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夢があったよ


夢があったよ

おれはあのころ

たくさん漫画を読んだけど

格好のいい主人公

彼らはみんな 旅してた

荷物を背負って

命を張って

歩く人生 冒険の日々

なんて夢があるじゃないかと

おれは思ったもんだった


旅がしたいよ なあ父ちゃん

きらきらした目で

言ってみたらさ

「大きくなったら行ってみな」

にこにこ笑って流された

おれも今では大きくなって

いつでも行ける歳だけど

大きくなったら行けないね

たくさん捨てて 失って

手に入れるのは 自由だけ

ちょっとおれには選べない

あの時ならば行けたのに

今でも時々思うんだ


野望があったな

おれもあのころ

うんとお金持ちになって

いい家 外車に いい嫁さん

欲しがるものが多かった

うまいご飯に

きれいな部屋に

可愛いペットも飼いたいな

おれならできる

いつか必ず

なんの保証もないけれど

信じて疑わなかったよ


それも今では昔になって

人並み 平凡 平均で

幸せにおれは生きてるよ

いい家 建て売り 車庫付きで

外車じゃないがいい車

嫁さんキツイが大恋愛

これって幸せなんだろな

猫と子犬をもらってきたし

狭いがいい部屋 うまいメシ

不満はないな

今んとこ

中途半端に叶ったけれど

これでよかったかもしれない

そんな風に おれは思うよ


願いがあるよ

今のおれには

今はお腹の中だけど

ちっちゃな可愛い

俺たちの子が

男の子かな 女の子かな

大きくなって一人前に

家を出て行くその日まで

見守っていたい 生きていたい

自慢の親父になりたいな


中途半端で いいよ神様

それでも結構いいもんだ

その子が大きくなる頃に

一回聞かせてやらなきゃな


おれには夢が

あったんだよってな

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