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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

はい、つまり死ねばよろしいのですね?

作者: 明星ユウ
掲載日:2014/09/07

登場人物が死ぬ話が苦手な方は読まないいいです。

ご不快になられても、責任がとれません。

 



 死にました。

 おそらくは、脳卒中というやつで。

 そして、転生しました。

 異世界に。


 ――訂正。

 元の姿のまま、転移、したようです。


「これはこれは……一体どういうことでしょう?」

 普段はTPOを意識して使わないようにしている本来の口調(・・・・・)が、思わず出てきてしまいます。

 それも、仕方のないことだとご勘弁いただきたく願います。


 ただならぬ頭痛によって意識を失い、気がつけばまさしく幻想的な夜の森の中。仰向けに倒れていた体勢から起き上がって辺りを見回してみると、暗い中でも目を惹く見慣れぬ美しい花々が咲き誇り、これまた目を惹く様々な色の光球が飛び回っているのです。ちょうどそこは巨樹が離れて並んでいる、広場のような場所。見上げた空に驚くほどの星々と、ただしく、青白く輝く巨大な月。


 えぇ、私が暮らしていた世界の月は、ぼんやりとした淡い黄色だったと心得ております。

 それ以前に、ただの光の乱舞ではなく、明らかに意志を持って飛び回る光球など、果たして存在しているのでしょうか?


 夢を見ているのですね、きっと。

 そう思わず結論付けても、おそらく多くの方が同意してくださるでしょう。

 それほどまでに、非現実的な光景です。


 ――最も、ここが夢であれ、現実であれ、私にはさほど変わりはありませんが。


 上半身だけを起こした体勢から、学生服についていた土を払いつつ立ち上がってみます。

 酷く神秘的に見える、眼前の光景。

 思わずしばしの間見惚れ……たのが、まずかったようです。

 ガサッ。そう、自らの後ろの茂みが揺れるのに肩を跳ねさせて振り返ると、そこには。


 とても可愛らしいとは言えないサイズ。

 実に凶悪なお顔をされた、大熊さんがいらっしゃいました。


「おや、これはいわゆる」

 詰んだ、と言うやつですね。


 その言葉を残し、私は大熊さんにガブリ、といただかれました。

 それはもう、間違いなく。

 頭から盛大に、ぱくっと。


 はて、しかし。

 ではどうして、私はまたこの広場に転がっているのでしょう?


 眩しさに瞳を開けば、夜とはまた違った鮮やかな光景を見せてくださった、この広場。

 見上げた空には見間違いようのない太陽が浮かび、良く晴れた天から光を降らせています。


 ゆっくりと起きて、もう一度確認。

 はい。どうやら私、まだ生きているようです。


 ――訂正。

 また、生き返った、と言ったところなのでしょう。


「これはこれは……一体どうすれば良いのでしょう?」

 そう呟いた私の頭の中に、一つの声が届きました。


 それによって、私はこの世界での私の在り方を見出し、旅を始めることとなります。

 声は、私にこうおっしゃいました。


『おまえはこの先、数えられぬほどの死を経験し、そのたびにまた甦る。これは、我の遊戯のひとつに過ぎん。おまえは我の玩具のひとつとして、この世界で最期の死がおとずれるまで、その運命に従って生きることしか出来ない。……まぁ、せいぜい我を楽しませろ』

 私は、笑顔で返事を返させていただきました。

「はい、心得ました。つまるところ、私は数えられないほど死ねばよろしいのですね?」

『……何?』

 不思議なことに、私の頭へと声を届けていらっしゃるそのお方は、先の私の言葉に驚いたように問われました。


 はて、私は何か間違ったことを言ってしまったのでしょうか?

 確認のために言った言葉が間違っていては、この世界での私の生き方をただしく再現することが出来ませんね。


 では、もう一度。


「はい。もう一度言い直させていただきます。――あなた様がおっしゃられたお言葉を、私なりに解釈いたしますと、私はこの世界で、あなた様の玩具として、数えきらないほどの死を体験しながら、生きてゆく――という事であると理解しましたが、これでよろしいでしょうか?」

『……』

 今度は説明があまり得意でない私にしては上出来なほど、良く言えたと思ったのですが、その方は沈黙してしまいました。


 ややあって、ぽつり、と声が響きます。

『……面白い』

「そうでしょうか?」

 反射的に問い返した言葉に、次は笑い声が返ってきました。

『実に愉快! これは思わぬ儲け物だ。死を恐れぬときたか! おまえ、それでも〝人間〟か?』

 実に楽しそうにそう問われるお方に、小さな苦笑がこぼれてしまったのは、許していただきたいです。

 一体私のどこをどう見て、人間でない、とこの方はおっしゃっているのでしょう?

 もしや、私に声だけしか届いていないように、あちらにも私の声しか届いていないのでしょうか?

 そうであるならば、仕方ないとは思いますが……。

 と、疑問はつきませんが、いつまでも黙っているのは失礼です。

 私は苦笑を引っ込めて、この言葉に返します。

「ご期待にそえず申し訳ないのですが、私はれっきとした人間でございます。ただ、少し……」


 そう、私の〝考え方〟は、ほんの少し(・・・・・)


「私は、一般の方々とは異なった考え方をしているようではありますね」

『――なるほど』

 声は、酷く納得したような響きを宿していました。




 以来、私はこの箱庭の異世界で、旅をしています。


 元は二人の男神と、一人の女神の三人の神々が創造したらしきこの世界。

 三人の男女神のうち、一人の男神と元々一人しかいなかった女神が愛を育み、残されたもう一人の男神は不貞腐れて邪悪の道に走った、という伝説は、あながち間違っていないように思われます。


 さて、今日はどのような死が、私に降りかかるのでしょうか?


 端から端まで、私が生きていた元世界の、すんでいた国、その四つ国の面積ほどしかない円盤状のこの異世界にて。


 私は今日も、元気に死をまっとうしております。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 好き嫌いは分かれると思いますが、設定がこうぶっ飛んだ感じのお話はとても面白いと思います。 インパクトもあるし、主人公の超越(?)っぷりが見ていて楽しかったです。 [一言] 今まで私が目にし…
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