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秋の背中のチャックを開けて

【小鳥と朝】


小鳥が窓の外に

毎朝とまりにくる

チュンチュンとさえずるのが

可愛らしいけれど

窓を開けてしまうと

すぐに逃げてしまうので

ちょっぴりだけ開けて

ゴマとかを撒いてみた


ゴマなんかでいいのか

ちょっと不安だけど

穀物だし、いっか と

気持ち多めに撒いた

次の朝に

やっぱりとまりにきた小鳥が

ちょっぴりだけ賑やかに

歌ったりしていたから

あ 喜んだかなって

ぼくが喜んでた

ベランダをコツコツと

ついばんでる音が

ありがと のノックみたいで

にまにまして

また

ゴマを買いに行こうかな と

性懲りも無く

思った




【みそ汁】


みそ汁をすすると

とてもとてもしょっぱかった

味噌を下手くそにといたから

ダマになってたのか

いつもと違う

赤味噌を間違えて買ったからか

とにもかくにも

みそ汁はすごく

しょっぱくてしょっぱくて

ぼくは

まだ

泣かなくてもいいのかな

と 思えた




【名前】


名前を呼ばれると

かちりと固まる

学生でなくなってから

苗字で呼び合う''社会人''

なんてものになって

ぼくはありきたりな苗字の

ぼくは

ありきたりな人になった

だから

すれ違う子どもを

叱るような口調で

ぼくの名前を

偶然つぶやかれると

不意打ちみたいに

かちりとする

凍りつくではなく

嫌でもなくて

本当のぼくを

たくさんいる

同じ苗字の誰かみたいじゃない

ぼくそのものを

呼ばれたような

歯車がはまったような

気がするのかな

でも返事をするのは

その子どもだったりして

ぼくはちょっとだけ

懐かしい昔に

戻りたくなるんだ




【あっという間】


風が吹いたら

あ 撫でられた

と思う


蜂が服にとまっても

あ 好かれた

と思う


派手に思いきり転んだら

あ 久しぶりかも

と思い


人を好きになったら

あ やられた

と思った


ほんの目の前の

ちょっとしたほくほく

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