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転生記  作者: 河童王子
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不動明王・降魔浄火炎!



四鈴から聞かされた七姉妹の悲劇に、三蔵と孫悟空が今、静かに怒る。




俺様は孫悟空だぁ!



俺様と三蔵は四鈴に案内されて、屋敷の隠し通路から地下にいると言う化け物のねじろへと向かっていた。



俺様達はロウソクの炎を頼りに進む。


前方には四鈴が先を歩き道案内をしている。


俺様はあいつの背中を見て、思い出していた。


あいつの背中には抉られて貪られた痕があったのだ。


内蔵は食われ、あいつの身体は空洞。皮と骨のみの傀儡。



生きた屍なのだ。



三蔵「おい!猿!」



俺様は三蔵の呼びかけで我に返った。


その視線の先には、糸に絡まれて繭状になった玉が幾つも積まれていたのである。


三蔵「あれは?」


四鈴「この宿屋に誘い込まれた男達の躯です」


孫悟空「躯?」


四鈴「はい。あのようにして非常食にするのです。そして、その中でも上等だと判別された繭は別の場所へと送られるのです」


孫悟空「別の場所って何処にだよ?」


四鈴「それは・・・」


三蔵「話はそこまでにしよう!猿、どうやらお出ましのようだぞ!」



四鈴が続きを言いかけた時、三蔵が遮ったのだ。



孫悟空「何?おらおらおら!隠れてないで出てきやがれ!」



三蔵「あそこだ!」



三蔵が言った通り、洞窟の奥から禍々しい妖気が噴き溢れてきたのだ!



そいつは洞窟の天井をゆっくりと進みのがら、こちらへと近付いて来た。




そこに現れたのは、巨大な土蜘蛛…女拉蜘蛛じょろうぐもの妖怪だったのだ。




女拉蜘蛛「おほほほ!四鈴!その二匹を直接連れて来てくれたのかい?」


四鈴「わ…私は…」


孫悟空「お前、笑っていられるのも今のうちだぞ!」



ん?


あっ?あれ?お前達?


見ると、女拉蜘蛛の懐に、糸で縛られて動けないでいる八戒と沙悟浄が吊るされていたのである。



八戒「よう~猿~助けてくれよ~!」


沙悟浄「孫悟空の兄貴~!助けてください~!」


孫悟空「お前達…何をやってんだよ??」


八戒「面目次第もない…」


孫悟空「自力で何とかしやがれぇ!」


沙悟浄「それが…私達に絡み付いている糸が妖気を吸い取っているみたいで力が出なくて動けないのですよ~!」



三蔵「この、役立たず共が!」



まぁ~あいつ達の事だから、例え娘達の正体が解ったとしても、手を出せずに捕まったんだろうな…


とんだ甘ちゃんだぜ!



女拉蜘蛛「ふふふ…貴方達も直ぐに私の餌食にしてあげるわ!」


すると、女拉蜘蛛の身体から人の姿の上半身が現れたのである。


その姿は、先程俺様達の前に現れた女主人の女福の姿であった。



あいつが本体だったのか?



三蔵「どうやら化け物の本性を現したようだな?」


女拉蜘蛛「おほほほ!仲間を捕われ、手も足も出まい!」



三蔵「行くぞ、猿!」


孫悟空「おうさ!」



三蔵の剣から業火が噴き出し、俺様の身体から妖気を高めつつ妖気玉を作る。



三蔵&孫悟空「くらえ!」



俺様と三蔵の攻撃は見事に女拉蜘蛛へ直撃したのだった!



女拉蜘蛛「うぎゃあ~!」


悲鳴をあげる女拉蜘蛛と、



八戒&沙悟浄「うぎゃあ~!!」



・・・八戒と沙悟浄。



八戒&沙悟浄「こぉ!殺す気かぁ!」



女拉蜘蛛「仲間事攻撃してくるとは考えてもみなかったわ!何て恐ろしい…腐りきった奴達なの!」



三蔵&孫悟空


「チッ」



八戒&沙悟浄「おいおい!今、舌打ちしませんでした?」


女拉蜘蛛「だったら!これならどうかしら?」



すると今度は女拉蜘蛛の身体から六体の人間の姿をした何かが現れたのだ。そうそれは、操られている姉妹達だったのだ!



娘達は様々な武器を手に取り、俺様達に向かって襲って来たのである。



四鈴「皆!止めて!」


三蔵&孫悟空「くそ!これじゃ手も足を出せね!」



八戒&沙悟浄「…………」



ん?何だ?二人とも?


その差別されたような目は?



