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地下室ダンジョン~貧乏兄妹は娯楽を求めて最強へ~  作者: 錆び匙
2章 貧乏兄妹は資金を求めて東京へ
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39.兄妹は東京ダンジョンを終える

 ふわっと漂い消えたガン・セーンの死んだ証拠である黒い霧をぼーっと眺める。


「今までで一番の強敵だったよな」


「うん。場所が悪かったのもあるけど戦力も一番高かった。戦って勝った中では」


 ハルの言う通り、俺たちが遭ったことのある最も強いモンスターはリムドブムルに他ならない。ただ、そんな戦いにすらならないような規格外を除けば今回が一番の強敵だといっていいだろう。


「そういえばドロップアイテムはどうかな」


 ハルの言葉を聞き、ガン・セーンの死んだ場所を見てみるといくつか落ちていた。とはいえ今回はかなり多いのではないだろうか。


「こんなにドロップしたのはやっぱりボスみたいな扱いだったのが大きいのか?」


「エラーを退治したことへのダンジョンからの報酬だったりしてね」


 無駄口をたたきながらアイテムを仕分けし、ハルが看破で見ていく。

 まずは1つ目。


『アイテムポーチ(中)…10tまでの収納が可能であり重さを帳消しにする』


 今まで使っていたアイテムポーチが(小)だったので1段階大きくなったのだろうか。前は1トンだったのに対して10トンになった。これで車も軽々運べると。

 これは我が家で管理することにしよう。ハルは荷物を持ちたがらないから1トンの方のアイテムポーチを持ってもらって俺が10トンの方を持つ。

 次に2つ目。というか2つ目と3つ目。


『双討の証…不具合を2人で討伐した証:ペアとなる装備を持った人とパーティーを組むと補整(固定)(返還)(試着)』


 これが2つだった。形はミサンガ。


「ふーん、腕にはめればいいのかな。で、普通のアイテムじゃないから魔力を流してみると、あれ? おにい、縮んだよ。手首にぴったり」


 みたいなことがあった。ちなみにそれは付いているスキルの効果だろうと思うのでスキルにもハルが看破を使う。


『固定…不変:アイテム限定スキル』


 全く分からないが、アイテム限定スキルっていうのは人が覚えられないのではないかと思う。


『返還…意識するとどこにあっても自分のところへ戻ってくる:アイテム限定スキル』


 まあ、言葉どおり。


『試着…大きさを装備者に合わせる:アイテム限定スキル』


 これがさっきのハルの試した結果ということだろう。

 俺も右手に通し、魔力を流すとぴったりの大きさになる。ぴったりというのも邪魔にはならず抜けることもない、締め付けられもしない丁度良さだった。

 さて、次は4つ目だ。

 4つ目は普通の魔石、かと思ったのだが違うらしい


『魔玉(中)…魔力を1000まで溜めておくことができる』


 まあ、魔力を保存できるというだけ。当たり前だが取り出すこともできるらしい。

 俺よりもハルの方が魔力の使用量が多いので、これはハルに渡しておく。

 現在俺たちの魔力は空っぽに近いので実験はやめておいた。


 そして5つ目。5つ目はシールだった。シールというよりかはタトゥーだろうか。


『スキルシール…シールを肌に貼ると設定されたスキルが使えるようになる:1分ほどで肌になじみ見えなくなる:多量の魔力を流すと浮き出る(空間把握)』


『空間把握…自分の周囲2メートルを把握する』


 空間把握は俺の持っている把握よりさらに密度を上げて精度を高めるといったところだろうか。近接は俺の方が強いので俺が貰った。

 左手の甲に貼り付けて1分待つとすぅーっと消えるように見えなくなってしまった。

 触っても何も感じない。無いとは思うが貼った場所を忘れたら見つけられない奴だろうか。

 そして最後。見ないようにしていた一番の問題児。鞘のない1本の剣。


『聖騎士の霊剣…???であり斬撃に聖属性を付与する:剣技能の者のみが使用できる(信仰の剣)』


『信仰の剣…聖の光で刃を強化する:剣技能の者のみが使用できる』



「おにい、どうする? あんときの杖の仲間みたいなの来ちゃったけど。よく見たら平面式の魔法陣も彫ってあるし」


「ほんと、マジでどうするんだよ。俺たちには使えないし強力過ぎて売れそうにもないしな」


「ほんと、どうしよっか。寄付する?」


「勇者御一行にか? 俺たちだってばれたらまずいだろ」


「そうなんだけど、うん? おにい、4人近づいてくる。警戒してるからかな、すごいゆっくり」


「あぁ、じゃあそいつらに頼むか」


