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転生記  作者: 河童王子
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牛角魔王の見せた涙!


ナタクによって三蔵一行より引き離されてしまった孫悟空。


孫悟空はナタクの雷網から抜け出すも、そこで炎を操る紅孩児と名乗る少年と出会うのだった。



俺様は孫悟空様だ!



三蔵と離れてから一日が過ぎようとしている。俺様は今、ダチになった紅孩児と一緒にいたのだ。



紅孩児「なぁ?ゴクウはこれからどうするんだ?何処か行く所あるんか?」


孫悟空「ん?俺様は…俺様は西へ向かうつもりだ!三蔵の所へ戻る!」



紅孩児「西?三蔵?」


孫悟空「そうだ!西だ!西には俺様を待っている仲間がいるんだ!だから少しでも早く仲間達と合流しないといけないのだ!」



紅孩児「何?ゴクウ!お前には俺様以外にも仲間とか友達てのがいるのか?」


孫悟空「ん?ああ!豚とか河童とか…三蔵とか…な!」



紅孩児「オォー!スゲーな!お前もしかしてダチマニアか何かか?」



孫悟空「違うわ!何がダチマニアだ!紅孩児にはいないのか?そういう仲間とか友達?」



紅「…………」


紅「…………?」


紅「…………!」




何か泣きそうな顔になっている紅孩児に、俺様まで涙が出そうになる。





コイツ…


何か可哀相な奴なんだな?





孫悟空「わっ!悪かった!そんなに悩むなよ!気を悪くしたらごめんな?」



紅孩児「よくわかんないや!」



無邪気な顔で笑う紅孩児に、俺様は少し救われた気分になった。



紅孩児「俺様は今まで一人で旅をしてきたようなもんだからな~」


孫悟空「旅?旅行とかか?」



紅孩児「いや!そんなんじゃないぞ!俺様には仇の妖怪がいてな!ソイツを倒すために武者修業の旅をしているのだぞ!」


孫悟空「仇?一体どんな妖怪だ?お前なら大概の妖怪相手に負けたりはしないだろ?」


紅孩児「馬鹿言え!その妖怪はそこいらの妖怪とは格が違うんだぜ!」


孫悟空「紅孩児がそういうとは…一体何者なんだ?ソイツは?」




次に紅孩児の口から出た名前に、俺様は自分の耳を疑ったのだった…





紅孩児「知っているか?妖怪世界の六大妖魔王と呼ばれている『牛角魔王』って奴を!」



孫悟空「ぎぃ?牛角魔王だってぇー!?」



紅孩児「知っているのか?」


孫悟空「あっ…いや…有名だからな…で、一体何をしたんだ?その牛角魔王が?」



俺様は話が話だけに俺様と牛角魔王との関係を隠す事にしたのだ。




紅孩児「牛角魔王は……俺様の母様の仇だ!俺様が産まれて間もない頃、牛角魔王の奴が俺様の母様を手にかけた上、母様を庇った父様にも卑怯な手段で深い手傷を負わせたのだ!だから父様は今も動けないでいるのだ…。だから!俺様が動けない父様に代わり牛角魔王を討ち取ってやるんだ!」



孫悟空「…………」





俺様は唾を飲み込んだ。







孫悟空「ちなみに紅孩児の母ちゃんの名前は何て言うのだ?」



紅孩児「あん?変なこと聞くな~?聞いてどうするんだ?まぁ、良いけどよ…母様の名前は羅刹女って言うんだってよ!実際、俺様が産まれて直ぐに亡くなられたから、よくは憶えてないのだけどな…」



孫悟空「羅刹女だって?」



その時、俺様の中で一つの仮説が繋がったのだ。




それは、俺様達三蔵一行が牛角魔王の住む火炎山に行った時の話である。





俺様は牛角魔王との激闘の後の話だ!


実際は小手合わせだったのだが…




孫悟空「なぁ?牛角よ?今日は会えて良かったぞ!」


牛角魔王「俺もだ!久しぶりに楽しんだ…しかし本当に運が良かった」


孫悟空「どういう事だ?」


牛角魔王「俺は今日、この地を出るつもりだったのだ!」


孫悟空「出るって?どう言う事だ?」



すると、俺様は牛角の様子が何かおかしい事に気付いたのである。



牛角魔王「孫悟空…」


孫悟空「なんだよ?」



そして牛角の奴は俺様に驚く話を聞かせたのだ。




牛角魔王「俺にはお前が封印されている間に嫁さんと子供が出来たのだ…」



孫悟空「そうか…それはすげぇ…ん?さっ?さっ?妻子持ちだとぉー!!」



俺様は突然の告白に驚いて目を丸くしていた。



牛角魔王「そうだ…」


孫悟空「すげぇ!すげぇー!だったら紹介してくれよぉ!なぁ?何処にいるんだ?」



すると牛角魔王の奴が右腕を岩に叩きつけたのである。


岩は一撃で粉砕し、牛角の凄まじい覇気が大地を揺らす。



孫悟空「どっ!どうした…んだ??」



そう言いかけた時、俺様は牛角魔王の怒りの形相の中に一粒の涙を見たのだった。




そして…


俺様は気付いた。




牛角魔王の奴に何かとんでもない過去があった事を…



孫悟空「牛角…話せ!何があったのだ!?」



牛角魔王は冷静になった後、静かに自分自身に起きた経緯を語り始めたのである。





牛角「あの日…」





俺様が封印された後、牛角魔王には羅刹女と呼ばれる女妖怪と知り合い、夫婦となったそうだ。そしてこの地にて地下神殿を造り、幸せに暮らしていたと言う。



そんな幸せな日々を過ごしていた牛角魔王を腑抜けになったと、牛角魔王の配下達をたぶらかしながら自分の配下とし、反旗を覆した者が現れたのだ。




そして…




牛角魔王は何やら不穏な空気を感じた。


その日は羅刹女が牛角魔王との間に生まれる子供の出産の日であった。



羅刹女「貴方…大丈夫?」


牛角魔王「ふっ…俺を誰だと思っている?六大妖魔王の一人、牛角魔王様だぞ!心配する事はない!お前はただ、これから産まれてくる俺達の子供を無事に産んでくれれば良いのだ!」



