103.兄妹は着々とダンジョンを進む
コミカライズ版が3月18日発売です‼
『ひびぽん』さんが書いてくださり、かなり素晴らしい出来になりました‼
https://seiga.nicovideo.jp/watch/mg498843?ref=nicoms
「ん? ハル、これ見てくれ」
「なに?」
それを見つけたのは早朝、パソコンを開きいつも通りSNSなどでダンジョンの情報を集めていた時だった。
俺の後ろからパソコンの画面をのぞき込んだハルに画面の一か所を指し示す。
『新しい注意文が追加されてるんだけど。事件でもあったか?』
その言葉と共に投稿されていた写真には東京のダンジョンの入り口に設置されていた注意書きの看板があった。
5人以上で探索しないこと、他者の戦闘に割り込まないことなどの以前から書かれていた注意が並べられており、その一番下には詰め込むようにして新しい一文が追加されていた。
『1人でダンジョン内にいるものには特に近寄るなどしないように』
ルールではないにしてもダンジョン内で不用意に他の探索者に近寄らないようにというのは言われていたことではあったが、わざわざ新しく書き込まれたその言葉。
何かしらダンジョンの中で注意を増やさなければいけないことが起きたとしか思えない。
「中で事件が起きたのかな?」
「それか外で事件を起こした人が中に一人で逃げ込んだとかだな。皆似たような装備だったり顔を隠してたりするから個人の特定はし辛いだろ」
そもそも警察がどれだけダンジョンに潜れるのかも知らない。
「というか、ダンジョンでそういうのってあんまり無いよね。皆武器を持ってるけど、殺傷事件とかはほとんど聞かないし。怒鳴り合いとかはたまにあるみたいだけど」
「俺たちの知らないダンジョンの機能なんかもあるのかもな。ぶっちゃけ俺たち含めこんなにも世界中の人が荒事に適応できるとは思えん」
だらだらと話しながら同じように推測をしてる人や真実を知っている人がいないかとSNSを漁っていく。
「あんまり、気にしてる人いないね」
「まあ、何度見たか分からない看板なんて少し変わってても気付かないのかもな。俺たちもしばらくは東京のダンジョンに行くのはやめた方が良いかもしれん」
「色々隠してること多いしね。疑われたらいけないから行かない方が良いと思う」
最近は頻度を増やし週に1回ほどで東京のダンジョンに行っているのだが、その目的は自宅のダンジョンで得たドロップアイテムを売るためである。
あまり値段が高くつくものやダンジョンの奥の階層で取れたアイテムは売るのを避けているせいであまりお金は貯まらないがそれでも十分に健康的な生活ができるようにはなった。
東京ダンジョンに潜るたびに売るものの質を少しずつ上げている影響もあるのだろう。ひと月前と比べればアイテムを売って入る収入は倍増している。
学校に通うならば足りないが、普通の生活をする分には問題ないほどの収入だ。
「さてと、だとするならば今日からしばらくは地下のダンジョンに潜ることになるが、いつも通りで平気か?」
「うん。そろそろ、新しい階層をめざそ‼」
仕事も学業もなくダンジョンだけに専念した1か月。それだけの時間があればダンジョン攻略もそこそこ進む。
片手だけの戦闘もそれが当たり前であるかのようにできるようになったし、知恵を持ったモンスターとの戦闘もスムーズにこなせるようになった。
というのもよく観察してみれば同じ種類のモンスターが同じスキルを繰り出すとき、皆が皆同じ姿勢を取っていたのだ。
剣道などの型よりもさらに正確に。まるで機械のように同じ姿勢で攻撃をするのだから気付きさえすれば対応は簡単だった。
普通の攻撃は防御や回避に専念し、スキルを放ったタイミングでカウンターを仕掛けてやれば容易に倒すことができるのだ。
遺跡の1階層にはスライムとゴブリン。段々と階層を進めていけば不気味な色合いをしたオオカミがいた。ここまでくればはっきりとわかる。
遺跡はダンジョンの一番上、洞窟部分の階層と一致するようなモンスター配置をしていると。
遺跡5階層にはゴブリンと呼ぶのを躊躇うほどの巨体を持ったゴブリンだった。
名前はゴブリンキング。随分と見覚えがある。
それまでのゴブリンと違い、スキルを出すときの姿勢が同じではなかった。なのに何か違和感があると思えば、肩から先の動きがいつも同じだった。
それを発見するまでに何度も吹き飛ばされ、大量のあざを作ってしまったがポーションで治る範囲の傷で倒すことができた。
6階層。出るモンスターの系統は相変わらず洞窟の6階層と同じだった。モンスターもまた1段階強くなり、何度かけがをしてしまう。
レベルと経験が足りていないのだと判断し、そのまま1週間。そして今日。
兄妹は次の階層へと向かう。
なんの特徴もない7階層。そんな予測が通じるとは、どうしても思えないのだった。
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