蜘蛛妖怪「行きなさい!私の可愛い娘達!」


一鈴が刀を持って三蔵に襲い掛かる。


三蔵「ぐっ!」


続けて、二鈴、三鈴も続けて刀を降り下ろして来たのだ。


孫悟空「うおっ!」



俺様は娘達の攻撃を躱しながら、油断していた女拉蜘蛛目掛けて妖気弾を投げつけたのだ!




やったー!命中!


ん?



「キャアアア!」



女拉蜘蛛が悲鳴をあげると、同じく女拉蜘蛛に繋がっていた娘達も痛みに苦しむ。



女拉蜘蛛「ふふふ…酷い事するね?お前!私とこの娘達は繋がっているのよ!痛みも同じく伝わるのさ!」



三蔵「くそ!」




忘れているが、八戒と沙悟浄も目を回していたのは・・・



見て見ぬふりをしよう。



俺様と三蔵が戦いに躊躇している間も、娘達は刀を振り回して斬りかかる!



四鈴「皆!やめてください!私達の戦うべき敵は三蔵様じゃありません!」



その時、一鈴が四鈴の声に攻撃を止めた。



一鈴「………」



一鈴は涙を流していた。そして、二鈴、三鈴、五鈴、六鈴、七鈴も動きを止め同じく涙を流していたのだ。



その涙は…


真っ赤な血の涙であった。



『…わ…た…し…達を…殺…して…お…ねが…い……私…達を救…って…』




娘達の目はそう言っているように思えた。



孫悟空「…三蔵?」


三蔵「猿…苦しませずに…いくぞ…」


孫悟空「ああ…でもどうする?」


三蔵「俺に策がある!猿よ?少しの間時間を作れ!」


孫悟空「あん?おぅ!解ったぞ!」



俺様は三蔵を庇いつつ、姉妹達の攻撃を受け止めていく。



孫悟空「くそ!手加減するのは思ったよりキツイぜ!ならば!」



俺様は印を結び分身体を呼び出して娘達を押さえ込んだ。



女拉蜘蛛「こしゃくな猿め!これでもくらいな!」



なっ?


蜘蛛妖怪の口から放たれた糸が俺様に絡み付いたのだ!



孫悟空「何だ?こりゃあ!」



ヤベェ…


こりゃ~身動きが取れねぇぞ?


分身達は糸に絡まれると、力を奪われて消滅していく。



三蔵!


早く何とかしやがれぇ!




その時だ!



三蔵「待たせたな!」



そして、三蔵が叫んだのである。



『ナウマク・サマンダ・バザラ・ダン・カン…』



三蔵の降魔の剣から放たれた炎が生きているかのように女拉蜘蛛の糸に絡み付き、辿るようにして女拉蜘蛛の身体をも炎に包んでいく。



女拉蜘蛛「何?この炎は?嘘?嫌!消えない?消えないわ??」



女拉蜘蛛はもがき炎を消そうとするが、余計に炎が身体に纏わりついていく。


しかも何だ?あの炎は?白い炎だと?




『不動明王・降魔浄火炎』




三蔵「俺の白き降魔の業火は!邪悪な魂のみ燃やし尽くす浄化の炎なのだ!」



女拉蜘蛛の炎はさらに燃え上がっていく。



女拉蜘蛛「な?何じゃこれは??うぎゃあああ!身体が焼ける!」


孫悟空「スゲー!」



炎が女拉蜘蛛の身体を覆い隠し火柱となった時、蜘蛛の本体らしき何かが飛び出して来たのだ!そいつは人間の姿の女福みたいだった。



女福「ぎゃあ~!たまらん!」


孫悟空「おっと?逃がさねーよ!」



俺様は待ち構えていたかのように、持っていた如意棒を飛び出して来た女福に向かって投げつけると、見事に女福の身体を貫いたのだ!



女福「馬鹿な…あぎゃああああああ」


孫悟空「へぇん!テメェに容赦しねぇぜ!」



女福は断末魔をあげながら蜘蛛の本体と同じく燃え尽きたのだった。



これで一件落着?


その直後…



「うぎゃあああ!!」



新たな悲鳴が起きたのだ!!



八戒と沙悟浄の奴が三蔵の浄火の炎をお尻に燃え移らせた状態で走り回り飛び出してきたのだ。



八戒&沙悟浄「お尻が焦げる~!」





アハハ…


あいつ達今回良い所ないな~



三蔵「………」



三蔵は無言で女拉蜘蛛の燃えかすを眺めていた。すると燃え焦げた屍の中から、六つの光りが浮かび上がって来たのである。




あれは、魂?



