123.兄妹はミノたんと対峙する
今回は結構短くなってしまいました。区切りが悪かった……。
『地下室ダンジョン』コミックス2巻発売しました‼
『“ぼっち”な迷宮製作論』を投稿しています。
地下室ダンジョンとも絡めていますので、興味が湧いた方は是非そちらも
見に来ていただけると幸いです。
「ほらー、戦うんだよー。立ってー、立ってよ‼」
鎖で巻かれたミノたんにメイドの彼女が叫ぶ。当然動けないミノたんは悲鳴を上げるが無視される。挙句の果てには動かないことを怒られていた。
「ハル、アタック」
「そうだね【崩壊】」
メイドの言葉からすればこれから俺たちはあのミノたんと戦うことになるのだろう。動けないうちに攻撃をしておきたい。【崩壊】の黒い球体がミノたんに迫っていく。
「あー‼ ミノたん早く立って、当たっちゃう、当たっちゃうから‼」
メイドの叫び声むなしく、いや原因もメイドであるのだが鎖から逃げるのも諦めたのか口を大きく開き、目を見開いたままミノたんは【崩壊】に飲み込まれていった。
「ミノたーん⁉」
魔法が直撃したミノたんを見ながらも笑顔で叫んでいるメイドは俺たちから距離を取るように後ろに下がっていく。
「おにい、ミノたんのステータス見た」
俺と違い、ミノたんを包み込んだ【崩壊】を見つめていたハルが呟く。
「どうせ、死んではいないだろ。どうだった」
「戦力は500。強くはない、けど」
戦力は俺たちの強度と魔力の合計のようなものだ。通常俺たちのステータスの強度と魔力の合計はレベルの3倍。単純計算をするならばミノたんは165レベルの探索者程度の力となるわけなのだが。
「明らかに弱すぎるからおかしいってことか」
そもそもモンスターは体のサイズも知能や思考も人間とは大きく違う。遺跡までのモンスターは攻撃を防ぎこそすれ躱すことはない。多様なスキルや魔法を持つことはなく、そのモンスターらしい能力が多くても数個だった。
大抵のモンスターは強力な武器を持たない。持っていたとしてもその武器はモンスターの一部であると言われている。代表例は人化牛。『看破』をも上回る強力な鑑定系スキルを持ち、モンスターやアイテムの解析を生業にしている探索者によれば、人化牛はその強度のわりに体が貧弱であるらしい。他には体の一部に強固な鱗のようなものを持つモンスターも鱗の無い部分は脆いと。
その人は言っていた。強度はその個体の体全体での平均のようなものではないのかと。そして、その体はモンスターが手に取り生まれてくる武器にも該当すると。
つまりはモンスターはステータスのわりに弱いのだ。明確な弱点があり、そこは自身のステータスよりもかなり脆い。頭は良くなく、スキルや魔法が少ないため選べる選択肢も少ない。だからこそ俺たちは戦力が1000を超えるリムドブムルを討伐できたのだ。
改めて思うが戦力500はおかしい。弱すぎる。俺とハル、片方だけでも宝具を使わずなんとか倒すことができる。その程度の強さなのだ。それがなんだ、俺たちを見極めると。今日まで倒してきたユニークモンスターにさえステータスで劣るこのミノたんで。
「ハル、『看破』は今分かったとこまでで良い。下がるぞ」
「うん、なんかおかしい」
強力な攻撃魔法である【崩壊】。弱いモンスターは飲み込まれ消えていくし、強いモンスターは早急に魔法を突き破って出てくる。では、まだ死ぬことも無く出てくることもない、ミノたんはなんなのだろうか。
俺たちがミノたんから距離を取ったその時だった。
「じゃあ始めるよー。挑戦者は地球代表、トウカーあんどハルカー」
右手を俺たちに向けたメイドは声を上げる。
「迎え打つのは我らダンジョンの門番、ミノたんだー‼」
左手をミノたんを包み込む【崩壊】に向けたメイドは大きく笑う。その手にはなぜか数瞬前には無かったはずの太く長い鎖が握られていた。傷ひとつないその鎖は先ほど見たミノたんに絡み付いていたものとそっくりだと、それに気づくのと同時に【崩壊】内側から真っ二つに切り裂かれた。
「バトルー、スタート‼」
中から現れたのは鎖の拘束から解かれた無傷のミノたんだった。
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