第4話:家族
神田 優は幽霊だ。
でも未練があるらしく輪廻した。
だから普通の人にも見れるし触れる。
ウソみたいだけど本当の話なんだ。
「ねぇ、明ちゃん。何をそんなに考えてるの?」
「なんで明ちゃん?」
「だって明ってゆうんでしょ?」
「そうだけど……」
「じゃ明ちゃんでいいじゃん。私は優ちゃんでいいから♪」
「分かったよ、優ちゃん。……って何で僕は幽霊と普通に話してるんだーー!!!!」
頭をかかえてうづくまる僕。
あぁーなんだか気が変になりそうだ。
「…明ちゃん、大丈夫?」
「ごめんなさいね、家の息子は理解力が足らなくて。」
ほっぺを押さえながら首をかしげる母さん。
僕の母さんを見た友達は、たいてい
「お前の母さんキレイだな〜」
と言う。
でも別に僕はそう言われても特にうれしくはない。
確かに母さんは34にしては若く見えると思う。
でも一児の母なのだ。
だから僕は若く見える母さんに対して親以外の感情は持てない。
まぁそれはおいといて。
誰か僕の気持ちを理解してくれる人はいるだろうか。
「ただいまー。」
僕が考えていると、父さんが帰ってきた。
そうだ!
父さんは僕と同じで幽霊が見えないからきっと分かってくれる。
僕は母さんと優ちゃんを連れて玄関に行った。
僕の部屋は二階にあるので、階段を降りないと玄関に行けない。
まあ、そんな事はどうでもいいのだが。
「父さん!」
「ん?どうした、明。」
「この子幽霊なんだって。」
僕は優ちゃんを前に出した。
優ちゃんは礼儀正しくお辞儀をした。
父さんは急に言われた言葉を上手く理解できなかったらしく、母さんを見た。
もちろん母さんはいつも通り答える。
「えぇ、本当ですよ。この子、優ちゃんって言うんですけど、輪廻したからあなたにも見えるんですよ。」
「ふ、ふうん。そうか。輪廻って事は蘇ったのと同じ事だろ。よかったねぇ、優ちゃん。」
「はい♪」
父さんも母さんと同じ様な事を言う。
どうやら長年母さんと一緒にいる父さんにとっては、こうゆう事も日常としてとらえられるみたいだ。
その後四人そろって(じいちゃんは今、住職として遠征しなければならないらしくていない。)いろいろ話した。
でもほとんど僕を抜かした三人で話していた。
僕だけがいまいち状況を理解してないらしい。
「優ちゃんは何処に住んでるの?」
母さんが聞く。
そんな事言っても優ちゃんは輪廻したばっかだから家なんてあるはずがない。
生前住んでいた家だって、今さら戻れるわけがない。
「前はここからずっと離れた所に住んでたよ。」
「今、住んでる所は決まっているのかい?」
「ううん。これから決める。」
優ちゃんはそれでも明るく言う。
なぜそんなに明るくなれるのかが不思議だった。
父さんも母さんもしばらく何かを考えているようだった。
そして一言。
「ねぇ、優ちゃん。あなたがよければ、家に住まない?」
「え、いいの?」
「えぇ。もちろんよ。ね、あなた?」
「あぁもちろんだとも。」
父さんが優ちゃんを、娘を見るかのような目でみる。
「明もいいわね?」
「えっ……?」
僕は優ちゃんをチラッと見た。
優ちゃんは笑顔ではなかった。
どこかすがるような目で僕を見ている。
僕はそんな優ちゃんを可愛いと思った。
それと同時に、可哀想とも思った。
「うん。いいよ。」
自然にそんな言葉が出た。
その言葉を聞いた優ちゃんは分かりやすいまでに笑顔になり、僕の手を握った。
「ありがとう♪よろしくね明ちゃん。」
「う、うん。こっちこそ優ちゃん。」
僕の手を握った優ちゃんの手は冷たかった。
それが彼女が生きていない事の象徴かに思えた。