1
ーーーー 寒いな。
つないだ手。
あったかいあなたの手。
少しあたしより背の高いあなたを見上げて、あたしは笑う。
ーーー 寒いね。
つないだ手は、あなたがいい。
日が経つほど、じんわりあたしに滲む思いが切ない。
あなたは、いまなにしてますか?
元気ですか
かぜ、ひいてませんか?
笑ってますか
泣いてはいませんか
大好きだよと言いたいのは、今でもあなたがいい。
今のあたしなら。
あなたを全部抱きしめられたのに。
ーーーー‐‐‐
「おくいでさぁーん!!」
キーンっと甲高い声が耳を刺す。
寝不足のあたしには、相当キツイ。
奥井手 なつき
今年で25になる。
世間でいう、「女の賞味期限の年」だ。
年なんて、知らない間に重なっているもんで、自分の期限にさほど焦りがない。
それよりも、ボサボサにまとめたロングの髪の毛もそのままで無心で…いや、白目間際にパソコンを打つあたしが「終わっている」。
そのくらい、毎日の業務をこなすので精一杯なのだ。
「奥井手さん!締め切り今日までだよ!大丈夫なわけ?」
大丈夫じゃなかろうよ。
でも、こちとら必死なんですよ。
ここ3日はまともに寝ていない。
なんて、反発するほど気力はない。
夢みたライターの仕事も、もう日本語みるだけで吐きそう。
この一文字が、いったいいくらになるのだ。
ただ今は、暖かいお風呂に時間を気にせず使って、同世代の女子のように、パックとヨガに励んで、女性ホルモンがなんそらと早寝早起き3食摂取したいわ。
ぶつぶつと、頭の中で文句を並べてenterを押す。
あー、これでやっと家でビールが飲める。