爆裂三蔵!驚異の五大明王変化!?俺様達の決断!!
孫悟空、八戒、沙悟浄の危機に、ついに三蔵が禁断の力を発動させたんだ。
それは、不動明王(神)との合神であった。
俺様は孫悟空だ!
今、俺様達の目の前で三蔵と金蝉子との壮絶な戦いが繰り広げられいるのだ。
金蝉子「頭を垂れろ!ひざまずけ!そして貴様の死が、唯一私をなだめる手段と知れ!」
三蔵「ウオオオオオ!!」
二人の剣の衝撃音が部屋全体に響きあい、建物の壁はその振動にて亀裂が入っていく。そもそも妖怪が根城にしている城や屋敷には強力な結解が施されているのである。持ち主である妖怪が死ぬか、手放さない限り壊れたりする事はないのだ。
本来、この屋敷は霊感大王の所有していたのだが、霊感大王が亡き後は金蝉子が引き継ぐ形になっていたのだ。つまり、その屋敷にヒビが入ったと言う事は、金蝉子が屋敷に使う力に余裕が無くなってきていると言う事なのだ。
それだけ三蔵が金蝉子を追い詰めているって事なのだが、
八戒「さ…三蔵の…旦那…おかしくないらか?」
孫悟空「何?」
俺様達は金蝉子の緊箍呪によって、身動きが取れないでいたのだ。
力が入らない・・・
それは、俺様達の頭に嵌められた緊箍輪が妖力を吸い取っているからである。
俺様は力を振り絞り三蔵の戦う姿を見た。
『あああ!』
俺様達は三蔵の姿にくぎ付けになっていた。
そんな・・・
三蔵の身体から血しぶきが噴き出し、それが炎となって燃え上がっているのだ。
血が沸点を越えて燃えているのか?
これが不動明王の炎なのか?
これが三蔵の炎なのか?
いや…あんなんで、生身の人間の身体が無事な訳がないだろう!
沙悟浄「孫悟空兄貴!三蔵様がぁ!」
何だと?
その時、何かがへし折れる音がした。
金蝉子が振り払った剣を受け止めた三蔵の腕がへし折れたのだ!
沙悟浄「あああ!」
八戒「だんなぁー!」
腕が逆方向へと曲がり一瞬ふらついた三蔵だったが、三蔵の瞳からは闘志の光は消えていなかった。
それどころか、
三蔵「ググググッ…ぐおおおお!」
燃え盛る炎が三蔵の折れた腕に巻き付いていき、強引にへし折れた腕を曲げて元に戻したのだ!
まるで炎が生きているかのように?
いや、あんなの尋常じゃねぇよ!
止めろ・・・
止めてくれ・・・
三蔵の身体が壊れちまうよ・・・
いや?死んじまう!
三蔵が死んじまうよ!
金蝉子「何故だ?人間の三蔵よ!何故にそこまでするのだ!」
三蔵「・・・・・・!」
三蔵は金蝉子に迫りかかる。
金蝉子「そんなに下僕が欲しいか!そんなに小間使いが欲しいか?そんなにパシリが欲しいのか!」
三蔵「火アアアアア!」
金蝉子「それとも、ただの意地なのかぁー!」
金蝉子の神気が三蔵の神圧に次第に圧されていく。
金蝉子「命を削ってまで、お前は何のために戦っているのだぁー!」
三蔵「うぐおおお!」
三蔵の燃え盛る炎の剣が、金蝉子を斬り裂いたのである。
いや・・・
金蝉子の奴は辛うじて躱していた?
だが、傷を負ったようだった。
金蝉子「ぐぅ……!」
金蝉子は肩に出血し、その流れる血を見て身体を奮わせていた。
金蝉子「か…神の私に…血を流させるなんて…一体…貴様は…何なんだ…!立っているのもやっとのくせに…?何がお前をそんなに強くさせているのだ!」
すると三蔵は息をきらせながら答えた。
三蔵「…解るまい」
金蝉子「?」
三蔵「あいつ達を…怪しげな術で縛り!記憶を消して…意のままに操ろうとする…お前にはな…!!」
金蝉子「貴様とて同じではないのか!?」
三蔵「…同じか」
俺様はそんな三蔵の姿を見ている事しか出来なかった。初めて俺様は自分自身の無力さを実感したのだ。
孫悟空「やめろぉ!三蔵ぉ!」
だが、三蔵は更に炎を強めていく・・・
やめろぉ…三蔵…
お前が死んだら、
俺様は・・・
だが、その後の三蔵の発した言葉を聞いた俺様は・・・
いや、一緒に三蔵の戦いを涙して見ていた八戒も沙悟浄もまた生涯忘れる事はないだろう。
三蔵は言った。
三蔵『生まれし時も…
場所も…種族さえ違えど…
同じ時を過ごし…
同じ地を踏み…
同じ道を歩んで来た。
時にはすれ違い…
争う事もあった…
だが、それでも…
俺達はお互いを信じ…
許しあい…
再び同じ道を歩んで今がある!
