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地下室ダンジョン~貧乏兄妹は娯楽を求めて最強へ~  作者: 錆び匙
3章 貧乏兄妹は強さを求め龍狩りへ
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46.兄妹はドロップアイテムを片付ける

「お、カードが落ちてる。ラッキー」


 人化牛が倒れた場所に座り、落ちている物を確かめる。今回ドロップしたスキルカードは2枚。両方が少しレアである銀色だ。そしていつも通りの肉。約1キログラム。

 最後に、2つの指輪。


「ん?そういえばハルって戦闘に参加してたのか。よく考えたら戦闘の貢献度0な気がするんだが」


 考えてみれば今回の戦闘は全て俺が1人でこなしていた。そう考えると2人にカードがドロップしたのには違和感がある。


「少しだけ参加したよ。おにいが斧を受け止めたときに魔力をぶつけといた。魔弾じゃなくて魔力そのものだからダメージは無いけど」


「そうだったか。気づかなかったな。警戒心が足りん」


 ハルが魔力をぶつけていたことに気づかなかったことに若干ショックを受けながらもカードを手に取る。

 カードは俺たち両方に1枚ずつで、手に吸い込まれる。新しく手に入ったスキルは。


「おにいのもついでに見てあげましょう」


 ハルが、ふんす‼とでも言うように胸を張りながら言いはる。


「じゃあ、頼んだ」


 自分に使おうとした物質認知をやめ、ハルの看破に身を任せる。


「うん、完了。おにいのスキルは何かすごそうだよ。今回当たりかも」


 ハルは早々にスキルを調べ終わったようで説明をしてくれる。

 どうやら新しいスキルは当たりらしい。


『カース…付与したものに呪いを纏わせる』


 よく分からないが当たりなのだろうか。試しに刀に付与してみる。


「『カース』」


 その詠唱と共に刀が黒っぽく光る。そのまま振り抜いてみるが特に変わったことは無かった。ただ、そのまま黒色の光が消えるだけ。


「よく分からん」


「まあ、そこは後で試すとして。次は私だね。私のはパッシブでこんな感じ」


『二重属性…2種類の魔属性を使用できる』


「大当たりだよね。正直金色でも良かったのでは?って思うぐらい」


「まあ、それ以上に金のスキルカードはぶっ壊れ性能だからな。こんなもんだろ」


 今まで俺たちが手に入れた金色のカードはそれだけで戦闘の勝敗に大きな影響を及ぼすほどの物だったのだから。強いとはいえ銀が妥当だと思う。


「まあそうなんだけど。ちなみにステータスもどうぞ」



 名前 :ハルカ

 技能 :魔法・工作

 魔属性 :崩・爆(電)

 レベル:72

 強度 :81

 魔量 :169

 スキル:解析・魔弾・暴走・魔法合成

 魔法 :ボム・タイムボム・インパクト・ナンバー・(プラズマ)・(亀裂)・(剥離)・障壁・(崩壊)

 パッシブ:魔力回復・察知・工作・魔力操作・二重属性



 名前 :トウカ

 技能 :付与・錬金

 魔属性 :無(呪)

 レベル:71

 強度 :104

 魔量 :139

 スキル:隠密・座標・物質認知・支配・ショートカット

 魔法 :スピード・パワー・ガード・バインド・チェイン・スロー・ロス・アンプロテクト・カース

 パッシブ:把握・加速・錬金



 まあ、当然なのだが前回とはそこまで変化が無かった。ハルのレベルが上がったぐらい。


「じゃあ、次は宝具だね。私のトンファーとおにいの刀。ん? あれ?」


 ハルが喜んでいる最中、唐突に首をかしげる。


「どうかしたか。宝具だろ。俺の刀と、ん? 宝具って戦闘のやり方で決まるんだっけか?」


 俺は今更思い出しながらもそうであってほしくないという願いを込めながらハルに聞く。


「うん。戦闘で主体となった方法、技能が影響するって書いてあった」


 ただ現実は非情で、いや分かっていたけど。つまりこの宝具は。宝具は、あれ?


「じゃあこの宝具の中身ってなんだ?」


「そりゃあ、今回使った武器じゃ、ないね。私武器使ってないし」


「俺もあれだけで斧を使ったとは言い難いよな」


 ハルは武器を出していないし、俺は人化牛の斧でとどめを刺したが、それも相手の力を利用しただけで斧を使ったとは言い難い。

 俺の付与やハルの魔力をぶつけてことについても、今回は魔法陣を使用していなかったため、武器の使用とはみなされないだろう。


「とりあえず試してみるか」


 なんとなく自分のものだと分かる方を手に取り魔力を流す。


「うわぅ、なにこれ?」


 魔力を流した指輪は光と共に元々つけていた指輪の方へと吸い込まれて消えてしまう。


「1つになったな。まあ、指輪を増やすにつれてだんだん指が埋まっていくのは嫌だから良い仕様なのか?」


「まあ、おにい。中身を確かめるのは家でやろ。ここであんまり時間使っても次のボス戦の人に迷惑だろうし」


「あぁ、そうだな。規模も分からんからここじゃ狭いしな。帰って森で試してみるか」


 ドロップ品は全て拾ったのでそのままボス部屋から出る魔法陣へと歩き出す。

 特に何があるわけでもなく、森まで降りてから1階層へと転移した。なお、ここで人と会うことは無かったのは運が良かったと言っておこう。ここにいるだけで数少ない上級探索者ということなのだから。



