最凶のトラウマ?混世魔王との一騎打ち!
不死身の強敵、九頭馬を撃退したのもつかの間、新たな刺客が三蔵と孫悟空の真近まで迫っていたのだ。
はい!どーも孫悟空です。
俺様と三蔵は強敵不死の九頭馬を倒した後、再び旅を続けいたのだ。
ちなみに今は人間の村で食事をとっている最中なんだぜ?
飯を食いながら俺様は、三蔵が何か考え事をしている事に気付き話しかける。
孫悟空「三蔵?どうしたんだ?」
三蔵 「ん?いやな?最近やけに妖怪達の手が込んでいるとは思わないか?」
確かに…そうだった。
以前はただ馬鹿みたいに襲って来るだけの妖怪達だったのだが、いつからかない知恵を使い、何かしら作戦を立てて来る奴達が多くなっているような。
三蔵「もしかしたら黒幕がいるのかもな…」
孫悟空「黒幕だと?」
三蔵「ああ、何者かが後ろで…」
孫悟空「?」
三蔵がそう言いかけた時だった。
三蔵&孫悟空 「!!」
突如、店の外から俺様達に向かって勢いよくぶっとい棍棒が飛んで来たのである!棍棒は俺様達のいたテーブルに直撃し、物凄い音を立てて粉砕したのだ。
俺様達はいち早く殺気に気付き、難無くかわしたのだった。
孫悟空「何処のどいつだぁ!?死んだらどうすんだよ?当たったら危ねぇし、痛いじゃねーかよ!危ない真似するんじゃねぇよ!」
三蔵「いや…間違いなく俺達を殺すつもりで、投げて来たのだろうな…」
棍棒が飛んできた方向に怒り心頭で怒鳴る俺様と三蔵に向かって、何者かが近付いて来たのだ。
『ふふふ…あははは!よく避けたな?褒めてやろう!』
三蔵&孫悟空 「!!」
そこには棍棒を持ち、鎧を纏った武人のごとき姿の妖怪が現れたのだ。
妖怪「俺はお前達に一騎打ちを所望する!」
三蔵「一騎打ちだと?」
孫悟空「誰だ?お前?」
妖怪「俺の名前は混世魔王!いざぁ!参る!」
孫悟空「って、せっかちな奴だぜ?よし三蔵!こいつは俺様に任せろよ?」
三蔵「勝手にしろ!」
俺様は如意棒を抜き出すと、混世魔王に飛び掛かったのである。
混世魔王「ウオオオ!」
孫悟空 「うらああ!!」
混世魔王の振り回す棍棒と俺様の如意棒が幾度となく激突する。その響き合う衝撃音が店内を震わせた。
この混世魔王の棍棒使い…
コイツは確かに強い!
流石にたった一人で喧嘩売って来た事はある。
だが、俺様だって!
本気になった俺様と混世魔王との戦いで、店内の壁にヒビが入り、そこら中の物を壊していく。
当然、突然始まった妖怪同士の戦闘に、何が起きたのか解らずに目を丸くする他の客達…
そして崩壊していく店を見て青ざめる店主に、
俺様達の戦いを見世物として、客から金儲けする三蔵!
て、何をやっているのだか…
孫悟空「やるじゃねぇーかぁ?混世魔王!」
混世魔王「貴様もな!だが、俺の棍棒術はこんなものではないぞ!」
混世魔王の巧みな棍棒捌きが更に勢いを増す。次第に圧され始める俺様。そして調子に乗り始めた混世魔王の口から、思いもよらない言葉が出て来たのだ。
混世魔王「ふふふ…どうだ?お前もなかなかやるようだが俺には遠く及ばん!なにせ俺の棍棒術は、かつての大魔王様直伝なのだからなぁ!」
孫悟空「何だと?かつての大魔王だと?」
混世魔王「貴様の様な下級妖怪では知らぬとも仕方あるまい!良いか?かつてこの地には六人の大魔王様がいらし、その大魔王様は地上界だけでなく神のいる天界をも攻め込んだ偉大なる魔王様方なのだ!」
孫悟空「おぉ!すげぇー!」
…って、何処かで聞いた話だな?