それが…
『絆』だ!
その絆の下、
俺達はお互いを助け合い
そして…
共に成長して行く!
そうさ…
これが『仲間』
これが…
『友』なのだ!
俺は…この『絆』を守り抜く!
この友を…
絶対に手放しはせんぞぉーーー!』
孫悟空「さ…三蔵?」
いつも俺様達をこき使い、俺様達をまるで道具の様に使ってきた。
三蔵・・・
だけど、三蔵はいつも俺様達を後ろから支えていてくれた。
守っているつもりで俺様達は守られていた。そう。導かれているかのように・・・
俺様は頭の片隅でいつも考えていた事がある。
いつか旅が終えた時、俺様達は離れ離れになるかもしれないと。
いつか別れる時が来るのだと・・・
そしたら・・・
今の関係も終わる。
それだけの関係だったと思い知る事になる。
深く関わったら・・・
後が…辛くなる。
俺様は一人で大丈夫だと自分に言い聞かせる。
俺様は・・・
一人で大丈夫だ!
一人で・・・
だけど、
楽しかった。
三蔵と、八戒と…沙悟浄…
コイツ達との一緒の時間は本当に楽しかった。
出来ればいつまでも・・・いつまでも一緒に旅を・・・していたい。
ハハハ…
こんな馬鹿な事!
こんな俺様らしくない事・・・
考えてるなんて、誰にも言えやしねぇ!
だっ…だって…
俺様は!
孫悟空…なんだぞ!?
かつての大魔王様なんだぞ?
だか…だから・・・
欲しいなんて考えたらダメだ!
願ったらダメだ!
そんな事考えたら
笑われちまう・・・
三蔵
お前に笑われちまう!
だから、
俺様からは・・・
絶対に言えなかった。
欲しいなんて言えなかった・・・
それを…先に、
三蔵の口から聞けるなんて・・・
ん?
何だよ?
八戒?沙悟浄?
お前達?
何を泣いてんだよ?
ばっ…馬鹿じゃねぇのか?
たかが、
こんな言葉一つで…
『友…』
俺様は何百年も石の中に封印されていた。
その間、飲む事食う事はもちろん。身動きする事も出来ないでいたのだ。
その姿は毛むくじゃらの石猿・・・
それが俺様の転生した姿だった。
その間の俺様は、思考だけがハッキリとしていたのである。
だから、
闇と静寂・・・
岩の中で俺様が出来る事はただ一つだけ。
転生前の記憶を思い出す夢を見ているだけだった。
夢を見る事・・・
それが俺様の唯一の楽しみになっていたんだ。
流石に全部とは言えないが、俺様が魔王であった事。
その中で、俺様は天に背く大妖怪であった事を思い起こす。
だから、俺様は天罰でこんな石の中に閉じ込められているのか?
解らない!!
過去の記憶は・・・
魂に刻まれた記憶
本当にあった事なのか?
不安が過ぎる。
これは妄想?まるで夢物語の様な主人公の俺様?
でも・・・
これが全て偽りの夢だったら?
この俺様自体何者でもなかったとしたら…?
不安が恐怖へと変わっていく。
怖い・・・
俺様は何者なのだ?
本当に俺様は存在しているのか?
考えるな!
俺様は…ここにいる!
確かに生きて…存在しているのだ!
だけど・・・
それを証明するものは何もなかった。
俺様は出来ない。
俺様が考える事を止めたら・・・
思考を止めたら・・・
そこで俺様は消える。
存在も消えちまう。
今、こうして思考している俺様は、
何者でもない者として存在しているだけ。
消えちまう・・・
何も残らない・・・
嫌だ…消えたくない!
消えたく…な…
そんな時だ!
何処からか声が聞こえて来たのである?
熱く!眩しく!強く!
太陽のような奴?
そんな存在感ある何者が俺様を呼んでいたのだ!?
一体誰だ?
いや?それより!
そいつは、俺様を必要としている?
俺様がここにいる事を証明してくれた!
そうだ!
俺様はここにいるんだ!
自分を閉じ込めていた石が割れ、光りが差し込んだ時、
そこに、アイツが立っているのが見えたのだ!
俺様は感情の赴くまま飛び出した・・・
俺様を求めるその男のもとへと!
