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地下室ダンジョン~貧乏兄妹は娯楽を求めて最強へ~  作者: 錆び匙
2章 貧乏兄妹は資金を求めて東京へ
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29.兄妹は東京ダンジョンに入る

何故かミスによりどこにもない60万円を使い武器屋防具を買っていることになっていたのでつじつまが合うように2話の内容を少し変更しました。

本筋には問題はありませんが気になる方はもう1度2話をお読みください。

 いつも以上に早く起きた俺たちは、東京のダンジョンへ向かう準備をしている。

 ハルは武器に魔法陣を彫り込む作業を行い、俺は持っていくものの確認だ。

 アイテムポーチを持っていくことには持っていくが、人前で使うことはできない。アイテムポーチはシークレットポーチのように肌着の上に付け、取れないようにした。アイテムポーチの中に入っていた要らない物は全て出して要る物を詰めていく。

 まずはポーション。他にも予備の武器となる、俺たちが前に使っていた斧と鉄パイプ。そしてごみスキルが入ったプレートの数々。今のところ使い道は無いが何か他の物と一緒に使えば使える可能性も無きにしも非ずなのだ。なにせ、スキルは発動させたものに影響することが厄介だ。

 例えば昨日見つけた消臭スキル。発動を促すのは俺だが、実際にスキルを発動するのはスキルが付与された物体である。

 その結果、スキルが付与された物体。今で言うと消臭と彫られたプレートだけが消臭されるのだ。

 と、こんな感じにごみスキルの中で単体で使えるようなスキルは無いのだ。それでもまあ、念のため。全種類持っていても大した重さではないのだから問題ないだろう。


「よし、おにいできたよ」


 地下で鳴っていた金属を削る音が止み、ハルの終了報告が聞こえる。


「じゃあ、仕上げをしてそろそろ行くか」


 仕上げというのは最後の錬金。適当に、ハルのトンファーにごみスキルでもつけておこうと思ったのだ。

 そしてごみスキルはそこそこ被っている物も多いので数には悩まない。

 ハルのトンファーから、錬金でプレートへと強斬を移し、別のプレートから衝撃吸収をトンファーへと移動させる。

 少し時間はかかるのだが、昨日スキル単体での移動もできるようになったのだ。それを行うと物質は変化しないが、錬金の素材になったものが壊れることもなく、ただスキルが無くなるだけで済むのだ。

 そして衝撃吸収。加えられた衝撃の大部分を吸収するという効果なのだが、当然吸収し逃げ場が無くなった衝撃は、スキルを持った物体の中で完結する。

 つまりは、本来周囲に逃げるはずの衝撃を吸収してしまうために異常な負荷がかかるのだ。防具なんかに付与してしまったら1発ではじけ飛ぶだろう。というより1度下級狼の毛皮で試したときに、一撃でバラバラになり付与していたスキルが消えてしまったのだ。

 というわけで金属でできた丈夫なトンファーにはこのスキル。


「じゃあ、行こうか」


「うん」


 俺たちはリュックを背負い、武器をハルはケースに仕舞いリュックへ。俺は鞘ごと紐で巻いて抜けなくしてから、その上から布でぐるぐる巻きにしてリュックに結び付けた。

 そうして自転車で最寄りの駅まで行き、電車を使い東京ダンジョンの最寄り駅まで行ったのだった。


「うーん。人多かった」


「だな、平日だから人少ないと思ったんだけどな。武器っぽいの持った人がたくさんいたな」


「キャリーバッグとかゴルフバッグとかギターケースとかね。ちょっと欲しい」


「俺たちも金が溜まったら買うかね」


 そんな無駄話をしながらダンジョンダムではなくギルドに入る。理由は単純。


「武器携帯の許可書をください」


 武器の申請を行うためである。ダンジョンに入るには武器を持ち歩かなければいけないため自分の持っている武器を申請しなければいけないのだ。俺は刀とナイフ6本。ハルはトンファー2本とナイフで申請する。個人情報、個人の実力を示すものになるため、武器の詳細は言わなくてもいいのだ。


