65.兄妹は装備を手に入れ、情報を手に入れてしまう
「やっぱこの肉って美味しいよな」
「全くお腹は膨れないけど。もしかしてフォアグラよりおいしいんじゃない?」
「食べたことないから分からないな」
俺たちは夕食の共にほんの1切れの肉を食べている。下級龍の肉。リムドブムルのドロップ品だ。いや、正確に言うのならばリムドブムルの部位破壊のドロップ品だ。
あれから他のモンスターでも部位破壊が可能なのかを調べてみた。その結果旨味はそこまでないが可能だということが分かった。条件はそのモンスターがボス級であること。5階層ボスのホブゴブリンには部位破壊のドロップは無かったが、10・15階層の黒狼、人化牛では確認することができた。
ただ、部位破壊によるドロップは本体を殺したときのアイテムの1割あるかどうかというほどしか入手できないため、これからも得することは少ないだろうと判断した。
また、部位破壊のドロップを得た後も得る前も本体のドロップ量には変化が無いことも分かった。つまり、レアな魔道具やスキルをドロップする可能性が有り、次にいつ出現するか分からないようなユニークモンスターは部位破壊をしてドロップ品を得てから殺した方が良いということだ。
そんな実験をしながらリムドブムルに魔法をぶつけ、休憩し魔力を回復させる生活を送り、忘れかけていたパスポートを受け取りに行って、再びダンジョンへと潜ること2週間。とうとう俺たちは万全の装備をそろえることに成功していた。
最初の数回は1回目の部位破壊で味を占めたので足を狙っていたのだが、そこで別に足でなくてもいいのではないかと気づいてしまった。そうして得ることができたのがこれ。
『下級龍の飛膜…下級龍の翼の膜』
翼の部位破壊をしたことにより得ることのできた現在俺たちが得ることのできる最強の布系素材。これも1つだと1辺1メートルほどの四角形だったため、数が必要だった。
リムドブムルに関しては森林から出たところで回復してしまうので狩り放題なのだが、魔力の回復が遅く1日ずっと狩り続けるわけでもない。その間の時間は暇なので森林を、魔力を使わないで暴れまわり、リムドブムルの巣を見に行ったりなどした。
どうやら俺たちに翼を破壊されたリムドブムルは、そのまま陸に落下した後、歩いて巣まで戻るようで、その道には血が滴り地面が抉れていた。
さらにリムドブムルが巣に戻ると驚異的な速さで回復していくのが分かってしまった。剥がれ、焦げた体の表面は数分で元に戻り、無くなった部位も1時間ほどで再生していた。つまりは部位破壊の恩恵が得られるのも1時間程度ということだ。
そして地面に落としてから近距離で戦うとしても巣に戻る前に攻撃をしかけ、巣に戻れないように立ち回らなければいけないことが分かった。森林のボスは思った以上に前衛技能殺しなのかもしれない。
そして最後に。この事実は俺たちもつい数日前に気づいた。レベルが上がらないのだ。いくらリムドブムルからドロップを得てもレベルが全く上がらない。よく考えてみれば当たり前だ。殺していないのだから。モンスターから経験値を得ることができるのは殺したときだけだった。
俺たちも暇つぶし程度にしか通常のモンスターは殺していないので、レベルも上がるわけが無く。俺たちはこの2週間でレベル的な変化は何もせずに、ただ武器だけを強化していたと。
「で、おにい。これで完成?」
「あぁ。武器はこれで出来る限り強化出来たな。おそらく勇者と同等以上の性能はあると思うんだが」
「スキルは強斬のままだっけ?」
「それは仕方がないんだよな。スキルが付いた武器なんて滅多に手に入らないし。手に入っても弱いものだったりするからな」
「トンファーも重く硬くなっただけだからね」
武器の強化は予定通りトンファーには爪を、刀には鱗を使っている。装備などの布の部分には飛膜を使えばよかった。ただ、下級龍のアイテムは強力だからだろう錬金にも結構な魔力を使うことになった。
その過程で魔力を回復させるためのポーションを探してみたのだが現在では見つかっていないそうだ。
「ということで、俺たちは遂に海外に向かうことになる」
「嫌だねぇ。英語なんて中学の範囲しか分からないよ」
「俺も分からん。で、俺たちの目的はリムドブムルの倒し方だ。どうしてもレベルアップだけではとどめが刺せない」
「だからと言って装備を整えても魔法の威力は変わらないから、後衛技能の私たちにはあまり意味が無い」
「そこは死なないためという意味があるんだが。で、そうなるとリムドブムルを倒した人たちを見る必要があるだろ」
「そうだね」
「だからその人たちがいつどこのダンジョンに入っているのかを調べる」
「全部英語だから分からない」
「片っ端から翻訳ソフトにコピペしろ」
「めんどくさいー」
朝からせっせとパソコンとスマホを使い海外のサイトを調べていく俺たち。翻訳ソフトに入れても意味の分からない日本語になってしまうこともあるが、それ以外の翻訳手段が無いので、なんとか推測していく。
そもそもサイトの題名から調べてかなくてはいけないので、まったく関係のないサイトを見てしまっていたりと、調べるのは非常に困難だった。
結局それが見つかったのは数時間後。意外にもその情報は息抜きに見ていた日本のダンジョンサイトに載っていた。
『唯一の森林踏破者アメリカの傭兵団、ダンジョン攻略世界ツアーにて、来日決定‼』
そのサイトを見た俺たち。あんぐりと口を開けて固まってしまった。なんでもこの情報、一ヶ月前には公開されていたらしい。
つまりは俺たちの消えた父親捜し兼パスポート入手は。
「「無駄足だったー‼」」
ただの旅行となり下がったのであった。
「まあ、金も心もとなかったから良いけど」
人間どんなことよりも情報が大事だと身をもって理解してしまった今日この頃…… はぁ。