 そして問題の黒狼の毛皮。

 今では企業ごとにモンスターのドロップの買取を行っており、あまり高価でないものはそちらに売ることになっている。

 自分たちが知らないうちにどんどん市場のシステムが変わっていくことに、まだ若いくせに時間の流れを感じたり。

 まあ、それはともかく。その毛皮を受付へと持っていってみる。先にネットで調べることも考えたが、黒狼が普通にドロップしたものなのだから問題は無いだろうということでそのまま持ってきてしまった。


「素材の売却をお願いしたいんですが」


 ハルが俺の後ろへと隠れたのを確認しながら受付のお姉さんへと話しかける。なんというか、まさにファンタジーに出てくるギルドの受付嬢のようだ。ずっと前から現実がファンタジー化したような、そんな世界にいるくせに、なんとなく厨二心をくすぐられる。


「はい、素材の売却ですね。こちらの箱へお出しください」


 受付嬢はさっと大きい箱を取り出す。その挙動に無駄が無いことや箱を軽々持ち上げたのを見るに。


「すみません、間違っていたら申し訳ないのですが。探索者でしょうか」


 主語を省いたその質問。つまりは受付嬢が探索者であるかということ。それもそこそこ高レベルの。

 それに対し受付嬢はにっこりと笑い小声で返す。


「あまり知られてはいませんが、この会社の受付は全員が中級探索者です」


「へぇ、すごいですね」


「仕事の合間に友人とダンジョンでやんちゃしてたらこの部署に移されちゃいまして」


「そんなこともあるんですね」


 小悪魔的な笑顔を浮かべる受付嬢を見ながらリュックから人化牛のドロップ以外の今日手に入れたアイテムを取り出す。途中の道のモンスターは多くをスルーしていたので、リュックに入りきる程度しか今日の収穫は無かった。

 ちなみに黒狼の毛皮はリュックに入りきらなかったのでぐるぐる巻きにして、結び、リュックの上に取り付けてきた。気分はさながら登山家である。

 何故アイテムポーチを使わないかって。そりゃあ一般人で使っている人なんてあまりいないから。とはいえ中級探索者は持っている人も偶にいるらしいし、上級探索者にもなると皆持っているらしい。というより自分で手に入れることも多いのだとか。まあ、だからと言って俺たちは使っているのを見せる気はないが。

 リュックをひっくり返して中身を全て箱に出し、毛皮をリュックから外し、それも箱に入れる。


「確認させていただきます」


 受付嬢は真剣にそのアイテムを見ていく。

 見ていて気付いたのだがここにいる何人かの受付嬢の中に何かスキルを利用してアイテムを確認している人はいない。魔力の動きは無いように見えた。


「これって騙されないのかな」


 後ろでボソッとハルが呟く。俺にもぎりぎり聞こえたぐらいの声だったのだが、受付嬢はぱっと顔を上げる。


「そうですね。ここで買い取るのはドロップアイテムだけという規約になっていますし、ドロップアイテムは知ってさえいれば全て見た目で区別がつくので、間違えることはありません」


 受付嬢は調べ終わったのかアイテムの入った箱を横にずらしてから、手元にあるパソコンへと何かを入力していく


「本人確認のためダンジョン探索許可証の提示をお願いいたします」


「あ、はい」


 俺たちは慌てて許可証を取り出し受付嬢に見せる。受付嬢もプロであり、声に出して読み上げたりなどはしない。スキャナーのようなもので1度だけタッチしてすぐにこちらへ笑顔を向ける。


「はい、確認いたしました。先程の話ですが、他のドロップアイテムに見えるように偽装をしてきた場合、それはダンジョンアイテムではなくなってしまうので、詐欺、ということで訴えさせていただいております」


「やっぱりそういう人もいるんですか」


「私は見たことがありませんが。何名かいらっしゃったそうです。黒狼の全身毛皮ですか。黒狼の最レアドロップです。運がいいですね」


 パソコンへとデータを打ち込み終わったようでその毛皮だけ再確認すると、おそらくエンターキーだろう。カチッとパソコンのキーボードを叩くと横の画面に買取金額が現れる。


「思ったより高いですね。そこまで良いアイテムがあったわけでもないと思うのですが」


「それは黒狼の全身毛皮の値段ですね。ドロップ率が5パーセントほどと言われていて高値で売買されています。では代金は先程の許可証の口座の方へ振り込ませていただきます。本日はありがとうございました」


 受付嬢が綺麗なお辞儀を見せたところで俺たちは軽く会釈をして列から出る。

 探索許可証はそれぞれ口座が設定できて、アイテムを売ったお金は自動的に振り込んでもらえるのだ。現金が用意し辛いことや、強盗の対策らしい。


 さて、今日はそこそこのお金を手に入れることができた。


「明日はまた実験だな」


「そうだね。早く宝具を使ってみたいし」


 受付から離れると同時に元気になったハルと話しながら俺たちはダンジョンダムから出ていくのであった。


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