「はい。確認しました。ダンジョン内でこれ以外の武器を使用していた場合、事情聴取の対象となるのでご注意ください」


「ありがとうございました」


 受付の人に会釈し、次こそダンジョンダムに入ろうとして止まる。


「ハル。何あれ」


「何かのスキル。ダンジョン外で使える種類のスキルだと思う」


 ダンジョンダムの入り口には何か薄い魔力がうごめいていた。あんなことがスキル関係なしにできるのは魔力操作のパッシブを持っているハルだけだろう。つまりあれはスキルの魔力。そして。


「解析と同種の可能性があるってことだよな」


「で、多分誰でも関係なくかけてるってことは私の解析みたいに相手の了承が必要ないと思う」


「一応こっちからも魔力をぶつけて阻害できるか?」


「できると思うけど確実に怪しまれる。あ、途切れた」


 俺たちがそのまま進むわけにもいかずに話していると突如スキルが止まる。一瞬なんで止めたのかと思ったが慌てて時計を見る。秒針を見つめて、ちょうど1分。もう一度魔力が流れ出した。

 発動時間は分からないけどクールタイムは1分だと分かった。つまりはそのタイミングで入れば何かされるといったことは無い。

 次のスキルが途切れる瞬間を見計らい俺たちはダンジョンダムの中へと滑り込んだ。

 スキルが途切れているはずの1分の間に入るための手続きを終える。とは言え本人確認だけだから10秒ほどで終わる。


「じゃあ更衣室で装備を整えて、物はコインロッカーに入れていくぞ」


 少しハルの心配をしながらもさっさと更衣室に行く。そして周囲を見てみるが、これなら安全そうだ。警備の人の数が相当多い。

 更衣室に入り、装備は基本的に来るときに着てきていたので、胸当てやパーカーなどをつけていく。刀に巻いてある布や紐をほどき、刀はベルトで腰につける。パーカーは錬金したときにマジックテープの効果が無くなってしまったため、強力な磁石を縫い付けて前を止めておいた。

 パーカーの裏にはポケットが付いており、そこに投げたり予備に使う用のナイフを左右に2本ずつ入れておく。黒狼のナイフ1本と希狼のナイフは腰につけておいた。


 準備を終え、荷物を持って外に出るとロッカーの前にハルが立っている。今回は別にナンパしてこようとするやつもいないようだ。まあ皆むき出しの武器持ってるし、警備員もかなりいるからこれでナンパなんかする奴はよほど度胸があるか、ただの馬鹿だろう。


「あ、おにい来た。ロッカー有料らしいから一緒に使お」


「あぁ、分かった」


 それなりの大きさのあるロッカーに俺とハルの荷物を仕舞い、カギを取る。


「ん? お金はどうしたんだ」


「払っといた。家に帰ってから請求するね」


「了解。じゃあ行くか」


「うん」


 ダンジョンに入る前に周囲を眺めるとたくさんのヘルメットやフード付きパーカーの人がいる。これなら変に目立つこともなさそうだな。

 受付に置いてあった1・2層の地図を少し見て、3層への最短距離とその周辺をハルが覚えるのを確認してダンジョンへと入っていく。フードを被り、不自然でない程度に顔を隠しながら。


「ハル、最短ルートに近いけどそうではないぐらいのルートで3層まで。そこからは、隠密で行く」


「了解。ついてきて」


 ハルが歩いていくのについていくが周囲には人が多すぎる。十数メートル歩くごとに人とすれ違うような間隔だ。

 周囲の人はやはり西洋剣が多いがちょこちょこと刀も見かける。刀も浅い階層では使う人は多いのだろう。

 4月から探索に入った人の中で1番速い人たちは昨日4層目の探索に入ったらしい。3層目からは人も滅多に見なくなり、まだ倒されていないモンスターが多々見つかるようになった。

 それまでは大抵が誰かに倒されており、生きているモンスターが見つからなかったのだ。どちらにしろ武器を出さずとも倒せる相手なのだが外聞を気にしなければいけないため、わざわざゆっくりと動き、敵の動きを受け止めながら急所を外して斬り付け、何度か斬ってから倒すというのを繰り返した。