俺様を『生かした』その者に向かって・・・
・・・それが俺様と三蔵との出会いだった。
あれ?何で…俺様…
目から水が溢れてくるんだ?
俺様・・・
ば…馬鹿じゃ?
馬鹿じゃねぇか?
なぁ?三蔵?
俺様と同じく、八戒と沙悟浄もまた己の過去を思い出し涙していた。
石の中で己が何者なのか解らないまま、封印されていた俺様・・・
己の失った記憶を探し求め、裏切られ続けた先に他者を寄せつける事を拒否し、孤独の旅をしていた八戒・・・
親の死と引き換えに生かされ、誰に頼る事なく一人で生きてきた沙悟浄・・・
孤独を生き続けた三人が今、こうやって旅をしている不思議。
それは三蔵によってもたらされた縁なのか?
俺様達は・・・
この縁を失いたくはないんだ!
金蝉子「くだらない!そんなもの消し去ってやろう!今ここで貴様を殺し!その後奴達の記憶を消してやるまでだ!」
三蔵「させはせん!俺が…あいつ達を…」
『守ってやる!』
金蝉子「神をナメるな!真の神の力…貴様に見せつけてやる!」
『我が力を全て解放させてもなぁー!!』
すると、金蝉子の神気が更に膨れ上がったのだ?それは今までの比ではなかった!
ありえねぇよ・・・
嘘だろ?
何なんだコイツは!
まだ…まだこんな力を持っていたのか?
何が神だ!こいつはとんでもない化け物だぁ!
もうダメだ・・・
勝てる訳ねぇよ?
三蔵が死んじまう
そして俺様は金蝉子に向かって叫んだ。
孫悟空「ヤメェロー!金蝉子!解った!俺様を…お前の子分にでも何にでもしやがぁれぇ!何処へでも連れて行け!だから…だから三蔵は助けてやってくれぇ!」
八戒「オラもら!だから…三蔵の旦那を殺さないでほしいら!」
沙悟浄「私もです!三蔵様を助けてください!」
俺様達の命乞いを聞いた三蔵が叱咤したのだ。
三蔵『ふざけた事を抜かすなぁ!馬鹿者共がぁーー!』
俺様達はビクッとして三蔵を見た。
三蔵は背を向け、俺様達を庇うように仁王立ちしていたのだ。
そして俺様達は三蔵の背中を見ながら聞いていた。
三蔵『お前達…俺が信じられないのか?
お前達は…俺を信じろ!信じていれば良い!
安心しろ?
俺が…お前達を…
絶対に奪われはせん!!』
すると三蔵の背後に新たな五つの影が出現したのである?
あれは一体?
三蔵の真言が響く・・・
『オン・ソンバ・ニソンバ・ウン・バザラ・ウン・パッタ…』
『オン・アミリティ・ウン・ハッタ…』
『オン・シュチリ・キャラロハ・ウン・ケン・ソワカ…』
『オン・バザラ・ヤキシャ・ウン…』
『ナウマク・サマンダ・バザラ・ダン・カン!』
それは五つの真言だった。三蔵が真言を唱え終えた直後、神々しい光が三蔵を包み込んでいったのだ。
そして、再び三蔵の背後に現れた神の姿、
それは!
降三世明王!
軍茶利明王!
大威徳明王!
金剛夜叉明王!
そして、不動明王の姿だったのだ!
金蝉子「ば…馬鹿な!!人間が…五体の神を同時に呼び起こしたと言うのか?しかも!あの背後に現れた神の力は!!」
金蝉子は目の前の現実を信じられずにいた。
当然、この俺様もだ!
三蔵・・・
お前って奴は・・・
何て奴なんだよ!
すると五体の明王は三蔵の身体の中に取り込まれていったのである!
『明王変化!五大明王合神!』
凄まじい閃光が視界を奪っていく・・・
そして強烈な神気の中から現れたのは、金色の炎に包まれ、その背から炎の翼を羽ばたかせた輝かしい三蔵の姿であった。
三蔵「・・・・・・」
金蝉子「・・・・・・」
拮抗する力を持った三蔵と金蝉子は無言で対峙していた。
そしてお互い渾身の力で最後の一降りを放ったのである!
とてつもない神気の渦が、
この戦場を、
消し去っていく・・・
どれくらい経ったのだろうか?
暫くして、
《ガラッ… 》
ううう・・・
俺様は朦朧とする中、意識を取り戻した。
な…何??
俺様の目の前には、
傷付きながらも立っている・・・
金蝉子の姿があったのだ!
まさか!
あの三蔵の攻撃をくらって、無事だったと言うのか?
く…くそ!
絶望的だぜぇ!
だが、金蝉子はこちらに向かっては来なかったのである…何故?
あっ!
