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地下室ダンジョン~貧乏兄妹は娯楽を求めて最強へ~  作者: 錆び匙
2章 貧乏兄妹は資金を求めて東京へ
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28.兄妹は準備を十分すぎるほど整える


あれからも俺たちはひたすら黒狼を狩り続け、現在森にいる。

正直に言うと飽きたのだ。ひたすら2・3時間、10秒どころか5秒もかからずに倒せるようになった黒狼を倒していて何が楽しいというのだろうか。体力的には何も問題ないものの精神的に疲れてしまったので1時間ほどボス部屋から出た後の部屋で休憩を取り、その後どちらからともなく森へ向かって走り出したのだ。探索をしようとしたら時間はかかるが俺たちは既に最短ルートを知っている。さらにはダンジョンで得たステータスによる異常な身体能力。軽く寄り道して人化牛を瞬殺し、そのまま森に来たのだ。そして。


「『インパクト』『ディカプル』」


10ある光の玉が周囲を回転し、全方位に飛び散っていく。今の武器には魔法陣が彫られていないので以前に作った魔法陣の彫ってあるカードを使っている。

それぞれの爆発が木々をなぎ倒し、被害を増大させていく。この森の木は燃えるが、燃え広がることは何故か無いので山火事の心配はない。

そう、今やっていることはいつぞやの人為的スタンピードだ。

周囲に木が無くなり、音に反応したモンスターたちが束になってこちらに迫ってくる。ふと上を見てみるがリムドブムルは無反応だ。


「じゃあ、俺は行ってくるな」


「うん。私はここで倒してる」


俺は地面を蹴り、モンスターの反応がする方へ向かう。この前の土竜のような強い敵はいない。所詮雑魚ばっかりだ。1匹に対して1秒もかけずに斬っていく。黒狼を斬りまくったせいか高速で斬っていっても剣筋が曲がることは無い。

ただ、それでも減るモンスターより増えるモンスターのほうが多い。


「追いつかないか。『スピード』『パワー』『チェイン』『スロー』」


二つの付与で自分を強化し、チェインでスローを広範囲に伝染させる。攻撃の伝染ではなく、相手の速さを下げるだけの魔法だからか、いつもの数倍遠くまで伝染する。

そのままに敵陣の中に突っ込み、先程よりははるかに多い数のモンスターを相手取り、殲滅していく。

だんだんとモンスターは減っていき。


「おにい、来たよー」


ハルの声が聞こえたのでハルのところへ戻ると途中で強そうな気配を感じた。

土竜よりは弱いけど人化牛よりは強いぐらいだと思われる敵だ。

今更だが俺たちがここに来た理由は黒狼に飽きて大量の敵と戦いたかったということともう1つあった。強い敵と戦いたいということ。

普段は出現しないような強さを持ったモンスターがたまに出てくる。俺たちはこのようなモンスターをレアモンスターと呼んでいて、この中でも強かったと思えたのは、金のスケルトンと土竜の2匹だけだった。ただ、実際には俺たちはもっとたくさんのレアモンスターと戦っていた。特筆するほどの強さが無かっただけで。

レアモンスターは個体ごとに強さの違いが大きく、1つ前の層のボスだった人化牛の2倍ほどの戦力を持っていた土竜は、その層に於いてで言えば圧倒的な力を持っているといえるし、そこら辺の雑魚に毛が生えた程度の力しか持たないレアモンスターもいた。

そのように弱いレアモンスターはドロップアイテムもさほど良くない物で、ある程度強いレアモンスターになるとスキルカードを落とすこともある。そして今回は。


「賢狼、戦力187、若干強め?」


「だな。今日はこいつ倒したら終わりにするか」


俺は刀を鞘へと戻すと戦闘の邪魔にならないように少し縦に傾ける。そして右手を前に出し指輪に魔力を流す。


「私の魔法から行く。『インパクト』」


ハルも宝具であるモーニングスターを地面に打ち付け唱える。


「『スピード』」


1つの付与を自らに施し、隠密を使いながらこちらに向かってくる賢狼に迫る。

賢狼はその賢さゆえの行動だろう。少し横にずれ、インパクトが飛んで来る射線を躱す。ただ。


「中途半端な賢さは良いカモなんだよな」


賢狼が避けた先には隠密を使い気配を消しながら大鎌を振るう俺。それは足の1本を斬り飛ばし、その場に縫い付ける。そのまま大鎌を盾のようにしながら俺は賢狼から距離を取る。賢狼の攻撃を避けるためではなく、ハルの巻き添えを避けるため。

ハルの放った魔法は途中で緩やかなカーブを描き、賢狼を吹き飛ばした。さすがにそれだけでは死なないものの足を1本失い全身傷だらけでは終わったようなものである。


「また、変化球の精度上げたな」


「まあ、魔法が飛ぶスピードに比べて魔力操作で回転が加えやすいから」


この通りハルは自ら魔力操作で自らの魔法に横回転をかけ魔法を曲げているのである。魔法は魔力の塊ではあるが小さいものの、空気抵抗もあるのだ。

そして念の為言っておくのであれば魔法の速度は200キロをゆうに超えている。ただステータスの上昇でそれが遅く見えるほど速さが上がっているだけである。

俺はふらふらと立ち上がる賢狼に歩いて近づき、フェイントをかけて大鎌で首を飛ばした。フェイントを掛けなくても抵抗できそうにはなかったがスキルや魔法とは窮地を覆す可能性もあるのだ。敵がスキルや魔法を使う可能性があるのだから注意を怠る必要はない。