 ただ、これにはかなりのストレスが溜まる。だからこそ人がいないことをスキルで確認しながら瞬殺したりもしていたのだ。

 さらに人の目を気にして下の階層へ移動するときは人がいないか少ないとき目掛けて行った。で、現在把握や察知で他の探索者とは絶対に出会わないようにして、普段のスピードでダンジョンを駆け回っているのである。

 曲がるときすらもスピードを落とさずに壁を蹴っていくのだから、そこらのモンスターが対応できるわけがない。俺たちはモンスターを殺すことすらせずに3階層を走り抜けるのだ。


「おにい、遠くで数人の反応が消えた。戦ってた感じは無かったから多分下の階層に行った」


「お、そうか。じゃあ俺たちも」


「うん。こっち」


 ハルの察知ではダンジョンの構造を探ることはできなくとも人の反応は探ることができる。そしてダンジョン内では階層間の干渉ができないため、人が戦闘もなく反応を消したのであればそれは階層を移動したことに他ならないのだ。

 人がいるところを避けながら走ったにもかかわらずあっという間に4階層への階段に着く。さすがにこれ以上の下の階に行く人はベテランに含まれるだろう。4階層以降には行くことでさえ見られるのはリスクが高い。だからこそ絶対に見られないようにいく必要があるのだ。ただ。


「あれはどうすればいいんだ」


「さすがに抜けられないよね」


 階段の下には1つのパーティーが座り込んでいたのだった。警戒していたため見つかることは無かったが階層の移動地点なので把握と察知が反応していなくて焦った。


「おにい、少し遠くにモンスターがいるの。攻撃できない?」


「いや、どうやってだよ。って座標か」


「うん。リムドブムルを解析したときと同じ要領で」


 ハルがこちらに差しだした手をつかむと、ハルが察知でつかんだ光景が頭に流れてくる。そこに把握をかけ、より鮮明にしてモンスターをはっきりと捉える。


「見つけたぞ。『ロス』」


 そこにいたのは4匹のゴブリン。そしてこの階層の敵に魔法抵抗なんてものはない。どんな魔法でも思った通りに最大の効果を成すことができるのだ。

 俺の使ったロスはしっかりと全員に掛かり、ゴブリンがこちらに気づく。いや、実際は把握しきれてはいないだろうから、こちらの方向からなんらかの干渉を受けたことに気づいたと言うべきか。ゴブリンが真っ直ぐとこちらに走ってくるのが、把握を通して分かる。


「おい、おめえら。ゴブリンが3体来たぞ‼ しっかり構えろ」


「「「おう‼」」」


 リーダーらしき男の声と共に3人が武器を構えて広がる。そして戦闘が始まるのだが。


「こいつら攻撃が弱いぞ」


「手負いかもしれねぇな。さっさとやっちまおうぜ」


 男たちはノリノリでゴブリンを倒していき、背後を高速で駆け抜けた2つの影に気づくことは無かった。



「さすがに、4層ともなると人はいないな」


「今日で一般公開から9日でしょ。私たちみたいにずっと潜ってるわけにはいかないから4層に行ってたら一流。3層でベテランって感じじゃない?」


「そんなもんか。まあ、把握の範囲内には全く人はいないしな。それにモンスターの索敵能力も弱すぎるし。にしても階段がない」


 俺たちは4層を駆け抜けながら、5層への階段を探す。疲労は大して無いのだが4層ともなってくるとそこそこの広さがあり、次の階への入り口を探すのが困難になってくる。


「まあ気長に探そ。もうこの階層来て30分ぐらい経つけど。はぁー」


「そうなんだよな。はぁ」


 2人してため息を吐くほどに階段がない。ハルが道を覚え先導しているため、無駄に同じ道を通っていることは無いはずなのだが。何しろ広すぎる。少なくとも俺たちの家のダンジョンよりは広いのではないだろうか。



「あっ」


 あれからまた30分ほど走り続けた後、突如横に階段を見つけた。


「やっとあったね」


「あぁ、じゃあとりあえず5層ボス討伐行くか」


「うん、とりあえず殺さないで様子見で」


「了解」


 俺は武器を短剣に持ち替え、ハルはしっかりとトンファーを構え、扉の中へと入っていくのだった。


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