男子高校生1-5
「ミイたちと同じ色……? いや、でも、ミイたちと違う」
「おいおい、どういうことだよ?」
「…………」
子どもはすばやく赤ん坊をだきあげて俺たちを睨みつける。ちょっとでも触れようとしたら噛みつかれそうだ。こっちは狼だというのに。
「ヴィスの話を聞いていたんならわかるだろうが、けっして食べようとかそういうためにお前たちを連れてきたわけじゃない。お前たちはいったい何者だ?」
「…………」
シェイお兄さんはできる限り優しく声をかけるが、子どもは全く警戒をとこうとしない。俺たちにとっては大好きシェイお兄さんだけど、初めてシェイお兄さんと対面すると、その容赦のない冷たさを感じる眼差しや立ち振る舞いに警戒するか怯えてしまうかしてしまうのは当たり前のことなんだろう。実際は優しく頼りになるかっこいい狼のだが、いかんせん見た目や雰囲気が全体的に無表情すぎる。
同じ大人組のヴィス兄やエマお姉ちゃんはそこまで恐い雰囲気ではないのだけれど……。
こちらを睨みつける子どもと、同じく睨みつけるシェイお兄さん。
シェイお兄さん自身は睨みつけている自覚はないと思うけど、子どものほうは確実に睨みつけられてると感じてるはず。赤ん坊を抱きしめる腕がしだいに強くなっている。
「……ぅ、うぎゃあああ! うぎゃああああ!!」
子どもの腕のしめつけで赤ん坊が目を覚ましてしまったようだ。
シェイお兄さんから視線をはずして、子どもは赤ん坊をあやし始めた。
腕を上下にあげさげしつつ、赤ん坊の全身をくるんでいる毛布をやさしくぽんぽんとたたく。
少し拙さは感じるけど、それなりに慣れた様子で赤ん坊をあやす様子から、少なくとも子どもと赤ん坊は知り合いのようだ。子どもはさっきまでの厳しい顔から一転して大きな笑顔をうかべて「よーしよしよし」と赤ん坊を腕の中でゆらしている。
赤ん坊はあっという間に泣きやんできゃっきゃっと笑っていた。
シュウは目をきらきらさせて赤ん坊を見つめている。
「よーしよしよし、大丈夫大丈夫、おこしちゃって悪かったな」
「あぅあぅ」
「あうあうー!!」
「シュウ!!」
初めてみる赤ん坊に興奮をおさえきれなかったのか、シュウは赤ん坊めがけて子どもにとびかかってしまった。
子どもは片腕でシュウを追い払おうと頑張るが、赤ん坊しか目にはいってないシュウはそれらを無視し、赤ん坊をくるんでいる毛布に前足をかける。赤ん坊をかばうようにして乱暴にシュウから背を向けてしまったせいでシュウの前足にひっかかった毛布がはがれてしまった。
毛布がはがれて、かわいいベビー服姿の赤ん坊が現れた。
その赤ん坊の頭には黒い小さな猫耳が、腰からは同じく黒い尻尾が生えていた。
「きゃっきゃっ! わんわん、わんわん!」
「わんわん!」
子どもは赤ん坊を見られないように俺たちからも背を向けようとするが、赤ん坊はシュウをさわろうとじたばた暴れている。
その赤ん坊の様子に気づいた子どもは、一度赤ん坊の目をじっと見つめたあと、小さくため息をついて赤ん坊をそっと地面におろした。
「あぅあぅー! わんわん、わんわん」
「あうあう? 耳、へんな形」
シュウは赤ん坊の頭についている小さな三角形の耳を不思議そうに見つめながら、赤ん坊が触れてくる小さな手の動きに抵抗することなくおとなしくしていた。
「チャットがなついてる……どうして、いや、ということは」
子どもは目を大きくあけてこちらをじっと凝視したあと、目じりに小さな涙の粒をうかべた。
「ここの狼たちは信用していいのか……?」
「わんわんー、わんわんー!」
なんの警戒心をもつこともなくシュウにじゃれつく赤ん坊に子どもは何かしら思うところがあったようだった。
子どもは体の力をふっとぬいたかと思うと、シェイお兄さんやヴィス兄、俺たちに向かって小さく笑みをうかべた。
更新頻度を多くしたいと考えていたのに気づいたら先週よりも文量がへるというゆゆしき事態。