01.プロローグ
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日本にあるダンジョンの個数が少ないため増やすことになりました。
元『日本では、岩手、千葉、大阪、高知、鹿児島の5つが発見された。』
↓修正
修『日本では、北海道、岩手、新潟、千葉、東京、富山、大阪、島根、高知、鹿児島の計10個が発見された。』
レベルの修正
元 男:25lv 女:24lv
↓修正
レベル表示なし。
今、この大きな洞窟の広間では牛の頭をした3メートル程の大男のようなそれが、その巨体にすら不釣り合いであろう大きな斧を1人の男に向けて軽々と振り回している。
その牛頭の名前を人化牛。このダンジョンの15層のボスであり、別のダンジョンでは攻略していた自衛隊4人組を容易く壊滅させるほどの力を持つ。
しかし振り回された斧が目の前の男に当たることはない。
男は恐ろしい勢いで振られる即死の威力を持った斬撃を両手に持った短剣によって速度が低いうちに横から打つことで軌道をずらし躱している。どのように力が入っているのかは不明だが、時折人化牛が武器を振ったそのままの勢いで吹き飛ばされていくこともある。
暴れ狂う人化牛に対し男はその場でゆらゆらと揺れながら手に持つ短剣で斧の側面を叩き、逸らすだけで躱していく。そのおかげか圧倒的な体格を持つ人化牛は疲労を見せるのに対し男は余裕の表情だ。
「いいよ、おにい」
後ろから女の気の抜けた声が聞こえるとそれを聞いた男は短剣を人化牛の目に向かい投げる。
「【インパクト】‼」
女の唱えたその声は高らかと洞窟内に響き渡り、人化牛と男の傍の空間に起きた爆発が、圧倒的な火力が一瞬にして男と人化牛を襲い、その身を削る。
今、声の主が使ったのは爆破魔法とも呼ばれる、複数ある魔法スキルの中でも火力のみを追求した魔法の内の1つ。
爆発は人化牛の片腕を消し去り、煙が収まる頃には満身創痍となった人化牛。しかし、死ぬ気配は未だなく、受けた痛みに怒りを覚えたのか、魔法を唱えた女へと斧を振り上げる。
しかしそれを遮るかのように地面には魔法陣が湧き、そこから出てきた茨が人化牛を締め上げた。
【バインド】と呼ばれ、弱い敵の動きを一時的に阻害するスキルであり人化牛の動きを阻害するには明らかに火力不足なそれは何故か人化牛の動きを確かに停止させている。
次の瞬間には鋭い刃が走り、人化牛の首は身体と切り離されていた。
首が取れた人化牛は大きな斧と1㎏の肉を残し、破裂するように黒い靄となって消える。
その後ろには先ほど人化牛と一緒に爆破されたはずの男が大鎌を持って立っていた。
「討伐しゅ~りょ~‼ 今日のノルマ達成だよ。おにい、おつかれ‼」
先ほどインパクトを放った少女は表情を変えずに明るい声を発しその手に棒状の持ち手の先にとげのある鉄球が付いたもの。いわゆるモーニングスターを持ち、大鎌の男へと近寄る。
「おつかれ。はぁ~ボスのくせにドロップしけてんなー。肉と斧とか、こんなバカでかい斧なんて誰が使うんだよ。つーかもう持ってるし。自衛隊の人がクリアしたら泣くぞ、何人もの命無駄にして報酬がバカでかい斧と肉だけって。しかも斧はただの鉄っぽいし。金属の見比べ方なんか知らないけどさ」
「まあね、一応初クリアで自分に合った武器が貰えるしいいんじゃない? それより早く帰ろうよ、今日のご飯も人化牛の肉だね。これ牛肉よりおいしいから飽きないよ。で、レベル上がった?」
「あー上がってんな。階層数掛ける2倍のレベルが4人いてぎりぎりボスに勝てるって政府は判断したんだっけ。ボスじゃそれでも足りないしさー。そのくせにレベル上がりにくいし」
「それは私たちのクラスが悪いからね。はぁー、考え直したらイライラしてきた。おにい、もう少し狩りしよっか。私前衛やるから。私のレベルは上がってないや」
「げぇ、まじで。どうせ今日中には上がらないんだから俺もう帰りたいんだけど」
男は文句を言いながらも全長1メートルはある斧を「よいしょ」と声をあげるだけで持ち上げると腰についている小さなポーチに入れる。どう考えても入らないどころかポーチの口を通ることすらできないはずの斧はすっぽりとポーチの中に収納され、それに疑問を持つ者はいない。
2人はダンジョンの中にもかかわらずごちゃごちゃと無駄話を繰り広げ結局は下層へと降りていった。
さっきまで激戦があったダンジョンの部屋の扉は自然に閉まり、そこにはなにもなく2人がいなくなった後には何も残ってはいなかった。
8月1日、地球という星にそれは突如起こった。世界中の国々でたくさんの穴が現れた。
中に入っていった一般人は全て帰ってくることがなく、警察による調査が行われた。
中にいたのは緑色の子供のような何か。薄透明の動くドロドロ。土でできたロボットのような何か。
そして中に入ると通信器具などの電気を使うものの一切が使用できなくなった。そのような事態の中、今まで地球に存在していなかったであろうそれは、何故か銃を撃てなくなった警察を蹂躙したのだった。
結果、穴の中に入っていったほとんどの者が姿を消し、生還したのは片手で数えられるほどしかいなかった。
これを受けた政府はすぐに行動をとり自衛隊による掃討作戦が取られることが決まった。
重火器や電気が使用できないことが分かったため、近接戦に優れる10人の自衛隊が洞窟への侵入を試みたが、彼らのほとんどが帰らなかった。
政府が対応を取る中その洞窟は突如牙を剝くこととなる。
