2‐4
大井町~、大井町~…
聞きなれた駅の名前にハッとする。
寝てた。
時間にすると一瞬。
なんだか、懐かしい夢を見た。
のろのろと席からたって改札を抜ける。
改札を抜けたら、ポケットに入れていた携帯が震え出した。
「もしもし。」
もはやこうなると声を出す動作でさえ、面倒くさい。
「なつき、元気?」
懐かしい声。
「あ、舞!」
画面を見ずに電話を出たから、驚いた。
「ラインしたのに、既読つかないから電話しちゃった!」
そういえば、書類作りに必死で携帯、見ていなかったな。
「急にびっくりしちゃった。ライン、読んでなくてごめんね。どうした?」
懐かしい声に心が弾む。
眠気がふっとんでしまった。
「実はね…」
彼女の照れた声で切り出した話は、4ヶ月後結婚が決まったとのことで、なんとか出席できないかとのお誘いだった。
なんとも急なお祝い事は、どうやら彼女が妊娠したからだという。
「ずっと子どもほしがってたもんね。相手は?」
「ほら、同じクラスだった角谷くん。」
「あ、野球部の?え、え。え、なんで?」
なんで?だなんて、冷静に考えると失礼な切り替えしかただ。
角谷くんは確かに優しいしいい人だけど、二人の共通点が思い付かなかったからだ。
笑いながら、二人の馴れ初めを聴いて、あたしは首を縦にふった。
どれくらいぶりだろうか。
あの場所に帰るのは。
その会話のお陰か、家に帰ってからの記憶はほとんどない。
夢も、見ていない。