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地下室ダンジョン~貧乏兄妹は娯楽を求めて最強へ~  作者: 錆び匙
2章 貧乏兄妹は資金を求めて東京へ
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20.兄妹は強者を知る

 どこからか声が聞こえる。体が揺さぶられる。


「おにい、おにい」


 あ、ハルが起こしに来たのか。珍しいな。いつもは俺が起こしてるのに。ハルは何かと朝が弱いのだ。

 うん、そろそろ起きるか。にしても体の節々が痛む。これも硬いところで寝たからか。

 ん? 硬いところ?


「おにい‼」


「あぁ、起きた。ってかここどこだ」


 俺がいた場所は周囲が岩に覆われた空洞で。その中心にはこれも岩でできた螺旋の階段があった。


「え、記憶ない。ど、どうしよ。私のこと分かる」


 ハルが慌てているのを尻目に少し考える。そして思い出した。


「確か飛竜に吹き飛ばされて気、失ったんだっけ」


「あ、よかった。記憶はあるね。骨も折れてなさそうだし。体の調子はどう」


 とりあえず起き上がって伸びをする。体からバキバキと音がした。ただ固まったからだがほぐれていく音というだけなのだが、言葉にすると骨が折れてるような擬音語になった。


「問題ないな。硬いところで寝たせいで、体が固まってるけどそれだけだ。で、今は何時だ」


 バッグから懐中時計を取り出して時間を見る。時計の針は見事に止まっていた。ネジを回してみるが壊れた様子はない。ということはつまり。


「ハル、早く帰るぞ。かなり寝すぎた」


 俺の懐中時計は少なくとも24時間は動き続ける。それが止まっているのだ。それに加え相当腹が減っている。つまりはそういうことだ。


「俺たち、24時間以上寝ていたかもしれない」


「え?」


 説明をすることもなく急いで帰り始める。空腹で歩くのも辛いので代わりにポーションを1瓶飲んでおいた。ハルも同じようにしている。

 急いで帰ると言っても長い階段を上り15層出口で転移をするだけだ。ちなみに置いていった人化牛の斧は無くなっていた。

 1層に転移すると特に何が起きているわけでもなく家まで戻ってこられた。時間は15時。昨日家を出たのが10時なので29時間もダンジョンの中にいたというわけだ。


「帰ったー」


 ハルは一言そう宣言するとすぐに装備を外し、食卓につく。


「おにいー、早くご飯作って」


「分かってるよ」


 俺もお腹が空いているので、手間はかけたくないということで昼のはずなのにステーキを焼く。当然ダンジョン産の肉で。


 軽く塩で味付けをしたそれはとてつもなくお腹が空いている今だといつも以上においしく感じる。追加で焼いたり野菜のサラダを黙々と食べ続け。あっという間に食事を終える。

 軽く他愛のない話をしながら食器を片付ける。そして俺たちはお互いに何かを言うまでもなく再びテーブルに戻った。


「じゃあ、おにい。昨日は危険な目にあわせてごめん。で、それで分かったことがある」


「あぁ、昨日のことは俺も提案に乗ったから誰かが悪いというわけではないだろ。で、分かったことは解析の結果だよな」


「うん。解析のスキルは、対人だったら許可制で自由に、対物だったら一定の範囲までのステータスとか説明を見れるの」


「まあ、それは何度もやったからな。それで」


「モンスター相手には相手の強さに関わらず戦力っていうのが見えるの」


「あぁ、それは前に聞いた気がするな。強度と魔量の合計だったか」


 俺は戦力に関する話を聞いたことがあった。魔量と強度の合計で俺たちはおよそ150

 人化牛は160だったらしい。ただし人間もモンスターも武器を使うためあまり参考にはならないと。


「で、つまりは飛竜の戦力がおかしかったと?」


「うん。飛竜に解析を使った時の結果がこれ」


 ハルがささっと紙に書きこちらに見えるようにしてくれる。


『風龍リムドブムル…戦力1050』


「は?」


「おにい、これが現実。私の見間違いじゃない」


「これ桁間違ってんじゃねえの」


 思わずそう言いたくなるほどには大きすぎる戦力だった。


「そんなわけない。105だったらおにい一人で勝てる」


「だよな。道理で勝てる気がしないはずだ。今のところ戦力の合計は大体レベルの3倍ちょいだろ。飛竜と同じになる頃にはレベル350とかだぞ」


「戦力はあてにできない。スキルと魔法。それと武器で差は減らせるから」


「まあ、今の状態では歯が立たないよな。で、あれがボスってことだよな」


「森すべてが16階層ってこと?」


「だよなぁ」


 色々重なる予想外に思わず脱力してしまう。しかしそれでもできることは同じなわけで。その程度でダンジョン探索を辞めてしまえるなんてことが無いほどにダンジョン探索という娯楽に嵌まっていて。


