おら座敷童だあ
どうして着物を
着ているの?
居間のすみっこ
畳さ座って
遊んでたおら 声かけられて
えらいたまげた仰天だ
宗一の孫の
健一のひ孫の
確か光一っつたかなあ
おめさ、おらが見えんのか
見えるよ 変なしゃべり方
女の子でしょ? お姉ちゃん
んだなあ おらさは女だなあ
あはは やっぱり
ヘンテコだ
ヘンテコだけどさ お姉ちゃん
着物似合ってかわいいね
おらあびっくり 仰天だあ
顔は火照るし
どきどきするし
お話したのも初めてで
お腹の奥から高鳴るなあ
もう長いことここにいる
何歳くらいからいるの?
そだなあ かれこれ長いなあ
300年にはなるかなあ
ええっすごいね お姉ちゃん
大姉ちゃんって 呼ぶべきかなあ
ええって光一 別になあ
長生きするのがいいことだとか
おらあ思ってねんだから
そうなのかなあ だったらさあ
いいことってなんなのかなあ
さあなあ おらにもわかんねえ
じゃあそれを見つけるためになあ
光一は生まれたのかも
しんねえなあ
そうなの? ほんとにそうかなあ
わかんねえなあ そればっかりは
お姉ちゃんってさ 長生きなのに
わかんないことだらけだね
あはは まったく
そうだなあ
夜中になって
一緒の布団で
誰かと寝るのは
はじめてだあ
おらの秘密のお部屋だあ
うわあ なにこれ
すっげえなあ
階段の板を三段数えて
壁板くるっと 回せばな
ここがおらさのお部屋だなあ
ねえねえ 姉ちゃん
これなあに
ああそりゃええと 確かなあ
光一ちゃんのご先祖様が
こっそり隠した箱だなあ
おらあ知ってはいたけれど
これはおめえらのもんだあ
どれ光一ちゃん せっかくだから
試しに開けてみらんかな
ぎしぎし軋んで 蓋を開けると
おらたちびっくり仰天だあ
大判小判に金塊だ
きんきら過ぎて 眩しいなあ
ね、ね、姉ちゃん これなあに?
ああそうだなあ
これはなあ
光一ちゃんのご先祖様が
光一ちゃんに遺してくれた
大事なお宝みたいだなあ
ええ そうなのか
そうなのかあ
あのさあ 姉ちゃん
この箱さあ
父さんたちに教えるべきか?
そうだな それはどうだろなあ
おらはやめたがいいと思う
おめえの大好きなじっちゃとな
優しいおめさの父ちゃんがなあ
大きな声で怒鳴りあってさ
この箱奪い合うところはなあ
見たいもんじゃあねえだろう
そっかあ それもそうだねえ
こんなにきんぴかだもんねえ
わかった ぼくは黙ってる
ぼくたちだけの秘密だね
これ綺麗だなあ
ほんとだなあ
これ姉ちゃんにあげよっか
いやあおらさはもらえねえ
いいっていいって
もらってよ
ぼく里帰りでここにいるから
もうすぐお家に帰るんだ
また来年も来るからね
そしたらきっと
あそぼうね
そうか
そうかあ
そうだなあ
あったけえなあ
一緒のお布団
今日が最後は
さみしいなあ
じゃあまた来年 来るからね
おうまた来いよ
元気でなあ
じいちゃんじゃないよお
姉ちゃんにいったんだよ
なにいってるの?誰かいた?
ああそうだなあ 光一よお
うちには座敷童がいてな
おめえ遊んでもらったか
ザシキワラシって
姉ちゃんなのか
またくるからねえ
あそぼうな
そだなあ 光一
また来年
おめえが大人に
ならなきゃなあ




