第9話:手紙
僕の名前は中川明。
ごく普通の中学二年生。
まぁ違うのは家族に幽霊がいるというぐらいだが。
でもそれは結構違うか。
とにかく、僕自身は普通なのである。
だから平日には学校がある。
でも幽霊の優ちゃんはない。
そりゃこの世にはいないはずの存在なのだからしょうがない。
「おはよう。優ちゃん。」
「んん……あれ、今日は早いんだね明ちゃん。」
「今日は月曜日だし、学校なんだよ。」
「あ、そうか。ちゃんと勉強してきてね。」
そう言う優ちゃんの顔はどこか悲しそうだった。
大げさかもしれないが学校に行けないという事は、優ちゃんの居場所がないという事をあらわしているかのようだった。
それでも優ちゃんは笑顔で僕を見送ってくれた。
「おはよう。」
「よ、中川。」
「中川くん。おはよう。」
いつも通りにみんなから声をかけられる。
僕もいつも通りに返事をした。
そして授業。
だが僕は集中できない。
(優ちゃんは何してるのかな……)
授業そっちのけでその事ばっかり考えていた。
そのため、先生に何度も注意されてしまった。
僕は放課後をまった。
早く家に帰りたかった。
その願いが通じたのか、いつもより早く放課後になった。
まぁあくまでも気がするだけだが。
僕は走りながら家に帰った。
ちなみに僕は部活に入っていない。
だからすぐに帰れる。
急いではいたが、遠回りをして墓地の道はさけた。
やっぱり怖いし。
家の前まで行くと優ちゃんがいた。
笑顔で玄関の前にいる。
「おかえり。明ちゃん。」
「どうしたの?そんなに嬉しそうにして。」
「へっへへ〜♪実はね。明日から学校に行けるようになったんだ♪」
「え?ホント?」
「うん♪ほら。」
優ちゃんは後ろに隠していた紙を僕に見せた。
それは前に一度見た事のある紙だった。
『神田優の未練を果たす助けとして、普通学校へ行く事を許可する。
その時は居候させてもらっている中川家の従姉妹として振る舞うように。後、学用品はすぐに送る。
閻魔』
「閻魔様ってなんでもお見通しなんだね。」
僕はさも当然かのように言った。
この短い間でいろいろ常識外れな事が起こった。
だからこれくらいはなんとか受け止められる。
「これね、私が
「学校行きたいなぁ。」
ってお母さんに話してたら急に上から来たんだ。」
「へぇ〜。ずいぶんと優しい人だね。」
僕はなんだか適当な言い方だとは思った。
でもそんな事はどうでもいい。
優ちゃんが僕と同じ学校に行ける。
それだけで充分だった。
まだ高い太陽の下。
僕と優ちゃんはお互いに笑顔になっていた。