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地下室ダンジョン~貧乏兄妹は娯楽を求めて最強へ~  作者: 錆び匙
3章 貧乏兄妹は強さを求め龍狩りへ
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58.兄妹は自宅ダンジョンへと帰還する そして暴れる

「帰ったぁ」


「ただいまー」


 俺たちが父を発見した日から2日。翌日はパスポートを作る為の書類作成などを行い、そのまま帰ってきてパスポートの申請をしてから家へと戻る。パスポートはこんな簡単に作れるのかと、案外拍子抜けだった。


 そして今俺たちは全ての用事を済ませ、家へと帰ってきたわけだ。そこまで長くはないが濃い旅だったと思う。何が濃いかって、移動時間の辛さを噛みしめたことが濃いのではないかと。


 見た感じ家の中を荒らされた様子はなく、家の扉の鍵も壊れてはいなかった。まあ、ぼろ鍵だから蹴れば扉ごと壊れるし、素人でも簡単にピッキングできると思うけど。それは無いか? 今度試してみよう。


「おにいー、ダンジョン行こー」


「駄目だ、まずは誰か入ってきた形跡がないかの確認と夕飯だな。もう夜だしダンジョンは無しだ」


「やっぱ駄目か」


 正直を言えば俺もダンジョンに入りたくてうずうずしているのだがこれは2人で決めたルールなので譲らない。1度破ってしまえば次もその次もと、なし崩しに無くなっていくのを俺はよく知っているのだ。

 それで財布の中が空っぽになる友人が何人かいたのだから。まあ、それはどうでもいいか。


 真っ暗な地下室に入り電気を点ける、が、点かない。


「おにい、行く前に電球外してたよ」


「あ、そういえば外したな。すっかり忘れてた」


 1階へと戻り、電球と懐中電灯を持って地下室へと戻る。懐中電灯でそこを照らしてみればそこは家を出たときと同じ、完全なゴミ屋敷であった。

 周囲を見渡してみるが物が動いている様子は無い。いや、家を出たときゴミがどんな配置だったかなんて覚えてないのだから正確には分からないが、うっすらと段ボールや袋の上にほこりが溜まっているので間違いは無いだろう。


「よし、ハル。片づけるか」


「却下」


 地下室をゴミ屋敷にしたのだから片づけは必要だろうに俺の意見は真っ向から否定される。


「どうせぐちゃぐちゃにしたんだからダンジョンに押し込んじゃったほうが早い」


「なるほど」


 そういえばダンジョン内に長時間物を置いておくと消えるんだったか。今日置いておけば明日には消えているだろう。

 俺は手早く脚立を立てて電球を取り付けると、ダンジョンの入り口を開き、そこにごみを落としていくのだった。


「やっぱ俺、下からダンジョンの奥にごみ投げ込むから上から落としてくれ」


 ゴミの量が多くて上から落とすだけでは入りきらなかった。というかよく考えてみれば落としてすぐの場所はダンジョンの中ではないのだからごみが消えない可能性も十分にあり得る。

 せいっ、せいっ、とダンジョンの奥の方へごみを投げ込むこと1分ほど、地下室のごみはきれいさっぱりと消え去ったのだった。

 ダンジョンの入り口はステータスアップが無いため、投げるのは通常の肉体だったことは置いておいて。

 幸い地下室に虫やネズミは湧いていなかった。


「さあ、ご飯食べるぞー」


「ダンジョン入りたかった」


 俺がダンジョンの入り口を閉めるのを見ながら恨めしそうな声を上げるハルの頭をポンと叩き、俺は夕食を作るために1階へと昇っていくのだった。




 そして翌日。


「おにい、ダンジョン行くよー‼」


 いつもより幾分か元気なハルはそれでいて早起きするわけでもなく、しっかりと寝た後、俺が起こして。それからはずっとこんな感じだ。いつもなら午前はダンジョンについての情報を調べていくところなのだが調べ物は家に帰ってくる途中で嫌というほどしたから、まあ今日はいいかなと思っている。

 ということで俺は今、武器の手入れ中だ。

 ハルの武器は鈍器のため、手入れの時間が短く、もう準備ができているのだが俺が使うのは刀だ。そんな簡単には終わらない。とは言っても毎日研ぐ必要は無いし、そこまで念入りな手入れをするわけでもないので10分ほどで終わる。

