第3話:輪廻
僕の家は寺だ。
寺と言っても住んでる所が寺の中ではない。
寺の隣にあるちゃんとした一軒家だ。
それに父さんは普通のサラリーマンをしている。
住職なのは、今年で70歳になるのにまだまだ元気なじいちゃんだ。
家の事は、僕が小さい頃に死んでしまったばあちゃんの代わりに、母さんがしている。
ちなみにじいちゃんには見えないが、母さんには霊が見えるらしい。
でも母さんはそれを自慢したりはしない。
というより、ちょっと天然なので自分が見てるのが霊か生身の人間か分からないみたいだ。
そんな母さんの息子である僕には、全く見えない。
いや、見えなくていいと思っていた。
でも見てしまった。
その霊は僕の部屋でクッションに座っている。
そして僕を見て、ニコニコしている。
なんとも信じられない光景だ。
「君が幽霊っていうのは信じるよ。でもなんで触れるの?」
「そりゃあやっぱり蘇ったからでしょ。」
彼女は笑顔を絶やさないで言った。
「だーかーらー!何で蘇ったの!?」
「うーんと、説明するのはめんどくさいんだよなー……あ、そうだ!これこれ。」
そう言い、パーカーみたいな服のポケットから紙を取り出した。
僕はそれを受け取り声には出さず、読んでみた。
『神田 優に輪廻の許可をここに示す。
貴殿は未練がまだあり、成仏するにはまだ心の準備が整っておらぬ。
本来天国に行くはずの者なので、しっかり未練を捨ててから成仏したれり。
よって輪廻期間は未練が無くなるまでとする。
閻魔』
なんとも不思議な手紙だ。
本当に彼女は幽霊なのだろうか。
いや、それよりこんな彼女に果たして未練なんてあるのだろうか。
僕が聞こうとした時、
ガチャ
「明。お茶が入ったわよ。そこの幽霊さんもどうぞ。」
「わぁ〜ありがとうございます♪」
母さんは本当にすごい。
だって僕が彼女を連れて家に帰ってみると、
「あら、おかえりなさい。どうしたの?今日は幽霊さんをつれて。」
「お邪魔しまーす。」
「か、母さん。彼女が幽霊だって分かったの?」
「えぇ、なんとなくはね。」
という具合に、さも当然かのように話していた。
「ところで幽霊さんのお名前は?」
「神田 優です。お母さんは話しが分かってますねー。」
「いえいえ。それほどでもないわよ。それにしても優ちゃんって不思議ね。家の息子にも見えるんだから。」
「あ、私は輪廻したんですよ。だからみんなも見えるし触れますよ。……ホラ。」
ピトッと母さんに触る彼女。
「あら、ホント。輪廻してよかったわね〜。」
「ありがとうございます♪」
なんだか会話に入れない僕。
その後も母さんと彼女は話していた。
とりあえず、彼女が幽霊というのは間違いなさそうだ。