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あたしの生まれ育った街は、雪深い北の町。
こんな寒い季節は、当たり前のように雪がしんしんと降る。
ー雪は、暖かい。ー
まるで真逆の言葉をあたしに教えてくれたのは、あなたでした。
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ーー
高校一年、春。
新しい制服に袖を通す。
馴れないメイクに時間を費やして、緊張しながらバスに乗る。
知ってる顔や知らない顔。
おはようの声が交わる車内。
「なつき~。」
奥の方に舞を見つける。
ホッとしたような、馴れないお互いの姿に恥ずかしいような。
そんな気持ち。
「おはよう。」
舞は、同じ中学校出身で二年生のときに初めて同じクラスになった。
少し色素のうすい、細い髪の毛が肩につかず、いつも風にサラサラとそれをなびかせていた。
かわいいな。
その言葉が似合う子で、仲良くなりたい一心で声をかけたのが始まりだった。
「同じクラスかなぁー。」
ふたりとも気になる事と言ったら、今はそれだろう。
弥生町
弥生町…ー
バスのアナウンスが鳴り響く。
「行こっか。」
舞は、ゆっくりと席を立つ。
あたしは、それを追う。
これからの毎日に期待をして。
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ーー
あの時のあたしは、見新しい車内から見える景色に何とも言えない抑揚感に慕っていた。
あの時のあたしに会えたなら、今のあたしは何て伝えるだろうか。
通す制服の感触も
髪をなびかせるあの風も
おはようと交わす声も
教室の匂いも
くしゃっと笑うあなたの笑顔も
全部、全部。
こんなにもこんなにも、思い出すと胸がきゅうっと苦しくなる思い出が、記憶が今でもあたしに残っているよ、と
伝えているだろうか。