混世魔王「俺はその大戦の最中、そこで大魔王様によりこの棍棒術を直々に教わったのだよ!」
孫悟空「そうなのかぁ?それにしても、その大魔王てのはそんなに凄いのか?」
気を良くした混世魔王は攻撃の手を止め、自信たっぷりに話し始めたのだ。
混世魔王「当たり前だ!俺に棍棒術を教えて下さったのは、かつての大魔王の一人、暴れる知性!漆黒の闘将!平天大聖・牛角魔王様なのだぞ!」
孫悟空「あぁ、牛ちゃんね?」
混世魔王「そうそう牛ちゃん…て、おい!」
孫悟空「いたぃ!」
軽はずみな事を口にした俺様の頭を、混世魔王の奴が殴ったのである。
混世魔王「俺の尊敬する牛角魔王様に向かって、牛ちゃんなんて馴れ馴れしいわぁ!馬鹿者!」
孫悟空「イテテ…す…すまん!あのぉ~牛角魔王様とは別に、お知り合いの魔王様はいらっしゃらないのですか?そちらの話も聞いてみたいかな?なんて」
混世魔王「ん?そうだな…興味あるのか?ならば教えてやろうか?紅一点の女帝妖怪…覆海大聖!」
孫悟空「女は良い!パスだ!」
混世魔王「そうか?じゃあ、百獣の狂戦士と呼ばれた移天大聖の…」
孫悟空「パス!」
いい終える前に却下する俺様に、困り始める混世魔王。
混世魔王「では冷酷なる炎術師!混天大聖…」
孫悟空「パス!パス!」
混世魔王「いい加減にしろ!貴様は何を聞きたいのだ?お前が教えて欲しいと言うから…」
孫悟空「ほらぁ~!もう一人いないか?大切な魔王様をさ~?」
混世魔王「ん?」
孫悟空「ほら?尻尾があって、野性的な魔王様がさ?」
混世魔王「おぉ!確かにいらした!良く知ってるな?その名を!」
孫悟空「その名を!」
混世魔王「六耳の通風…」
孫悟空「ちゃう!ちゃう!ちゃう!」
混世魔王「だから何が違うと言うのだ!いい加減怒るぞ?」
孫悟空「まだ五人だろ?六人いるんじゃないのか?いるだろ?」
その時…
混世魔王はおもむろに嫌な顔をした。
何か思い出したくない苦い思い出が、頭を過ぎったかのような…
孫悟空「なぁ~いるだろ?いたよ!いたいた!」
混世魔王「た…確かに…いる…しかし…」
すると混世魔王の様子に異変が起きたのだ。
肩を震わせ、顔を真っ赤にさせていたのである。
混世魔王「確かに…もう一人…」
孫悟空 「おっ!どんな魔王様なのだ?ワクワク!」
混世魔王「あの方は…」
孫悟空 「あの方は?」
混世魔王は怒りながら怒鳴りちらす。
混世魔王『アイツは我が儘坊ちゃん!悪戯の天才!腐れ外道の最低傲慢野郎!心底から根が腐りきったイジメ野郎ダァーッ!』
孫悟空「……へ?」
混世魔王「アアア!蘇る!あの小間使い?パシリ生活!いつもいつも無理難題を俺にやらせて、こけにしやがってぇー!!」
トラウマか?
パシりって?
ん?あれ?
アッ!
孫悟空「あっ?もしかしてお前、混ちゃん?」
混世魔王「そう、混ちゃん…て、ん?馴れ馴れしいわぁ!ボケぇ~!」
再び混世魔王が俺様を殴ろうとする拳を、今度は寸前で止めたのだ。そして恐る恐る今度は俺様に問い始めた。
混世魔王「お前…何かやけに詳しいな?何故だ?ん?お前…猿だな?しかも…金色の…」
孫悟空「へへへぇ~」
この辺りで解る奴は解るだろ?
混世魔王「…確か…あの…魔王様も…猿の大妖怪で…その姿は金色の…あっ…あっーー!」
孫悟空「思い出したか?」
混世魔王「うわあああ!!まさか?まさか?お前…いや、貴方様は??」
孫悟空「どうやら思い出したようだな?混ちゃん!」
混世魔王『聖天大聖・美猴王様??』
孫悟空「おぅ!今は孫悟空と名乗っているんだぜ?」
突如、俺様に対して膝をつき、頭を下げる混世魔王。
混世魔王「その…お姿は…いったい??」
孫悟空「ふっ…ちょっと訳ありでな…こんな可愛らしい姿になっているんだ!」
混世魔王「か…可愛いって…面影がほとんどないじゃないですか?」
そこに、三蔵が近寄る。
三蔵「知り合いだったのか?」
孫悟空「ああ、昔俺様が世話してやった妖怪だぞ!」
混世魔王「何が世話をしたですかぁ?俺は俺は…」
混世魔王の身体が震えていた。過去の嫌な体験を思いだしているようだ。
まさにトラウマ!!