「あぁ、そういうこと」


 俺たちはにやっと悪い笑みを浮かべるととりあえず触れてしまった部分を念入りに磨く。杖の時は忘れていたけど指紋でも取られたら嫌だから。

 そして右手は動かないから左手で剣を持ち、剣先を下に向けて上へと持ち上げる。


「『パワー』」


 少ない魔力で自分に付与を掛けて。


「うおりゃっ‼」


 ガキーーン


 思いきり地面に突き刺した。当然のごとくダンジョンの地面は硬く、地面と剣がぶつかり合う音を鳴らしながらしっかりと埋まっていった。


「よしハル、これ抜けるか?」


「やってみるね。うーーん、無理」


 ハルが剣の柄を持って引っ張っても抜けないことを確認して俺たちは立ち上がる。

 こちらに向かって来ていた人たちにも剣を刺すときの音が聞こえたようでこちらに来る気配が早くなっている。あと十数秒もあれば出会ってしまうだろう。


「じゃあ、帰るか」


「うん」


 俺たちは再び隠密を発動しながら10階層へと降り、転移で帰るのだった。


「そういえばおにい」


「なんだ?」


「右腕、痛くないの?」


「あ、そういえば。いってー‼」


 アドレナリンが出ていた所為で忘れていた痛みが今になって思い出され、そのまま涙目で病院に直行したのだった。



 そして十数日が経ち、俺の右腕が包帯でぐるぐる巻きになった状態で、俺たちはダンジョン市場に立っていた。

 俺たちが帰ったあの後、無事に剣は発見され、勇者の手に渡ったらしい。職人の手に渡され鞘を作ってもらっていたのをネットニュースで見た。

 そしてダンジョン市場。


 ガン・セーンが倒れ、ダンジョンが使えるのを待ち遠しく思っていた探索者が一気に活動を再開し、市場の中の経済はよく回っていることだろう。

 さらには効果の強い弱い関係なく、たくさんのマジックアイテムまでもが流通し始めたことで、オークションが開かれることもあった。


 100キロまで入るアイテムポーチ(極小)が1000万円を軽く超えたことは記憶に新しい。

 残念なのはそれを売ったのが俺たちではないこと。俺たちはアイテムポーチの(小)と(中)は持っているが(極小)は持っていないのだ。

 ただ、アイテムポーチでなくても前から集めていたアイテムはある。というか作ってある。

 木崎家のダンジョンの8層にでたユニークモンスターがドロップした剣。かっこいいのだが当然のごとく素材が弱い。というわけで、俺とハルで改造を施したのだった。


 簡単に言えば剣に斧を錬金するだけ。これだけでとても強くなった。他にも売るものを用意しようとも思ったが、目を付けられたら堪ったもんじゃないのでこれだけにしておいた。

 勿論それには強斬のスキルが入っている。

 それを匿名でオークションに出品したところ、買おうとしたほとんどの人が武器を持つことすらできなかった。


 俺たちはすっかり忘れていたがダンジョン産の武器は装備できるレベル制限があるらしかった。しかもこの剣は勇者御一行すらも勝っていない人化牛のドロップ品を使っていたのだから並みの探索者に持てるわけが無かったのだ。

 そのまま売れ残りとなるか、と思ったが丁度装備を整えに来ていたらしい893の人が買ってくれた。かなり高額で。

 普通は買い手が1人しかいなければ額は下がるはずなのだが、愚かにも893の人がこんな発言をしてしまったのが原因だった。


「お、この武器の制限が23レベルだって。リーダー使えんじゃないです?」


 23レベルとは上位の探索者なら後、数レベル上げれば届く高さ。だとすれば今のうちに買っておきたいとなるのは当然だろう。

 そこからは日々の探索で高額収入を出している高レベル探索者同士の競り合いとなったのだった。

 そして結局500万円ほどに収まると。

 手数料やら何やらと引かれて400万円ほどにまで下がってしまったが仕方がない。そういう物だと思って納得しておいた。



 さて、俺たちのような普通の一般市民にはガン・セーン討伐後の政府の対応などの詳しい情報は流れてきていない。ただ、まあ。


「収入はしっかりと入ったから東京ダンジョンに執着するのも終わりか」


「そうだね。次はどこ行く? お金あるから北海道でも行く」


「結局日本だから大して変わらないだろ。とりあえずは右腕の治療とやりたいこと探しだな。バイトもしばらくはお休みだ」


「そうだよねぇ」


 そんな他愛のない話をしながら俺たちはダンジョン市場を巡り、そして何も買わずに出ていく。

 その兄妹が本当の最強と知るものは当然いない。

 兄妹は今日もただの一般人のふりをして娯楽を求めているのだった。


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