アキアカネ
ここから見える山々に
木霊してゆくカケスの歌が
たゆたう雲に色を流して
黄昏に空が染まります
新緑に跳ねる茜の光は
一枚一枚角度を変えて
地球の命の燃えるがごとく
火の粉のように風に舞う
わたしは心をそっと預けて
カケスの声をここまで運ぶ
風に絡んで溶けてゆきます
虫の音響く裏庭の木に
ひとひら残った桜の花が
星明かりに照らされて
紫銀を纏って踊ります
まだまだそんなに上手くない
虫たちの合唱の響きは
合わせる気のない独りよがりな
音色と音色をちりばめて
夏よりも秋よりも
初々しくて綺麗です
庭木の枝に捕まった
お月様さえ立ち止まり
聞き入り眠ってしまったようで
閉じた瞼が光ってる
綺麗な宵です
彼方此方に
闇が光って騒ぎます
昼下がりの公園
噴水の飛沫が
一瞬を永遠にも見せて
一粒 また一粒と
別々の弧を描く
交わることはあっても
水面に落ちる時には
必ずひとりで落ちてゆく
その姿はどこか
私や人々の行く末に思えて
涼しく昇る水の柱に
たくさんのこころを感じます
バク転をふとしてみると
回る世界と青空は
実際よりもずっと長く
わたしを宙に留めてくれます
そのたった一回転で
人々みんなが空に落ち
この脚がつくと再び
元に戻りゆく様が
夢を見ているようだから
わたしは覚えたばかりのバク転が
秘密の魔法に思えます
素敵な星です
わたしもあなたも
生命が燃えて踊ります
蒼いお空を見上げて見れば
鳥が自由に飛び行きます
わたしがもしも 飛べたなら
どんなに楽しいことでしょう
雲のそり立つ山を越え
森の木の実を食べ比べ
わたしの巣を作るときには
綺麗なものを拾い集めて
光るお城にするんです
夏の日差しも 真冬の雪も
やきもち妬くほど綺麗なら
負けじと世界は輝いて
もったないほど夢みたい
まあるい空です
こちらあちらを
抱きしめ包んでくれてます