「ドロップは短剣だね。お、スキルあるよ。反撃だって。帰ったらしっかり調べよ」


「おぉ、それはいいな。なんだかんだでハルは短剣使わなくなっちゃたし」


「むぅ、だって刃物って手ごたえ少ないじゃん。鈍器でドンッていうのが倒してるって感じするし」


「お、おう。そうだな」


俺は妹の恐ろしい一面を垣間見た気がしたのだった。



そして俺は料理中。賢狼を倒し家に帰ってきた俺たちは時間も時間なので結果を確かめる前にご飯を食べようということになったのだった。


「おぉ、これはすごい」


ちなみにハルは後ろで何かぶつぶつ言いながら今日取ってきた変わったものに解析を掛けている。これはハルが暇つぶしということで適当に壺の中にあるものに解析を掛けたのが始まりなのだが、偶然何の変哲もないアイテムにスキルがついていることを発見してしまったのだ。

当然のごとくスキルは価値のあるものではなく、『滑り止め』なんていうつまらないものだったのだが。この時に、何か使えるスキルを見つけてやるとやる気を出したハルは暇つぶしついでに変わったものから順番に解析を掛けているのである。

今までに見つけたものだと、薬の強さを強くする『薬効』というスキルが一番の変わり種だっただろうか。

効果は薬の影響を強くすること。ただし、ダンジョン内では何故か地上の薬が効かないらしい。そしてポーションは薬に含まれなかった。つまりは使い道無しである。

他にはクールタイム1時間。継続時間1時間の『発光』というスキルだろう。

1度使えば1時間は光り続けるものの、光を消す手段がないので1時間の経過を待つしか消す方法がない。そして魔力的な光だからだろうか、何かで覆っていても光りが普通に貫通する。第一にダンジョン内でしか使えないのにダンジョンに暗い場所は無い。

まあ、所詮ごみスキルだ。

ちなみに見つけたスキルは俺が作った金属板に錬金で移している。

金属加工は難しいため、6層でとれる加工しやすく柔らかい猪の角で小さなプレートを作り、錬金で丈夫な金属に変えるという手段を取っている。プレートには解析をかけなくてもどのスキルが付いているかが分かるようにハルがスキルの名前を彫った。


「ハルーご飯できたぞ」


「あ、おにいこのスキルも移しといて、消臭だって」


「あ、分かった」


相変わらず意味のなさそうなスキルを見つけているのだった。



「で、反撃ってどんなスキルだったんだ?」


俺たちはいつも通りご飯を食べながらダンジョンに関する話をする。今日は当然短剣についていたスキルだ。


「うん。前回の強斬とは違って継続時間があったよ。0.5秒だって」


「継続時間ってごみスキルにあった、スキルが使われてる時間だよな」


「うん。で、クールタイムが1秒。短いけどちょうど倍」


「戦闘中に何回も使えるが使い続けられるわけではないって感じか」


「効果は、物理攻撃が当たった時に攻撃の強さに比例してダメージにならない反撃をするだって。ご馳走様」


「どういうことだ? ごちそうさん」


スキルの説明はいつも通りよく分からない文で、理解ができなかった。


「おにいが絶対に1人でダンジョンに入るのは駄目って言うから、一生懸命解析だけで調べたの」


「ありがとな。で?」


「で?って。まあいいけど。ここでの攻撃の定義は、それが直撃したときになんらかの障害をもたらすもので、ダメージにならないっていうのは純粋に疲労だって」


「つまりは?」


「相手の物理攻撃がこの短剣に触れたときにスキルを使っていると、その攻撃の強さに比例して、相手が疲労する」


「あぁ、確かに強いな。で、俺たちがそれを使われなかった理由は」


「1度も攻撃を防ぐことなく賢狼を殺したから。ちなみに武器の名前は『希狼の短剣』だって」


「ふぅん。賢狼じゃないんだな。じゃあ、昨日の続きの錬金始めるか」


「うん。用意はしてある」


ハルの視線の先に目をやると昨日買った防具とそれと同数の黒狼の毛皮が置いてある。黒狼は狩りすぎというほどに狩ったので枚数は余裕で足りたらしい。

まずはパーカーということで、フードを切り離し、パーカーの裏地やフード以外の部分に錬金を使い、その後丈夫になって針も通らなくなったパーカーとフードをハルが工作スキルの補整で縫っていく。勿論使っている糸も雑魚のドロップアイテムの糸を黒狼の毛皮と共に錬金し、丈夫にしたものである。

このような面倒なことをしている理由は思いのほか単純で、防刃に関してで言うのならば、現代の防刃繊維の方が黒狼の毛皮より強いから。ただそれだけだ。いくら黒狼の毛皮であっても鉄で全力で突けば貫通するのだから。とはいえ、ダンジョンでのステータスアップ状態だったらどちらにしろ簡単に貫通できそうだと思ったり思わなかったり。

次に今まで探索に使っていたズボンと服を錬金し、強化。若干硬くなり洗いにくくなるため下着は錬金しない。ついでにと、靴下も錬金しておいた。

胸当ては中に金属が入っていたので、外側を黒狼の毛皮。中身の鉄を黒狼の角を使った黒狼鉄で錬金した。

最後に靴だが、普通に毛皮で錬金すると布の部分だけが錬金で置き換わり、黒狼鉄で錬金すると、少ない金属部分が置き換わった。


「よし、完了。明日は東京行ってみるか」


「うん。準備完了」


俺たちははるかに弱いであろうダンジョンに入るために十分すぎる準備をして、この日を終えるのだった。


「あ、おにい。グローブ買い忘れたね」


「そういえばそうだな。まあ、金ないし覚えてても買えなかっただろ」


やっぱり俺たちは金がないのだ。


何か面白そうなごみスキルがあればコメントお願いします。

設定や内容に組み込む可能性もあります。

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