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104.兄妹は光る人型と出会う

3月18日、漫画発売です‼


https://seiga.nicovideo.jp/comic/49313?track=keyword_search

「さてと、今日から遺跡7階層だがとりあえずけがはしないようにだな。行くぞ」


「うん。洞窟7階層と同じだったら新しいモンスターは少ないはずだから」


 俺たちのダンジョン探索だが遺跡の探索を始めてからは基本的にケガをしないことを前提に計画を立てている。

 モンスターと命を奪い合うダンジョン探索の中で少しのけがで一々撤退やレベリングを計画するのは、他のダンジョンに潜る人から見れば異常なのだと思う。

 擦り傷や切り傷などは基本的に一番安いポーションでも一瞬で治るし、遺跡で入手できるような高価なポーションであれば骨のヒビぐらいなら治せる。

 聞いた話だと、遺跡に出現したスライム型のユニークモンスターから入手したポーションで、失った四肢が治ったこともあるらしい。勿論それは俺たちが最も欲しているアイテムでもある。

 最後のポーションはともかくポーションというのはダンジョンに潜ればさほど苦労せずに得ることができるアイテムだった。

 けがをするたびにポーションを使い、そう簡単に使えるほどにはポーションは簡単に手に入る。ポーションを使うことに慣れていくということはつまりけがをすることに慣れるということであって。

 ダンジョンから止むを得ず撤退する時というのはけがをしたときではなくポーションが無くなったとき。またはポーションで治りきらないほどのけがを負ったときなのだ。

 軽くけがした程度で撤退していると他の探索者に話せば笑い話にされるかもしれない。それでも俺たちがその方針を変えるつもりはない。

 俺が片手を無くしたことで警戒が強くなっているというのもある。だが、それ以上に、俺たちはダンジョンが危険な場所であることを知っている。

 ボスモンスターの強さを軽く超えるユニークモンスターが突然現れることもあるということを、身をもって理解している。

 だからこそ俺たちは突然現れたそれに、冷静に武器を向けた。


「【バインド】ハル、看破」


「分かった」


 ハルが『看破』を発動したのを確認し、自分の【バインド】の強度を強めていく。

 目の前にいたのは人型だった。人のようなものではなく人型。全身がキラキラと光り、体は流動的に動いているように見える。


「スライム?」


 ハルの呟きを聞き反射的にその人型から距離を取った。


「ハル、敵の名前は」


「リンクスライム。スキルで隠してるのかも、レベルと戦力は見えない」


「遺跡に入ってからスライムは隠蔽系ばっかだな」


 リンクスライムがこちらを見ているのはなんとなく分かるのだが、それにしては攻撃しようとしているようには見えない。


「先に攻撃しちゃうね、【崩壊】」


【バインド】で動けなくなっているスライムを、黒い球体が襲う。スライムは逃げることも防ごうとすることもせず、無抵抗でその魔法を受けた。【崩壊】の魔法はすぐにスライム全体を飲み込み黒く染め上げる。

 そして、その黒をスライムが包み込んだ。


「おにい下がって‼」


【崩壊】によりバインドは砕けておりスライムを抑える枷は無い。俺たちはスライムから距離を取りながら、スライムが形を変えていくのを見届けた。

 サイズは先ほどより小さく。ただし輪郭ははっきり。


「ハルの姿⁉」


 スライムが変化したのは現在のハルの姿だった。着ている装備から手に持つトンファーまでしっかりと形を真似ていた。


「【ほーかい】」


 スライムの体の中からそんな声が聞こえてくる。と同時にスライムの正面にいくつもの魔法陣が現れた。


「おにい、補助【インパクト‼】」


「任された【パワー】【チェイン】」


 スライムの目の前に現れた魔法陣から大量の黒い球。【崩壊】の魔法が飛び出す。

 それとは逆にハルの放った【インパクト】の魔法は【チェイン】と【パワー】により効果範囲を増し、内側から【崩壊】の魔法を砕いていく。

 魔法は互角だった。宙を舞うすべての魔法が掻き消え、一瞬の静寂が訪れる。


「【ばいんど】」


 そのスライムには口があるが、声はそこから出していない。そのことを忘れ、スライムの口を見つめていた俺は駆け引きに負けてしまう。

 足元から現れた光の触手のようなものが俺の体を拘束していく。


「ハル、宝具を使え【封魔】」


「分かった。宝具、モーニングスター」


 俺の魔力がごっそりと削られたのを感じながらもにやりと笑う。俺を中心に【封魔】の空間が広がり、ハルとスライムを飲み込んでいた。


「【ほーかい】【いんぱくと】」


 スライムの声に従い魔法陣が生まれる、ことは無かった。


「覚悟―‼」


 魔法を出せないことに驚いたのか停止をしたスライムに向けてハルは全力でモーニングスターを振り下ろす。


「【ふーま】」


 モーニングスターがぶつかる直前、スライムを中心に封魔の空間が広がるのを感じた。おそらく破れかぶれの一撃。ただし【封魔】の魔法を真似たところで、それは攻撃にも防御にも使えない。

 スライムは一瞬の抵抗もなく、モーニングスターに潰されていった。

 モーニングスターと地面の間からモンスターが死んだ証である黒い霧が漏れる。


「おわりっと。お?」


「あれ、もしかするのか?」


 リンクスライムがドロップしたのはいつものポーション瓶に入った銀色の液体だった。


twitter始めました。


https://twitter.com/sabi_spoon

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