って、俺様はそんな酷い事したか?
そういえば、よく言うよなぁ~
イジメられた本人はいつまでも根に持つが、イジメた本人は全然覚えてないと…
…俺様ってそんな酷い奴だったかな?
いや!それでは俺様が三蔵みたいじゃんか?
ないない!あははは!
すると突然混世魔王は立ち上がり、俺様を見下ろした。
孫悟空「おっ?やるかぁ?」
俺様が如意棒を構えると、何を思ったのか?
混世魔王「うぉりゃああ!」
混世魔王は自分の武器を地面に叩きつけたのだ!
その爆風で埃が舞い上がると…
孫悟空「ようやく本気で来るかぁ!」
ん?
いない?
今まで目の前にいたはずの混世魔王が消えてしまったのだ。
何処へ行ったのだ?
三蔵「逃げたな…」
孫悟空「…………」
三蔵「よっぽど酷い事をしたんだな?猿よ?」
孫悟空「三蔵が俺様に普段している事に比べたら、可愛いもんだったぞ?」
三蔵「どうやら…まだ教育が足りないようだな?」
孫悟空「あん?誰が教育してるって?イジメだろ?お前のは??」
今度は俺様と三蔵の喧嘩が始まるのだった。
てか、ここの店の修理代どうすんだよ?
その頃、混世魔王は…
混世魔王「くそ!まさか、あの聖天大聖が相手なんて冗談じゃないぞ!」
混世魔王は霊感大王の屋敷に戻って来ていたのだ。霊感大王に文句言って、三蔵討伐から降りると伝えに来たのである。
混世魔王は霊感大王のいる部屋をけたましく開け、霊感大王に向かって行く。
部屋には霊感大王が立派な椅子に座りながら、血相変えて入って来た混世魔王を見ていた。
霊感大王「いかがなさいました?混世魔王殿!何か問題でもありましたか?」
混世魔王「ふざけるな!俺は降りるぞ!抜ける!俺は聞いてないぞ!まさか相手が…」
霊感大王「かつての魔王!聖天大聖・孫悟空だと?」
混世魔王「まさか貴様?知っていて俺達をあの聖天大聖にけしかけたんじゃあるまいなぁ?」
混世魔王は怒りながら霊感大王の肩を掴み上げる。
霊感大王「止めてくださいよ…」
混世魔王「返答によっては、このまま貴様を!」
霊感大王「どうするんです?」
混世魔王「貴様を!…貴様を…きさ…き…?」
その時だ!混世魔王は自分の腕に力が入らない事に気付いたのである?
混世魔王「お前…な…何を…?」
見ると、混世魔王の腕に霊感大王の手が触れていたのだ。
霊感大王「私はですね~自分が触れた相手の妖気を吸収する事が出来るのですよ!」
混世魔王「は…放せ…はな…は…」
混世魔王の腕が見る見るうちに萎んでいく。
逞しい腕が胸板が…
まるで枯れ木の様に萎んでいったのだ!
フニャフニャ…
ペタン…
霊感大王「まったく…たかが昔、少しばかり名があった魔王なんかにビビりやがって…雑魚は雑魚らしく私の言いなりになっていれば良いものを!全く私の手を汚させるなんて…」
霊感大王は自分の手をハンカチで拭うと、混世魔王の屍の上に投げ捨てたのだった。
霊感大王「さてさて…次はどういたしましょうかねぇ…ふふふ…ふふふ…」
そんな事とはつゆ知らず…
俺様と三蔵はと言うと?
壊した店内の修理を、怒り狂う店長にやらされていたのであった。
孫悟空「くそぉ!混世魔王め!今度あったら必ずぶん殴る!」
三蔵「猿!喋ってないで手を休めずに働け!」
俺様達の旅はまだまだ続くのだった。
孫悟空「いやあ~混ちゃん懐かしかったな~うん。て、あれ?三蔵?」
三蔵「そんな事より猿よ!次話は俺が大活躍する!必ず読むのだ!わかったな?」
孫悟空「おっ?おう!」