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地下室ダンジョン~貧乏兄妹は娯楽を求めて最強へ~  作者: 錆び匙
3章 貧乏兄妹は強さを求め龍狩りへ
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50.兄妹は旅行の準備を進める

 日本全国のダンジョンを回るということになったが飛行機を使うのは難しい。飛行機の警備は基本厳しく、武器を運ぶには日本国内であっても高い追加料金を払わなければいけないのだ。

 しかし、日本国内で飛行機が無ければ行くのが難しいところはほとんど無い。北海道から鹿児島までは陸路で行くことができて、遠い沖縄であってもフェリーで約2日で行くことができる。

 それが国外でニューヨークなんてなってしまえば、10日は超える海路になるし、そもそも飛行機より値段が高い。

 国から出たら何で行っても密入国以外は武器持ち込みのせいでかなりの額が掛かるのだ。

 まあ、国内なら陸路か海路、国外なら空路が一番と。


 それはさておき、俺たちが日本全国のダンジョンをめぐる方法は電車にしようと考えている。幸い沖縄にはダンジョンが無いから問題は無いだろう。

 日本のダンジョンは北海道、岩手、新潟、千葉、東京、富山、大阪、島根、高知、鹿児島の10。千葉のダンジョンは入ることが出来ないし、東京のダンジョンはよく行くので俺たちが行くのは8つだ。

 他にはダンジョンの近くで店を開いていて騒がしさがある場所は何処のダンジョンかというのも参考になるのかと思ったのだが、調べてみた結果。どこにでもあると。

 そういえば東京ダンジョンも、ダンジョンダムのすぐ前は広場のようになっていて、よくよく移動型店舗を見かける。

 休日のダンジョンダムはピークの時間帯には入り口に行列ができるので儲かるのだろう。どういう風にそういう移動販売の会社や個人が場所取りをしているかは知らないが。

 となると、結局は親父が見つかるまですべてのダンジョンを回らなくてはいけないことになる。だとしたら最初に行くのは。


「北海道だよな。北から順番が良さそうだしな」


「ちょうど夏だしいいかもよ。魚食べたいなー」


「北海道だからな。移動はどれくらいかかるか」


 簡単に調べてみると大体移動が10時間で、料金が4万もあったら行けそうだ。やはり武器があるから通常よりは高い。


「ハル、いつ頃北海道行くのが良い? 買い物とか準備があると思うんだが」



 行く日程については1人で決めるのもまずいのでハルに相談する。ハルはうーんと考え込み、手をポンッと叩く。


「よし、明日がいい。荷物は現地調達で。外国ならまだしも行った先も日本だから荷物は簡単に揃うでしょ」


「あ、明日か?」


 ハルの言葉に戸惑いながらも、頭の中でその計画が大丈夫かを考える。

 まず家の防犯についてだがこれは今まで東京に行ってたことも考え大丈夫だと判断する。

 泥棒もこんなボロボロの家は狙わないだろう。念の為、防犯カメラを設置したいがそんな時間もない。今の時刻から考えると自転車で急いでも帰ってくるのは夜になるし、タクシーの値段は馬鹿にならない。

 あー、やっぱりバイクを買いたい。原付じゃなくて中型バイクのしっかりした奴が欲しい。免許無いけど。

 で、もしものことを考えるとやはりダンジョンが心配だ。1日程度なら空けても問題ないと思うがおそらく1週間以上の旅行になるだろう。となるとやはり何か空き巣対策が必要になる。

 家の鍵は蹴れば壊れる程度の物なので意味が無い。というかそれ以上丈夫なものにしたらダンジョンに家が吹き飛ばされる。

 となれば、防犯は視覚的に隠すというものが良いだろうか。ダンジョンの入り口をカーペットで隠したらどうなるのかもよく分からない。

 そもそもダンジョンをふさいだ時に起きる爆発がどんなものなのかも分からないのだ。まあ、鉄筋コンクリートの壁を容易く破壊するのだからこんなぼろ屋は跡形もなく消え去るだろう。

 曰く爆風と共に障害物が破壊され、その後周囲のものがダンジョン内に吸い込まれると聞いた。まあ、つまりはこのぼろ屋は全てダンジョンに吸い込まれると。


「もうあれでいいか」


 考えるのが面倒になった。どれだけ考えても分からないものは分からないのだし。


「ハル、段ボールってまだ捨ててないよな?」


「外の雨が当たらない場所に置いてあるよ。石で押さえてある」


「あー分かった。木の束の裏か」


「そうそう」


 外に出て屋根がある場所に行くとしっかりと木材が置いてある。その裏には、段ボールの束。引っ越しの時に使ったのがそのままだった。後、ついこのまえに買った家具が入っていた段ボールも。

