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男子高校生1-4

「ヴィス、これは一体どうしたんだ」

 シェイお兄さんは小さな果物の実がついた房を一つくわえてもどってきた。ヴィス兄の気配を感じて一度狩りを中止にしたらしい。

「これな、拾った」

「ね、ね、これってなに? がぅ?」

「ぷにぷにー」

「リュカぁ……」

 俺たち四匹は、初めて見るそれを興味津々に、もしくはおそるおそる観察する。

「どんな道を通ったら人種のこどもを拾うことができるんだ?」

 眉間にしわを寄せてシェイお兄さんはそれをじっと見つめる。


 ヴィス兄が背中にせおっていたのは、たぶん六歳くらいのおさない子どもと赤ん坊だった。

 子どものほうは全体的に小柄で薄く、腕は子枝のように細い。髪が黒くぼさぼさで、腰のあたりまであるからぱっと見女の子のようだけど、実際はどうだかわからない。男の子なのか女の子なのか見た目で判断できないほど、その子どもはひどい状態だったのだ。

 赤ん坊のほうは全然そんなことはなく、子どもがせおっていたリュックのなかでおだやかな顔をしてすやすやと眠っていた。リュックやそのなかにつめられていた毛布などは子どもが着ていたものと同じように粗末なものだったけれど、子どものような痩せ細ってひどい状態とはなっていなかった。

 ヴィス兄が器用に背中からおろして地面に横に寝かせてから、興味津々なリトやシュウが子どもと赤ん坊の顔のそばまで近づいてはしゃいでいる。それでも子どもと赤ん坊が目を覚ますことはなかった。

 あ、リトが赤ん坊のほっぱたぷにぷにしてる。ちょっとうらやましい。



「説明しろ、ヴィス。まさかさらってきたとかじゃあないよな」

「うーん、ちょっと近いかも……」


 昨日までちょっと遠出をして情報を集めていたヴィス兄は、そろそろ一度帰る時期だと思って捜査をきりあげて暗い山道を駆けていたらしい。曇りのない空からそそぐ月の光を浴びて上機嫌だったヴィス兄は、突然山中から聞こえてきた赤ん坊の泣き声に気づいて声の元へと近づくと、そこにうつぶせになって倒れこんでいる子どもと大きな声で泣く赤ん坊がいたらしい。

 少し気になることもあったヴィス兄は、そのまま子どもと赤ん坊を背負っていつもよりスピードをおとし、ゆっくり時間をかけて棲み家に戻ってきたのだ。


「気になったこととは?」

「いまはもうわからないけど、子どもの体からあのとき襲ってきた鎧の男たちの臭いがかすかにしたことと、この二人からかすかに獣種の気配を感じたってことだ」

「なんだと……?」

「え?」


 俺には全く感じられないけど、ミイも気配を感じているようだった。俺の後ろに隠れて「鎧の男たちとも違うし、わたしたちともなんかちがう……」と体を震わせて呟いている。

 ミイは感覚が鋭く、もうすでにシェイお兄さんに負けないほど気配をつかむのがうまい。一番そういうのに長けているのがヴィス兄で、ヴィス兄は感覚が鋭いというか本能でなんでも察することができるすごい狼だ。

 その二匹がそう言うということは、獣種と人種のハーフとか、そういうファンタジー的ななにかなのなんだろうか?


「ハーフかと思ったけど、それにしては気配が薄い。オレにはよくわかんなかったから、シェイならわかるかなっと思ってとりあえず拾ってきた」

「……ハーフだったら常にその獣種としての形がどこからか現れるものだ。耳にしろ尻尾にしろ――。それらがないということは、先祖返りというやつかもしれん。だいたい、いまの時代獣種と人種がそういう形でかかわることはほとんどなくなったからな」


 先祖返り……?

 ミイたちはよくわかってないようで、首をかしげてシェイお兄さんを見つめている。俺も三匹に合わせて首をかしげてシェイお兄さんを見つめる。


 ……はい! いただきましたシェイお兄さんの静かな微笑み!!

 四匹できゅんきゅんしながらその場でごろごろ。


 ふだん自由きままなリトやシュウも、このときだけは心を一つにしてもだえる。

 俺たち四匹はシェイお兄さんのファンなのだ。女ったらしならぬ子ども組たらしなシェイお兄さんはたまにこうやって俺たちをきゅんきゅんさせてくる。ふだんは頼れるクールなシェイお兄さんがその冷たい表情をくずして微笑むのは久しぶりだ。意外とレアなシェイお兄さんの微笑み。

 もっともレアなシェイお兄さんのきゅんきゅんポイントはびっくりして目をぱちくりさせることで、これまで一度しか見たことがない。



「……なんか、シェイのたらし具合がひどくなってる」

「?」

「いや、シェイこいつら……」

「あぁ、さいしょは一体どうしたのかと心配したが、興奮しすぎるとたまにこうなるんだ。いまは、初めて見る人種――普通の人種ではないが――で思わず興奮してしまったんだろう」

「うーん……」


 意外と鈍いシェイお兄さんとてもいい。


「……話をもどして。こいつらほんとに先祖返りなのか? だとしたら一体なんの先祖返りだ」

「それについては俺だってわからん。だから、直接聞くことにしよう」

「え?」

「さっき赤ん坊がリトに頬をつつかれたときに目が覚めたんだろう?」



「…………」



 少しみじろぎしたあと、ゆっくりと体を起こした子どもは、ボサボサの髪の隙間から月と同じ色をした目をこちらに向けた。



間違えて編集途中のものをはじめあげていました。

すぐに改稿して正しいのをいれなおしました。

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