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子猫のころに

子猫のころに



あの日わたしを拾ったあなた

ぶかぶかの学生服に包んだ

わたしで胸をいっぱいにして

ゆるい坂道 駆ける気持ちを

わたしのためにそっと歩いて

くれたこと今も覚えてる?


弱ったわたし

始めての牛乳

あなたの部屋の座布団で

あなたを見ながら母を想った


ある日突然嬉しそうに

わたしを抱き上げて呟いた

誕生日おめでとうって

わたしはわからなかったけど

あなたは口元にニボシをくれて

プレゼントがあるんだって

わたしだけの名前を贈った


ちょうどその日が家族になって

一年目の記念日なんだと

あなたは強調したよね

名前一年かかったくせに

優しく繰り返しながら


わたしなかなか覚えられずに

たびたび首をかしげた

そのたび

あなたのひざに抱かれて

ゆっくりウトウト

教えてもらった


それからいくらも経たない四月

あなたは遠くの学校へ

入学が決まったんだって

嬉しい嬉しいって泣いて

わたしに顔をうずめた

寮にはお前を連れていけない

ごめんよごめんよって

わたしはもう大人だから

解って行かせてあげたくて

黙ってあなたの頬をなめた

わたし水は怖いけど

あなたの方がずぶ濡れだから


あなたがやっと泣き止んで

最後に手を振ってから

何度もコタツに入ったけど

記念日はまだ来ないよ

この前あなたのおかあさんが

おばあちゃんになったねって

そっと背をなでた


また春が来て

くしゃみがでるね

もう目も見えないけど

あなたの匂いは覚えてる

ここのところずっと眠いの

早くあなたのひざで

ゆっくりと眠りたいよ

あなたは覚えてる?


あなたの部屋で

陽だまりの中

座布団を並べて

ね?

あの頃みたいに


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