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そわそわする。
慣れない環境だからか、さっきの大石のせいなのか。
入学式も、担任のオリエンテーションも、自己紹介もいまいち頭に入らなかった。
いちいち、大石の笑い声が気になるんだ。
「なつき!帰ろー!」
舞が駆け寄る。
初めての登校はあっという間に終わった。
「あ!うん、帰ろう。」
ガタッと立ち上がると響く椅子のすれるおと。
「佐伯、」
呼ばれて左をむくと大石がこっちを見ていた。
「したっけ明日」
くしゃっと笑う大石。
思わず口角が上がってしまうのがわかる。
「…うん、したっけね。」
「なににやけてるんのさぁ」
舞に言われても困る。
だって、あたしがなんでにやけてるのか、あたしにもわかんないんだから。
その日は、帰ってお風呂にも入らないまま布団に倒れこんで、起きたのは次の朝だった。