孫悟空「あれはもしかして?」


三蔵「うむ」



六つの魂は俺様と三蔵の元へやって来ると、宙に浮いたまま止まったのである。




『オン・カカカ・ビサンマエイ・ソワカ…オン・カカカ・ビサンマエイ・ソワカ…』



気付くと、三蔵が新たな真言を唱え始める。



三蔵「地蔵菩薩の名を借りて…我が差し伸べる…お前達を縛り付けている悪しき縛りから解き放ち、慈悲なる心にて救済の道を開かん…」



『極楽浄土!』



三蔵が空に向けて金の錫杖を掲げると、天より光が差して六人の魂を導き始めたのだ!



すると光は人の姿を現したのだ。あれは娘達の霊魂か?



一鈴「ありがとうございます…三蔵様…これで私達姉妹の魂は救われました…本当にありがとうございます…私達六人の魂は天に召されます!」



三蔵「うむ…」



娘達は三蔵に一人一人頭を下げて礼をした後、美しき六人姉妹の魂は昇天して逝ったのだった。



孫悟空「三蔵、やったな!」


三蔵「ああっ…」


八戒「おい!三蔵の旦那!オラ達を殺す気らか!」


三蔵「…さっきも言ったが、邪悪な魂だけを…あっ!お前達危なかったな?」


八戒「ゾッ!オラ達死ぬ所だったんらか?」


沙悟浄「私…チビりました」



三蔵「そうか?よく生きてたな?お前達?ハハハ!」


八戒「この腐れ外道!いんや?腐れ三蔵!」


沙悟浄「今回ばかりは私も泣きますよ~」



孫悟空「生きていたのだから、気にするな!それに自業自得だろ?アハハ!」


八戒「他人事だからって!おぃ!河童も何か言ってやるら!ん?どうしたら?」



沙悟浄「あれ?あれれ?」


孫悟空「河童がまたおかしくなったぞ?」


沙悟浄化「違いますよ!何かおかしいのですよ!」


八戒「可笑しいのはお前らよ!」


沙悟浄「だって、変じゃないですか?何で、四鈴さんがまだそこにいるのですか?」



へっ?


そう言えば・・・



見ると確かに四鈴は今だに三蔵の傍らに残っていたのである。


沙悟浄「それに、今さっき一鈴さんが私達六人の魂は天に召されますって…?七姉妹じゃなかったのですか?」



はっ!


えっ?あれ?



俺様達がそれに気付いたと同時に、四鈴が静かに動き、


突如、四鈴の衣服の袖が伸びて三蔵に巻き付いたのだ!



三蔵「ウグッ!これは?」



三蔵は突然の攻撃に身動き取れずに捕まったのだ。



孫悟空「何してんだよ!四鈴!何がどうなっているんだ?」



俺様は如意棒で四鈴に殴り掛かったのだ。


八戒と沙悟浄も武器を構える。



孫悟空「貴様は何者だ!」



こいつ?何かやばいぞ??



その時、四鈴の身体から妖気が立ち込めたのである。



間違いねぇ!


こいつは人間じゃねぇ!いや、最初から屍で人間じゃなかったが…



正真正銘の妖怪だぁー!




四鈴「ふっふふふふ…どうやらばれてしまったようね?」


孫悟空「お前は何者だ?」


八戒「猿、気をぬくなや!」


沙悟浄「あわわ?三蔵様ぁ~」



三蔵は完全に油断していたらしく、手も足も出せない状態だった。




孫悟空「くそ!」


八戒「行くらや!」



俺様と八戒は二人がかりで三蔵奪取のために、四鈴に攻撃を仕掛けたのだ。だが、四鈴にはまったく当たらないのだ??



四鈴「アハハ!も~う!本当に男って、せっかちなんだから~!お馬鹿な猿と豚!アハハ!」



俺様は八戒と沙悟浄と同時に四鈴を囲むと、四鈴は臆する事なく強烈な覇気を放ち、俺様達を吹き飛ばしたのだ!



『うぐはぁ~!』



八戒「この娘強いらよ!」


沙悟浄「手も足も出ませ~ん」


孫悟空「こいつただ者じゃねぇ?四鈴!正体を現せ!」



四鈴「ウフッ…いっぱい楽しませてくれたお礼に教えてあげるわ!」



すると、四鈴の身体から更に強力な妖気が立ち込め、本来の姿を現していく・・・



「私が誰だって?」



四鈴とは違う声?


その姿は真っ赤な派手な衣に身を包んだ長い黒髪の女妖怪が現れたのだ!


そいつは黒猫みたいな印象の少女であった。


だが、か弱い見た目とは裏腹に凄まじい妖気が俺様達の動きを止めた。




『私は女妖怪のボス!名前は鉄扇!鉄扇ちゃんと呼んでね!』




て…鉄扇ちゃんだと?