洞窟から現れた百ほどの未確認生命体、UMAは待機していた自衛隊員を、市民を蹂躙した。
たった数百のそれは、世界中を同時に攻撃し先進国には僅かに被害を。発展途上国では政治が停止するほどの大混乱が引き起こされた。
しかしそれがもたらしたものは被害だけではなかった。襲ってくるUMAを有り余る重火器の火力で消滅させ、ダンジョンへと戦線を押し戻していく。しかし問題はそこで起こった。ダンジョンに潜入すると銃が撃てなくなる。銃に頼った戦線はそれ以上進むことができなかったのだ。
自衛隊員が慌てているうちにUMAは押し返しそこにいた自衛隊員を殺していった。ダンジョンに入った隊は一番後ろのほうにいた1人を残して全滅した。
その隊員はオタクだったことからすぐにダンジョンの中では現代武器が使えなくなり物理攻撃に補正が掛かるというテンプレな結論に達し、ダンジョン内に入った時に頭の中に表示されたことの意味を理解し銃口の下についている銃剣による攻撃と銃床での殴りに変えた。
最初はぎりぎりの戦闘だったものの何匹かを殺しているうちに少し動きやすくなった。さらに殺していくとまた動きがよくなった。そんなことをしていくうちに、隊員の周りにいたUMAは消えていた。隊員はすぐにダンジョンを出て報告をした。これがまともにダンジョンに潜った者の初めての生還となった。
ダンジョン内では銃や電気が使用できないこと。
ダンジョン内で原始的な方法でUMAを倒していくと力が湧くこと。
その力はダンジョンから出るとなくなってしまうこと。
この情報はすぐに各国に伝えられ、現れるUMAに対し警棒などを使った掃討作戦が取られこの事態は収束を迎えた。
これにより『081災害』と呼ばれることになった事件は本当の意味で収束を迎えたのであった。
その後も日本はアメリカと協力しUMAとダンジョンの調査を進めた。技術の最先端を進むアメリカと、オタク文化を極めた日本などはとても相性が良かったのだろう。1週間と経たずに様々なことが判明した。
まずダンジョンの中は長い洞窟になっているのに対し、ダンジョンの入り口の周りを掘り進めてもダンジョンの中につながることは無かった。ダンジョンの入り口は遥か地底から延びる、壊すことのできない直径1メートル程の支柱の上に入り口が乗るような形で作られていたのだ。
また、この少量上がった筋力というのはダンジョンに入ることで筋力が上がり、ダンジョンから出ると上がった分は10分の1となることが分かった。
握力51の人が中でUMAを倒し力が湧いてくるのを3度ほど確認しもう一度握力を測ってみると66になっていた。しかし外に出てみると握力は52.5まで減ったのだ。
結果、現時点でのダンジョンの利点としては、筋トレが簡単ということぐらいだろうと分かったのだった。ステータスと関係のない筋力は外に出ても変わらないようなのだ。
しかし、いくつものダンジョンを管理することが危険と判断した政府は東京を除いた全てのダンジョンを封鎖。しかし、コンクリで入り口を固めた際は突如ダンジョン内から爆発が起きコンクリートを破壊し、さらにダンジョンは恐ろしい勢いで周囲の物を突風のようなもので吸い込んだ。
これによりダンジョンの監視をしていた自衛隊員は行方不明とされ、さらにダンジョンの入り口が現れてしまったので塞ぐことは不可能と判断された。
ただし爆発物どころか爆発の原因すらも発見できなかったため、何度かの実験の末ダンジョンの入り口を建物の中に仕舞うようにすることで封鎖した。ダンジョンの外側に通じる空間があれば大丈夫のようで、度重なる爆発実験の結果、特別な力なき人間がダンジョンに入る意思を持ったとき問題なく入れる環境が保持されないで1週間が経つと爆発、及び吸収によって強制的に入り口が開かれることが分かった。
よって建物は鍵をつけない強固な扉が設置され、四六時中警備が置かれた。そして、この建物はダンジョンダムと名付けられた。
これにより世界中は安全を取り戻し、世界には大災害としてではなく、超常現象として記憶に刻まれたのであった。
世界にUMAが現れる洞窟が突如出現する。政府はそれを正式にダンジョンと改め、その中に住むUMAをモンスターと名付けた。
日本では、北海道、岩手、新潟、千葉、東京、富山、大阪、島根、高知、鹿児島の計10個が発見された。
モンスターは命の危険を感じることがないのか、いくら攻撃を当てても痛みなどで動けなくなることがなく、音に対して次々と向かってくるため重火器の使用は困難だとされた。
ダンジョン内では電子機器のすべてが使用不可能になるが人の脳信号などの極々微弱な電気は問題ない。
ダンジョンに入るとどういう原理か頭の中に文字が浮かび上がりクラスを選ぶことができる。
クラスは、剣・盾・拳・弓・槍・棍・罠・狩人・魔法・回復・付与、の11個。
ダンジョン内では個人にステータスとレベルというものが割り振られ、ダンジョン内で上がった力は外に出ることで10分の1になる。ただ、装備しているものの重さのみダンジョン外で10分の1になるので、ダンジョンから出た瞬間つぶれるということは無い。
ダンジョン外でスキルを使うことはできない。
ダンジョン産の装備には適正レベルがありそれを満たさない人は装備することができない。正確にはダンジョン外での重量軽減なしや、装備している限り消えない眩暈・頭痛・耳鳴りなどの症状が起き、とても動ける状態ではなくなる。
以上、3月発売『ダンジョンのすゝめ』より1章ダンジョンの常識、抜粋