第6話:買物
………………
「………ん……ゃん…ちゃん!明ちゃん!!」
「……んん?」
僕は目を開けた。
焦点が上手く定まってないので、目に映るものすべてがぼやける。
「明ちゃん!!!!」
僕はかけ布団をとられた。
「ふぁっ!!!!」
今は五月だが、かけ布団を取られるとやっぱりちょっと寒い。
僕はくしゃみをしそうになりながらも、目を覚ました。
目の前には女の子。
かなりかわいい。
なんで僕の家に女の子が?
僕は目をこすってもう一度その子を見た。
「明ちゃん!!!」
その子は何度も僕を呼ぶ。
まるで僕の目覚めを待ってるかのように。
「優…ちゃん?」
僕はようやくその子を呼んだ。
そうだ。
この子は輪廻した幽霊。
そして僕の家の居候。
神田 優。
「優ちゃん!」
僕はちゃんと覚醒した後で僕はもう一度その名前を呼ぶ。
「やっと起きたね、明ちゃん。」
優ちゃんは笑顔で言う。
僕は周りを見る。
いつもと変わらぬ部屋。
いつもと変わらぬ朝日。
でもいつもと違う人がいる。
僕の部屋にいる。
それが優ちゃん。
僕の新しい家族。
「ホラ、早く着替えて!お母さんがデパートに行くって♪」
「母さんが?」
「うん。私の服買ってくれるって♪」
「そっか……」
そういえば優ちゃんは服をまったく持ってなかったんだ。
まぁ、しょうがないけどさ。
僕は着替えて、朝食をとり出かける支度をした。
そして三人で出かけた。
なぜ僕もついていかなければならないのだろうか。
その理由を母さんに聞いても誤魔化されるばかりだった。
30分ほど歩いて着いたデパート。
さっそく服売り場のある三階に行く。
「じゃあみんなで探しましょう。」
母さんが僕を見て言う。
(えっ!僕も?)
思いっきりそう思ったが、母さんの無言の圧力みたいなものに負けて僕も選ぶ事にした。
「優ちゃんって服のサイズどれくらいなの?」
僕は優ちゃんをまじまじと見つめながら言った。
僕よりちょっと小さいくらいだから140くらいかな。
「…えーっと、前に来てた服は140だったよ。」
ビンゴだ!
僕は自分のカンの鋭さを自画自賛した。
「だったら大きめのを買った方がいいわね。」
母さんは僕に150のサイズを選ぶように言った。
えーっと150、150は…
そういえば優ちゃんってどんな服が好きなんだろう?
初めて会った時はパーカーにスカートだったけど……
「ねぇ、優ちゃん。」
「なーに?」
自然に優ちゃんと話せる僕。
成長したな。
「どんな服が好きなの?」
「う〜ん……」
優ちゃんは無茶苦茶悩んでいた。
そして出た答えは!
「分かんない♪」
僕は思わずコケそうになった。
優ちゃんは気にしないかのように上機嫌で服を選んでいた。
しょうがない。
自分で考えるか。
僕は何にするか悩んだあげく無難に、パーカーとそれに合いそうなジーパンにした。
ジーパンが気に入るかは分からないが、パーカーは最初に着てたから大丈夫だろう。
優ちゃんにそれを見せようとした。
が、肝心の優ちゃんがいない。
僕が探していると、試着室の前に母さんがいた。
母さんは近づいてきた僕を見て、嬉しそうにほほえんだ。
「あら、明。ちょうどよかったわ。ホラ、見てなさい。」
母さんはそう言うと試着室に
「もういい?」
と声をかけた。
すると中から
「うん」
という優ちゃんの声が聞こえた。
どうやら中にいるらしい。
僕がそれを理解するのと同時に、試着室のカーテンが開いた。
「じゃーん♪」
そして優ちゃんが出てきた。
(……うわぁ〜〜)
僕はあまりの感動に言葉がでなかった。
上は肩が見える長袖の服で、下は少し短めのスカートだった。
それを着てる優ちゃんがいつもより可愛く見えた。
「明ちゃん、どう?似合ってる?」
「う、うん。とっても。」
僕はバカみたいに首を振っていた。
優ちゃんはそんな僕をおかしく思ったのか、笑い出した。
母さんを見ると満足そうな笑顔を浮かべていた。
そうか、母さんがコーディネートしたのか。
さすが母さん。
それにしても、僕が選んだ服はなんだか地味だ。
僕は自分の手にある服と、今の優ちゃんを見比べた。
だがそんな事をすればするほどみじめになってくる気がする。
「あれ、明ちゃん。その服、選んでくれたの?」
「うん…まぁ、一応。」
「じゃそれも着てみるよ♪」
優ちゃんは半ば強引に僕の手から服を奪い、試着しだした。
服のこすれる音がする。
果たして僕が選んだ服は優ちゃんに合っているのだろうか。
「じゃーん♪」
さっきと同じ効果音で出てきた。
その姿はさっきの服より劣るものの、やっぱり可愛かった。
その後優ちゃんは自分で選んだ服と母さんが選んだ服と、僕が選んだ服を買ってもらっていた。
「次はどうするの?」
僕が母さんに聞くと、母さんは少し笑いながら言った。
「下着よ。」
「し、したぎー!?」
僕は顔を真っ赤にしてしまった。
母さんと優ちゃんは顔をみあわせて笑った。
「やっぱり下着は女の子のたしなみだもの、ね♪優ちゃん。」
母さんはいつにも増して楽しそうだ。
まるで女の子がきせかえ人形で遊んでるかのように。
「うん♪明ちゃんも一緒に選ぶ?」
優ちゃんは意地悪く笑った。
僕は思いっきり首を横に振り、拒否した。
そしてデパートの中にあるベンチで待っていた。
ボーッと20分ほど待っていると、優ちゃんたちが来た。
どうやら終わったみたいだ。
それからパジャマを買ってデパートを出た。
そんなこんなで一日が終わっていった。