プレジャー・センター
【娯楽】
友人が遊ぶゲーセン
隣で微笑んでるぼく
君は楽しそうに
変わらぬ笑みをたたえる
ぼくを見て嬉しそうだ
『那由他の彼方まで』と
君は機械を叩きつける
曲名も その姿も
遠目には分からぬのだろうね
ひとえにぼくの
知人だなんて
きっとこの場に連れて来られた
今この瞬間以外は
ぼくには君が分からぬのだろうね
君には見えてはいないのだろうか
自分のその
必死なまでな
曲調に乗せて叩きつける瞬間の
その無表情
輝く画面を写す闇色
さみしいね
切ないね
それはきっと
同じように
普段言葉を紡ぐ自分自身すらも
同じように画面を見つめて
同じように叩きつけているからさ
さみしいね
同じように無表情で
違うボタンなだけで
なにひとつ変わらないから
似ている姿を
似ていると思ってしまう
だから ね
悲しいね、と
聞こえるはずのない
爆音のする背中へ
音のない言葉を
投げかけてみている
【眠れぬ音の森】
ゲームセンターの中で
うとうとと目をつむった
音と音と音と
震動と震動と震動と
たくさんの刺激がある
高速道路を
ぶっ飛ばしている助手席で
眠りこけているような
不思議な感覚
大人のお友達や
物騒な面構えが
たくさんたくさん並んで
その中でぼくは
眠りこけている
金なんかないのさ
寝首のかきかたなんて
どうせ知らないだろうさ
夢中なそのたくさんの背中を
眠りながら思い出して
財力があるなあとか
思いながらも
それでも
せっかくの架空と現実の狭間で
ワザワザ ムザムザ
死んだような目をしたモノへ
近づく物好きもいないから
ウトウトしている
ぼくはナミダを
コラエル