俺様は金蝉子が見ている先を見た。
そこには!
三蔵の背中があったのだ!
あああ…
三蔵は立ち尽くしたまま意識を失っていた。
さ…三蔵…?
その時、金蝉子は口を開く。
金蝉子「まったく…この人間は…もし、私が一歩でも動いたら…再び蘇って来て私に襲い掛かって来るだろう…本当に恐ろしい奴だ…」
そうだ!
三蔵の殺気は今もなお消えてはいなかったのである。
確かに一歩でも金蝉子が動けば三蔵は再び動き出し、金蝉子に襲い掛かりそうだ・・・
三蔵は意識を失いながらも、その眼光は強く金蝉子を貫くように睨みつけていたのである!
気を失い、そんなに傷つきながらもなお!お前は戦っているのか?
俺様達のために…?
八戒も沙悟浄もその三蔵の姿に衝撃を受け、感動で涙していた。
そんな俺様達に、
金蝉子「お前達!私と共に来い!孫悟空!私と来たら今よりも…いや、この私よりも強くさせてやろう!」
孫悟空「何だと?」
金蝉子「八戒!お前の失われた記憶を、私なら今直ぐに蘇らせてやるぞ!」
八戒「そんな事出来るらか?」
金蝉子「沙悟浄!お前は天界に戻れるように取り計らってやる!」
沙悟浄「えっ?本当にそんな事が?」
強く?記憶?天界移住?
金蝉子「さぁ!来るのだ!お前達!」
だが、俺様達の答えは一つだった。
『却下だぁー!』
その返答には一切の迷いはなかった。
金蝉子「そうか…ならばやはり!」
金蝉子の手から光の剣が再び出現したのである。
そして三蔵の心臓に狙いを定めたのだ!
金蝉子『奴が動く前に心の臓を貫く!』
金蝉子の光の剣が三蔵目掛けて突き出された!
金蝉子「なっ?」
だが、その光の剣は立ち上がった俺様の手に掴まれ、止められたのだ。
金蝉子「馬鹿な!お前達は緊箍輪で動きを拘束しているはず?」
その時、俺様達を縛りつけていた緊箍輪が粉々に砕け散ったのだ。
俺様の後ろには八戒と沙悟浄も立ち上がっていた。しかも二人の緊箍輪もまた粉々に砕け落ちていたのである。
金蝉子「まさか…緊箍輪が砕けるなんて…?そんな事が!潜在能力の高い孫悟空ならまだしも、八戒や沙悟浄までだと?何故だ?」
(そう言えば昔、釈迦が言っていた…。
緊箍輪呪は、悪しき欲のある魂を支配する術だと。しかし相手の魂に一片の汚れがない純粋な魂なら…その効果は無効化されるとも?今のコイツ達は…その人間を守るためだけに!守りたいと言う純粋な気持ちだけで立ち上がったとでも?この絶望的な状況下で、命を投げ捨てる覚悟があると言うのか?)
(そこまでする理由が…それだけの価値が?あの人間にあるとでも言うのか?)
金蝉子は俺様達を見た後、
「良かろう…」
そう言って振り返ると、その姿が俺様達の目の前から消えたのである。そして奴の声が屋敷中に響き渡った。
『しばしの間!その人間にお前達を貸していてやろう!だが、忘れるな!いずれ必ず…お前達を取り戻しに来る!それまでの間に少しでも強くなっているのだな!今度は大切なモノを守れるくらいに…アハハハハ!』
その言葉を最後に完全に金蝉子の気配が消えたのだった。
金蝉子は俺様達を見逃したのか?
どうして?
俺様達は助かったのか?
はっ!そうだ!三蔵!
俺様達は傷付き動かない三蔵の姿を見た。
その姿は!?
さ…三蔵?
嘘だ…嘘だと言ってくれ?
その直後、主人を失った霊感大王の館が崩壊し、壁や天井が崩れ落ちて来たのだった。
孫悟空「三蔵・・・お前の死は無駄にはしないぜ!」
沙悟浄「恐ろしい人をなくしてしまいましたね・・・くすん」
孫悟空「安心しろ!三蔵の代わりに俺様が立派に転生記の主役を務めてやるぜ!」
八戒「なぬ?待つらよ!転生記の主役はオラらぞ!」
沙悟浄「八戒兄貴に転生記の主役が出来るなら、私にもチャンスあるかもです!」
孫悟空「ねえよ!」
沙悟浄「そんな~」
八戒「次話よりオラが主役の転生記を楽しみにするらよ!」
孫悟空「待て!待て!勝手にしめるな!よし!次話は主役の座を賭けたバトルロワイヤルだぜ!」
※嘘です。




