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7日目の満月  作者: 井ノ上 成也
9/12

受け止められない現実

どこか懐かしい光景。

気がつくと公園の砂場にいた。

周りにはたくさんの子供がいる。

ジャングルジムで遊ぶ子供、鬼ごっこをする子供。

楽しそうにはしゃぐ子供たちをよそに、僕は砂場で1人で遊んでいる。

砂の中に虫を入れて閉じ込める。

出てきたらまた閉じ込め、弱ってきたら木の棒で虫の体を引きちぎる。

その瞬間になんだか優越感を覚えた。

しばらくそうしていると、一人の男の子がやってきた。

「何してるの?」

僕は無視して虫を殺す行為を続ける。

するとその男の子がこんな言葉を放った。

「里紗ちゃんも知春ちゃんも他の女の子もその虫と同じ気持ちだったんだろうな」

その声は無邪気な子供の声ではなく、低音で悪魔のような声だった。

僕は驚いて顔を上げる。

突然、首元が熱くなる。

見るとたくさんの血が出ていた。

大量の鮮血。

僕は痛みの中で、何故か幸福感を得ていた。

なんて気持ちがいいんだろう。

さっきまで周りにいた子供たちはいない。

そこに立っていたのは、カッターナイフを手に持ったフードの男だった。

そいつは言った。



「お前は俺なんだよ」



叫び声とともに目が覚める健介。

気がつくと真っ暗な部屋にいた。

目の前に見える窓からは外の様子がみえる。

雨はもう止み、大きな満月が出ていた。

状況が把握出来ない健介。

手足は縄で縛られ、口には猿ぐつわをはめられている。

健介は恐怖の限り叫んだ。

俺はどうなった...?

公園に着いて、後ろから誰かに殴られて...

知春は!?達也は!?

パニックになる健介の前から足音が聞こえてくる。

暗闇から現れたのはフードの男だった。

「目が覚めたかい健介くん」

男はそういうと健介の口にはめられた猿ぐつわを外した。

緊張と恐怖から嘔吐する健介。

「お、お前は誰なんだよ!?

達也か!?達也なんだろ!」

男はニヤリと笑うと、手に持っていた蝋燭に火をつけて言った。

「達也って、白石達也のことかい?

彼ならここにいるよ」

前方がぼんやりと光る蝋燭の炎に照らされた。

そこには、目を背けたくなるほど無残な姿の達也がいた。

すでに息はない。

首元にはあの事件の被害者の様な切り傷。

右手は身体から引き離されて、地面に転がっていた。

達也は虚ろな目で、健介の方をじっと見つめていた。


「嘘だろ...達也...

たつやぁぁぁぁぁ!!!

うわぁぁぁぁぁぁ!!!」

一気に感情が溢れだし、暴れ出す健介。

「こいつ、縛ってたんだけどいきなり暴れだしたから仕方なく殺しちゃったんだ

僕の顔を殴ったからね、そんな右腕はちぎってあげたんだ」

男は冷酷な目で言う。

健介は悔しみと悲しみの涙を流しながら訴えた。

「おい!お前よくも達也を!

達也を疑って...俺...最低だ...

たつやぁ...」

「そう、君は最低なんだよ

君は僕なんかよりももっと最低な人間なんだ」

男の言葉にはどこか怒りが込められていた。

「知春は...?

知春はどこなんだよぉ!」

男は再び手に持っていた蝋燭で後方を照らす。

「知春ちゃんならここだよ」

健介は首を傾け後ろを見る。

そこには、同じように手足を縛られ、猿ぐつわを噛まされた制服姿の知春がいた。

どうやら気を失っているみたいだ。

「おい!知春を解放してくれ!頼む...」

「それには条件がある...

君が...君が犯した罪償いを今ここでしてくれ

それが出来ないなら知春ちゃんを君の目の前で殺してあげるよ」

そう言うと男は知春の元へと進み、首元にカッターナイフを当てた。

俺の罪!?

いったい俺が何をしたんだ!

困惑そうな顔をする健介に男は言った。

「俺を見れば思い出すだろ...?」

そう言うと男は被っていたフードをあげた。

「あぁ...あああ...」

そこにいた男は...

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