2‐3
早足で着いた先は、ざわつく教室。
綺麗な黒板には、「ご入学おめでとう」の文字。
みんなあたしみたいに、着なれない制服。
そわそわする気持ちを押さえて、自分の席を探す。
一番後ろの窓から二列目。
うん、いい席。
「なつき、ちょっと近いね!」
舞はあたしの右斜め前の席。
知り合いが近くにいるっていうだけで、ホッとする。
「うん、忘れ物したときはよろしくね。」
冗談混じりにあたしは舞に言う。
新しい雰囲気に似合わない、使い降るされた机と椅子。
少し穴も空いている。
窓からはグラウンドが広がって、春とはいえ寒いこの地域は桜の時期は、まだ遠い。
背筋がしゃんとする。
これから、この場所であたしはどんな思い出を残して、どんな友達が増えていくのだろうかと思うと気持ちがわくわくしておさまらなくなる。
ぼーっと外を眺めていると、バッと目の前には人が景色を遮った。
「なぁ、頭。大丈夫だった?」
その声に反応して、声の向こうに目を向ける。
ーーーーーー
ーーー
思い出すと、きゅうっとなる。
大好きだったあの場所
あの時間
あのときのあなた
戻りたくても戻れなくて
泣いても泣いても、それは叶わない。
知らない間にあたしは大人になって
あなたはあのときのままで
でも、あの頃がまるでつい最近のように綺麗によみがえる。
あなたは今何をしていますか。
ちゃんと、笑えていますか。
あなたの隣に今、
誰がいるのですか。