「明日も16層行くか」


「うん。ドロップアイテム楽しみ」


 そうして俺たちはいつもの日常に戻り、俺はある場所に電話を掛けるのだ。


「ちょっと、木崎くん。確かにここは田舎でお客さんも少ないから僕1人でもなんとか回せるけどね。来れないんだったらしっかり連絡しなきゃダメだよ」


「店長。ほんとに連絡なしにバイト休んですみませんでした」


 気を失っていた俺は当然のごとく次の日にあったはずのバイトをさぼってしまったのだった。



「えりゃ。うりゃ。『亀裂』」


「グギャァ」


 複数のモンスターたちが空間をも裂いていく亀裂により体を切り裂かれていく。断末魔の悲鳴を上げながら抵抗する間もなく死んでいくモンスターたち。なんでこうなったのかは、とある事情と幸運が重なったからなのであった。


 俺たちはまた16階層に、戻ってきていた。そしてもう一つ気づいたことが。16層へと下る階段を降りた先の空洞の隅に魔法陣があった。勿論転移の魔法陣で。それを使いここがどこか確かめてみると、森林入り口。だそうだ。

 この16層の森をまとめて森林というのだろう。そんなことを発見しながらも森林の探索へと繰り出したのだった。

 森林の中に出てくる敵は、今までと違うものが多かった。

 狼のモンスターは今まで出ていた灰色のではなく、茶色っぽい見た目になっており森の中では若干見にくくなっていた。他にも見えないどころか把握にも反応しないカメレオンがいたりとか。

 まあ、とにかく敵の種類も数も豊富だ。そしてすべてが強い。皮膚が硬く、軽く振るうだけでは一撃で倒すことができなかったのだ。

 1匹ずつ確実に首を落としていくしかない。そしてもう1つ。ハルも1つ変化ができた。上をリムドブムルが飛んでいるため、もしなんらかの要因で刺激してしまったら大変である。

 ということで爆発魔法を使うのはやめさせたのだが、それだと攻撃手段が減るということで色々と試行錯誤してみたらできてしまった。ハルの魔属性の変更が。そのおかげでハルの今のステータスはこうなってしまっている。


 名前 :ハルカ

 技能 :魔法・工作

 魔属性 :崩(爆)(電)

 レベル:44

 強度 :51

 魔量 :102

 スキル:解析

 魔法 :(ボム)・(タイムボム)・(インパクト)・ナンバー・(プラズマ)・亀裂

 パッシブ:魔力回復・察知・工作


 魔属性が変わったことにより使える魔法が変化したのだ。名前は見て分かる通り亀裂。そして威力がえげつない。敵を空間ごと切り裂く魔法。

 その魔法に強度は関係なく、魔量が高くないと抵抗すらできない。物防無視の攻撃だった。そんな魔法が使えたらいったいどうなるのか。それが上記の現状である。


「おにい、次行くよ」


 ハルはいつも以上に元気に声をかけてくる。


「行くけどさ。殲滅速すぎだろ。俺の倍ぐらいか。俺も魔法使った方が良いのかね」


 そんなことをぼやきながらハルについていく。ただこんなことを言っている割に俺は魔法を使っていない。使っているのは隠密スキルだけだ。敵の背後にこっそり回り込んでから斧で首を掻っ切るというのがかっこよくて、断末魔の悲鳴を上げさせないのにも便利で多用してしまっている。

 そのせいで殲滅速度が遅いのはご愛敬だろう。


 とまあ、そこからは狩場を16層に変えただけの普通の日常が過ぎていくのであり。特に思うところもない地味な日常が流れていくのだが。そんなことは長く続くわけもなく。次起こる問題は、きっと案外近いのだろう。


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