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闇 * (蜜蜂&ガイ)

遠くで誰かの呼ぶ声がする。

答えてはいけない。

両手で口を押さえ、漏れそうになる声を必死で飲み込む。

呼び声に答えてはいけない。

答えてしまえば、もう二度とこの道を戻る事ができなくなる。

また昔に逆戻りしてしまう。


だから


でも


針の隙間から、声が漏れてしまう・・・









喧騒渦巻く夜の街を、けたたましいサイレンが駆け抜けて行く。

ビルの屋上、ネオン街を下に眺めながら、2人は風に吹かれていた。


「・・・どこも同じだな」


髪の長い男が、ポツリと呟いた。

何を思っているのか、どことなく哀しい顔をしている。


「どうかしたのか」


もう1人の男が聞く。


バサバサッ

黒のコートが風に煽られ、小さな音をたてた。


「いや、なんでも・・・。そう、昔、アメリカに居た頃に見た夜景と、あまり変わらないなと思ってな」

「夜景は、向こうのが綺麗なんじゃないのか」


その問いに、弱々しく微笑む。

綺麗とか、綺麗じゃないとか、そういう問題ではない。

この夜景の中に、この街の中に、一体何が潜んでいるのか。


「なぁ、ガイ。お前はどうして『J・WARRIORS』になったんだ。抵抗は、なかったのか。俺は・・・」


そこまで言って口を閉ざすと、何かに耐えるように自分の肩を抱き締める。


「蜜蜂・・・」

「俺は、どうしてここにいるんだろうな。どうして俺が『裏刑事』だなんて・・・変だよな。林さんは知らないわけじゃないのに。俺が向こうで何をしていたか。俺が、俺が・・・」


最後の呟きは、あまりに小さすぎて風に消えてしまった。

ガイは暫くの間、黙って蜜蜂の横顔を見ていたが、静かに伸ばした両手で蜜蜂の頬を挟むように包み込む。

そして、強引に向かい合わせた視線。


「俺たちは、お互いの了承を得ない限り、相手の過去は聞かない、詮索しない。それが暗黙の掟だ。それでも気になるものは気になる。だから、俺も話せるようになったら話すから、お前もいつか話してくれ。俺はお前が何者でも側にいてやる。信じてくれなくてもいいが、俺は仕事上の相棒だからお前といるわけじゃない。お前だから側にいるんだ。それを忘れるな」


力強い瞳。

蜜蜂はそっとガイの手を振り払うと、再びネオンの街を見つめる。

それから口許に小さな笑みを浮かべると


「コンビを組んで2ヶ月。ガイ、お前となら、仕事抜きでも一緒にいられそうだ」

「当たり前だ。大体な、今までだって『表』でもちゃんと一緒にいただろうが。迷惑だったのか!?」


意図的に、多少声を荒げたガイに、蜜蜂は声をたてて笑う。

こいつなら、この男なら、ともすれば昔に戻ってしまいそうになる自分を引き止めてくれるかもしれない。

過去に怯える自分を支えてくれるかもしれない。



だぶん




きっと・・・


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