孫悟空「ふざけるな!三蔵を返しやがれぇー!?」



鉄扇「あら?貴方、妖怪のくせに変な事言うのね?私達妖怪が坊主を襲って何か悪いの?」



孫悟空「ん?……ん?」


沙悟浄「悩まないでくださいよ~!」


孫悟空「そうだった!この坊主はな、糞生意気な奴だけど俺様の相棒だ!だから俺様以外の妖怪が手を出すのは許さん!」



八戒「微妙らな?本当素直じゃねぇらな?」」


沙悟浄「孫悟空兄貴はツンデレですね?」


孫悟空「お前達うるさい!」




鉄扇「要するに貴方達は馬鹿なのね?話にならないわ!今からその坊主は私が食べるから、それまで静かにしていてくれないかな?嫌?」



孫悟空「はい!嫌です…って、そんな事されてたまるかぁ!」


八戒「あんまり男を舐めるなよ!」



すると鉄扇の顔付きが冷たく豹変したのだ。


鉄扇「弱い癖にあんまり騒ぐなよ…男の癖に…」



なっ?


鉄扇の一睨みで俺様達は金縛りにあったのだ。



うっ…動けねぇ?


鉄扇は身動き出来ないでいる三蔵の元へ近付くと、沙悟浄が震えながら三蔵を庇っていたが、鉄扇に蹴られ吹っ飛んでいく。



沙悟浄「うきゃあ!」



そして三蔵を縛りあげている帯がきつく締めあげたのだ。



三蔵「うぐわああ!」


鉄扇「この坊主助けたかったら、私の住む城にまで来てごらんなさい?そうね…一週間くらいなら食べないでいてあげるから!」



鉄扇は袖から鉄の扇を取り出し上空に放ると鉄の扇は巨大化し、その上に飛び乗ったのだ。しかも三蔵を宙吊りにして!?


鉄扇は洞窟の天井に向けて手にした鉄の扇に乗せた妖気の玉を投げると、天井は崩れ落ちて空が見えたのだ。




鉄扇「あんまりモタモタしていると食べちゃうからねぇ~!バイバイ~!」




孫悟空「待ちやがれ!三蔵を返せ!」


八戒「ぐわぁ!」



鉄扇が飛んでいなくなると、俺様達の金縛りが解けて自由になったのである。


そして、崩れ落ちる洞窟から命からがら抜け出すと、既に鉄扇と三蔵の姿は見えなくなっていたのだった。




孫悟空「追うぞ!」


八戒「待つら猿!やみくもに追いかけても仕方ないらろが?」


孫悟空「だからって三蔵を見捨てられるかよ!」


《バギィ!》


すると八戒の奴が俺様を殴ったのだ?



孫悟空「何を…!!」


八戒「落ち着けと言ってるらよ!気付かなかったらか?あの女妖怪の強さは上級妖怪ら!」


孫悟空「関係ない!」


八戒「お前はそこまで、あの三蔵を守りたいらか?オラ達の自由や記憶を取り戻す約束なんて嘘かもしれないらよ?」


孫悟空「俺様はただ自分をコケにした鉄扇って奴が許せないだけだ!三蔵なんか関係ない!」


八戒「素直じゃねぇらな!上級妖怪相手じゃ…死ぬらよ?」


孫悟空「金斗雲来い!」



俺様は飛んで来た金の雲に乗り、鉄扇の向かった方向へ飛んで行ったのである。



ん?


その後を八戒が暗黒雲に乗って追いかけて来る。




孫悟空「どういうつもりだ?」


八戒「ふん!ただ、オラは強がっとるオナゴを自分の言いなりにさせたくなったらけだ!男はいつもオナゴの上にいるもんらよ!」



孫悟空「お前も素直じゃないな?」


八戒「お互い様ら!」






俺様達は三蔵奪取のため強敵の鉄扇のいる城へと向かうのだった。



三蔵…必ず助けてやるからなぁ!




孫悟空「何だ?何なんだ?この展開は?一難去ってまた一難かよ?」


八戒「いや!三蔵はんも拉致られ、敵も強そうな感じでヤバヤバら!」


孫悟空「だが、絶対に三蔵は取り戻すぜ!俺様達三匹がいればなんとか・・・」




・・・あれ?




沙悟浄は何処にいった??


まさか!洞窟に生き埋め??



あはは・・・まさか!


あはははははははは!



・・・・・・。



よし!三蔵を助けた後にでも・・・



助けに戻るか?




だから死ぬなよ?



沙悟浄・・・

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