そう言うと牛角魔王は鎧を纏い、武器(斧)を手に取り戦の準備を始めたのである。



羅刹女「貴方…気をつけて…」



牛角魔王「では、行って来る!所詮、己の力量も計れぬ者が俺の首をとって、名前を挙げようとしているのだろう!」



牛角魔王は城を飛び出し、自分の領地に入って来た妖怪を探す。



牛角魔王「何処だ?確かに気配はするが…」



牛角魔王は叫んだ!



牛角魔王「何処の輩か知らんが、俺はいつでも相手になってやる!だから姿を現せ!それとも臆病風にふかれて出て来られぬのか!」



《ビューーー!》




すると、何処からともかく炎の矢が牛角魔王目掛けて飛んで来たのだ!


牛角魔王はその矢を片手で軽々と受け止めたのだ。



牛角魔王「ふん!」



だが、見ると牛角魔王の手が焼き焦げていたのだ。



牛角魔王「この炎の矢?どうやら、ただの臆病者ではなさそうだな…」



しかしその後、何の攻撃もなく謎の妖怪の気配は消えてしまったのだ。


仕方なく牛角魔王は神殿に戻る事にしたのである。




羅刹女の待つ神殿に…



しかし、そこで牛角魔王が目にしたのは!




胸を槍で貫かれている妻…


羅刹女の姿であった!




牛角魔王「羅刹女ーー!」



羅刹女は既に瀕死の状態であった。



羅刹女「ぎぃ…牛角?ご…ごめんなさい…私…」


牛角魔王「喋るな羅刹女!ぐっぐぐぐ…一体誰が?誰がお前を!!」




牛角魔王は怒りに奮えていた。


牛角魔王は今にも危険な状態の羅刹女になすすべもなく、羅刹女の身体を抱きしめ涙する事しか出来なかったのである。



が、直ぐにその身体から血の気が引いたのである。




羅刹女「貴方を…貴方を愛していました…」




その言葉を最期に羅刹女は息絶えてしまったのだ。




牛角魔王「ら…羅刹女?…羅刹女…羅刹女!羅刹女ー!うぐゎあああああ!」




冷静な牛角魔王が取り乱し涙を流す。



牛角魔王「ウググオオオ!」



そこに幾つもの妖気を感じたのである。



それは、牛角魔王の配下…


いや?配下だった妖怪達であった。




頭上に角を持つ妖怪達が下品な笑みを浮かべて近付いて来たのだ。



牛角魔王「き…貴様達か?貴様達が…羅刹女を?!」



妖怪達「俺達は貴様にはもう従わねぇ!貴様も死にさらせ!牛角魔王よ!城の外には十万以上の仲間達が貴様の首を狙って集まって来ているんだよ!」




妖怪達は一斉に牛角魔王に襲い掛かって来たのだ。



が…



今の怒れる牛角魔王の相手ではなかった。




振り払った斧の暫撃が妖怪達を細切れにした。





その後は…





反旗を起こした十万以上の妖怪達の屍の上で立ち尽くす牛角魔王。涙を流し、怒りに奮える牛角魔王の胸には『復讐』の二文字が刻まれたのだった。




なぜなら、そこに黒幕と思われる奴がいなかったからである。




俺様は牛角魔王の話を聞いた後、



孫悟空「許せねぇ…仇の見当はついているのか?」


牛角魔王「いや…だが、生きていれば…俺の…俺の息子がいるはず…」



羅刹女が命の灯が消える間際に牛角に言ったのだ。




「連れ去られた息子をお願い」と…






孫悟空「息子?生きているのか?何か目印みたいのはあるのか?」



牛角魔王「俺の息子なら、間違いなく…これがあるはずだ!」




牛角魔王は自分の頭上の角を指差した。



それ以上、俺様は何も言えなかった。






そうか…


間違いない!




俺様は紅孩児の頭上を見たのだ。



紅色の髪の毛から黒く光る…二本の角!



紅孩児…コイツは…



三蔵…



悪い…



俺様…




ダチのために、ちょっと…





寄り道してくるわ!




許してくれるよな?




だから、もう少し待っていてくれよ…





紅孩児「なあ~?何かして遊ぼうぜ!遊ぼう!遊ぼう!」


孫悟空「って、お前は子供か!お前だって、そんな事している場合じゃないだろ?」


紅孩児「・・・そうだな!俺様は母上の仇の牛角魔王を討たねばならない!遊んでなんかいられないぜ!」


孫悟空「ちょっと・・・遊ぼうか?」


紅孩児「本当か?よし!ゴクウが言うなら仕方ないな?だったら目一杯遊ぶぜ!」


孫悟空「・・・・・・・・・」


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