 準備が終われば真横からのハルの催促の声を受けながらちゃっちゃと着替えを済ませ、装備を整える。なんとなくガチな装備は久しぶりな気がするのだが、実際にはそこまで日が経っていないのだから不思議なものだ。


「さあ、行くか」


「よし、行こう」


 俺たちは久しぶりのダンジョン探索へと挑むのであった。


「おにい、今日は殲滅じゃなくて各個撃破でちまちま森林の中回ろうよ。そっちの方が楽しめそう」


 ハルはルンルンとした足取りで歩きながら今日の行動を決めていく。目の前に現れたスライムはハルの軽い蹴りで吹き飛び、そのまま潰れて死んでいった。


「転移、森林」


 転移の間に着いた俺たちはそう呟き、久しぶりの森林へと降りる。と同時に自分の中に情報が転がり込んでくる。

 ただの把握で理解したモンスターの気配それはただの雑魚で。ただしその雑魚ですら、北海道で見た弱すぎるモンスターの気配に比べれば何倍も強い。


「やっぱ、これぐらいがいいよな」


 思わずそんな言葉が口を突いて出る。


「北海道は弱すぎたからね」


 ハルも両手にトンファーを持ち、腕をぐるぐると2周させて悠々と歩き出す。俺も鞘に収まったままの刀に右手を添えて、ハルについて行く。


「グウゥー」


 最初に出てくるのは5匹の狼たち、だが。


「まずは1匹目‼」


 ハルが先頭の狼に急接近し、トンファーを振るうとそれは避ける暇もなく狼の骨を砕いて吹き飛ばす。たったそれだけで、狼は死んでいく。


「よいせっと」


 2匹目3匹目が突っ込んできたので、居合切りでまとめて斬り飛ばす。


「なぁ、ハル」


「ん?」


 俺がハルに問いかけると同時にハルは両手のトンファーを振り下ろして狼たちを鎮める。


「これ、飽きない?」


 そうだ、この戦闘は面白みが無かった。俺たちは森林の雑魚程度、敵にすら成らないのだった。森林のモンスター100匹をまとめて相手取れるほどの強さになっているのだから当たり前だろう。


「うん。おにい、計画変更『インパクト』」


 ハルが放った魔法は近くの木へとぶつかり、破壊する。木の倒れていく轟音を聞きながらハルは宣言するのだった。


「森林の木、全部斬り倒してから帰ろ」


 森林が森林でなくなるまで、あと数時間。




「『チェイン』からの、強斬」


「そして、『インパクト』っと」


 俺が木々に刀をぶつける度に、幹が半分ほど斬られ、その斬撃はチェインの効果によって周囲の木々まで伝染する。

 纏めて斬られた木々は、放たれたインパクトの爆風によってまとめてなぎ倒されていくのだ。


「プギャー‼ギャンッ」


 倒れた木の音によってこちらに向かって来るモンスターたちは瞬時に首を狩られるか、頭蓋骨を砕かれるかで死んでいく。


 モンスターたちは次々とその命を無くしていき、それに反比例するかのごとく俺たち兄妹は調子づいてくる。


「『インパクト』『ディカプル』『剥離』『崩壊』」


 ハルの使う魔法も次々と増えていき、俺はそれにチェインと支配を使うことで威力と効果範囲を増している。



 そして。


「グガ、ギャァアグァーー?」


 何一つ障害のなくなった澄んだ空を見上げれば、上空で困ったような声で鳴くリムドブムル。次々と眼下の森が消え失せていくのだからそりゃあ困惑もするだろう。

 それでも俺たちに攻撃をしないのはシステムの関係か。


「にしてもやっぱりリムドブムルの巣は無かったな」


 森林を森林で無くすること5時間、森林の全体を歩き回ったのにリムドブムルの巣は何処にも無かった。さらに言えば、何故か不思議な人型の石碑が1つ見つかった程度。

 触ったり魔力を流してみたりしたが何も起こらなかった。壊れるか試したけど壊れなかった。名誉のために、足を痛めたとだけは言っておく。


 まあ、とりあえず。


「大・満・足‼」


 ハルが満足したようなので今日の探索は終わりにしよう。

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