110.兄妹は何かを見つける
新作、『“ぼっち”な迷宮製作論』(仮題)を投稿しています。
地下室ダンジョンとも絡めていますので、興味が湧いた方は是非そちらも
見に来ていただけると幸いです。
「随分と殺風景な部屋だな。何もない」
俺たちは4時間もかけて見つけた隠し扉の奥。まるでボス部屋のような広さの部屋を探索していたのだった。
結局、この部屋の入り方は分からなかった。4時間も探したのだ。いくら魔力をたどっても扉の痕跡も壁の違和感も見つからない。壁を叩き続けても空洞音の聞こえる場所は無く、動くところも無い。
そろそろ諦めようと、もう帰ろうとそう思った矢先、壁についていた俺の手がそのまま抵抗感をなくし壁の中に吸い込まれていったのだ。
おそらくいくつもの条件が重なったときにしか扉は現れないのだと思う。
状況であるとか、そこにいる探索者の数であるとか、意志だとか。
俺たちがこの部屋を出た時点で二度とこの部屋に入れなくなる可能性も無くは無いのだ。だからこそ、扉の条件は分からないし、確かめられない。
「おにい、ここ何かある」
そんなことを考えていたら、部屋の奥の方を見ていたハルが何かを見つけた。
「魔法陣? っぽいな」
そこにあったのはこぶしほどの大きさの石でできた立方体。その表面には大量の魔法陣が描かれていた。
「ハル、離れてくれ。【支配】」
俺はその石から距離をとり、【支配】を使うことで遠くから魔力を魔法陣にぶつける。
おそらく今までの魔法陣と同じように転移だと思うが、変なところに転移したら危険だし、それ以外の可能性もある。念のため、離れた部分から魔法陣を起動させたのだ。
数秒魔力を当て続けると、石の表面に描かれた魔法陣は輝き始める。一つの魔法陣が光り出せばそのほかの魔法陣も連鎖するように光っていく。瞬く間にすべての魔法陣が光りを放ち直視できないほどの光の束になったとき、なじみのあるピコンという音と共にそれが現れた。
宙に浮かぶ光の文字。
「工房?」
「工房だな」
俺たちの前に現れたのは工房の文字だった。いや、正確には違うか。
・工房
・未開放
・未開放
どうやら3つのうち2つは確認できないらしい。
「どういうことだ?」
「なんだろうね。あ、できた」
ハルは首を傾げると浮かぶ文字をつつき、パンと手を鳴らす。
・工房 -起動する-
・未開放
・未開放
「起動するねー」
ハルは戸惑い無く、『起動する』の文字に触れる。
『起動する』の文字は一瞬だけ赤く光り、その後すべての文字が空気に溶け込むようにして散り、消えていく。すべての文字が見えなくなりその痕跡すらも分らなくなったころだった。地鳴りのような音がする。
「ハル、もうちょっと慎重にやってくれ」
「あはは、ごめん」
俺たちは壁に背を向け、武器を構えて音の正体を探る。魔物か、トラップか。魔力の流れに異変が無いことを確かめながら慎重に周囲を見渡す。そして。
「「いたいっ‼」」
俺たちは後ろから吹き飛ばされた。
「なにこれ、パソコン?」
「いやそんなわけないだろ。無いよな?」
俺たちを突き飛ばしたのは鉄のような石のような素材でできた機械だった。その見た目はデスクトップパソコンのようで、高さ2メートルはある大きなモニター、の形をしたもの。そして、巨大なタッチパッドのようなものが付いたノートパソコンのキーボードのようなもの。
勿論キーボードのようなものにアルファベットは書かれていないし、キーのようなものはあるものの配置が違い、押すこともできなかった。そして。
ぶきしゅおせんたくして
画面に現れたのはいくつもの武器の簡単なイラストと、平仮名の読み辛い言葉だった。
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次作『“ぼっち”な迷宮製作論』連載中です。
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漫画連載中です。
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