一掃したので怪我人ゼロだったようだ。


 次の情報はルールというより性能。ボスモンスターには高い知能があること。これはユニークモンスターにも該当し、人間ほどではないが本能ではなくしっかりとした意思で行動を起こしていることが確認され、それを見たことからダンジョンも実はボスモンスターではないかとも考えたらしい。

 ちなみにダンジョンは鑑定しても何も出ないので正確なところはよく分からない。

 ただ、知能の高いモンスターもさすがに言語は理解していないようで、現在最も知能が高いように感じられた人化牛を拘束し、色々と語りかけたものの反応は無かったらしい。

 その情報についてはモンスターに話しかける酔狂な人はいないため、知能が高くても言語を学ぶことは不可能だったのだろうという結論に達した。

 実際に、講演会の会場ではモンスターに話しかけたことがあるかという質問に手をあげた人は1人もいなかったらしい。まあ、日本人なのだから恥ずかしくて手をあげられないだけの可能性が高いが。


 他にも傭兵団の人は色々なことを話し、数時間後、講演会は終了した。

 この講演会は撮影され1週間ほど後に販売されるらしい。


 そして2日が経ち。ついにダンジョンへと潜る日になる。


 テレビカメラやマイクを向けられたリーダーが何事かしゃべる。


「これから私たちはダンジョンへと潜ります」


 当然横にいた人が通訳をする。それが終わればリーダーは再び口を開く。


「私たちは無事に龍を討伐し帰ってくることを約束する」


 にぎやかだった広場に緊張が走る。


「出陣」


 その声と共に広場には歓声が響き渡り。傭兵団20人や、案内者、他の探索者はダンジョンへと潜っていったのであった。


 後から聞くに傭兵団の人がダンジョンに入る前、最後に口にした言葉は。


「イッテキマス」


 そんな片言の挨拶だったそうだ。


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