 それを家と庭を3回ほど往復して全て家に運び込む。


「ハル、これ組み立てるの手伝ってくれ」


「んー?いいけど何に使うの?」


「ダンジョンを隠す」


 黙々と段ボールを組み立てていき、ある程度溜まったら尖ったもので突き刺したりしながら、形を崩さないようにボロボロにしていく。

 全ての段ボールを組み立てて、いかにも使い古した。いや、ゴミ行きが決まったような段ボールの山が出来上がった。よし、後は。


「明日から行くってことはもうダンジョンは潜らないよな?」


「うん。もう時間ないし」


「よし、じゃあ大丈夫だな」


 ハルに確認を取り、次々とその壊れた段ボールを地下室に投げ込んでいく。ある程度を投げ込んだら次は残りの段ボールをもう1度潰してゴミ袋に入れる。

 その数4つ。それを地下室に投げ込む。最後に壊れた段ボールやごみ袋だらけで床も見えなくなった地下室を段ボールなどを蹴飛ばしながら歩き回れば。


「よし、ゴミ屋敷完成だな」


 そう。作っていたのは簡易的なゴミ屋敷。空き巣を狙った泥棒であっても家具がある1階を放ってゴミだらけの、というかゴミだけで家具すら無い地下室を探すことは無いだろう。


「うわぁ、汚い」


 ハルも地下を覗いて嫌そうな顔をする。確かに田舎でこんなに汚くしておけば帰ったら虫が湧きそうだ。


「まあ、帰ったら掃除を頑張ろう。空き巣よりは虫の方がマシだろ」


「ん、虫? あぁ、虫か。そうだね」


 ハルの反応は薄い。虫が嫌なわけではなかったのか。そういえば虫に関してはハルより俺の方が苦手だった。となると純粋に汚いのが嫌なのか。


 地下室の中にあるゴミの量は、床はほとんど見えないものの蹴れば簡単にどかせる程度。そこにダンジョンがあるのを知っていれば簡単にダンジョンに辿り着く。

 これならば家の鍵よりも丈夫ではないから爆発の心配は無いだろう。ダンジョンの入り口である柵も見ようとすれば見えてしまうし。となれば最後に1つ。

 脚立を持ってきてごみを押しのけて立てる。それを登って。


「あ、ハル。懐中電灯持ってきて部屋の電気消してくれる?」


「分かった」


 ハルは即座に1階に上がると懐中電灯を持って降りてくる。そのまま懐中電灯を点けて部屋の電気を消してくれる。

 地下室は思いのほか光が入らない。まだ、日が昇っている時間でも電気を消せば真っ暗だ。だからこその懐中電灯。

 ハルに手元を照らしてもらいながら俺は電球を取り外した。そのまま脚立から降りて脚立を壁際へと戻しておく。


「よし、戻るか」


 適当に近くの物を蹴っ飛ばしてゴミで床を隠しながら1階へ戻った。

 電球を取り外した理由は簡単。明るすぎるから。

 いや、日常生活ではあれくらいの明るさが丁度いいのだが。泥棒からしてみれば探しやすい環境になってしまう。電球を外してしまえば懐中電灯などで照らすしかないのだ。

 明るい懐中電灯であっても、懐中電灯とは局地的な部分を照らすように作られている。あるかも分からない物を探すには向いていないのだ。


 1階に戻ったら金庫を開けて、電球は中へと入れておく。ついでにダンジョンに関わるものも全て入れておいた。金庫の中にあるアイテムポーチの中に。

 そういえば、この金庫を見たら大事なものが全てここに入っているのなんて丸わかりだよな。

 一般家庭にはおそらく無いであろう立派な金庫だし。強度には自信があるが、やっぱり狙われないことが一番大事だよな。ダンジョンと違ってこっちはしっかりと密封しても問題ないし。


「というわけで、ハル。木を加工してこの金庫、隠せるか?」


「んー?余裕」


「じゃあ、よろしく」


「分かったー」


 ハルはそそくさと外に出ると手ごろな木材を持ってきて、地下からは工具を持ってくる。


「そろそろいい時間だから私が作ってる間におにいはご飯作っといて」


「おう、了解」


 ハルに言われ時計を見ると確かにそんな時間だ。夏は日が沈む時間が遅いから時間が分かりづらい。

 さっさと夕食を作る後ろからは木を切る音や、ドリルの回る音が聞こえていた。

 10分ほどが経ち、夕食を作り終わる。ご飯を炊き忘れていたので、余っていたシチューのルーの元を使ってビーフシチューにした。肉は人化牛、野菜は少なめだ。

 これならご飯が無くてもパンで食べられる。

 簡単に作ったので30分も経たないぐらいで完成したのだが。そのころには後ろの音はもう止んでいた。


「夕食できたぞ。相変わらず物作りは早いな」


「当然」


 後ろの金庫は扉の部分を残し、すべてを木で覆われ固定されていた。見た目は簡素なインテリアのようだ。ついでとばかりにテーブルの上にあった物を置いたりして、生活感を出してある。

 金庫の扉の部分は空いている物のそこはボンドを塗って木の板をはめ込むだけで大丈夫なように作られていた。彫刻刀でも使ったのだろう。


「さて、準備はできた。明日は朝から銀行に行ってお金を下ろして、北海道に行くか。現地調達とは言っても上着とか下着とか。バッグに入る程度の物は持っていけよ」


「了解。後で準備しとく」


「よし、じゃあ冷める前にご飯食べるか」


「「いただきます」」


 そうして俺たちは、親を求めて日本各地へと向かう旅、もとい旅行へと向かうのであった。

 さて、何もないことを祈るばかりである。


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