第20話:霊感
いろいろあったが肝試しがスタートした。
すでに二組目まで出ていって、次は僕と優ちゃんの番だ。
僕はなんとか気持ちを落ち着かせた。
肝試しと言ったって、墓地を300mくらい真っ直ぐ行くだけだ。
いつも登下校の時に優ちゃんと通ってるじゃないか。
なんて事はない。
ただ時間帯が違うだけさ。
大丈夫、できる、なんとかなる。
人……人……人……。
呑み込んでっと。
よし!
「じゃあ優ちゃん。そろそろ行こうか。」
「うん。」
僕と優ちゃんはいつも学校に行く時のように歩いた。
「お気をつけなさいね。」
「ありがと、乃理ちゃん。じゃっ、行ってくるね。」
「部長と呼んで下さいと何度も……って話を聞いてから行きなさい!」
最終組は林田さんと田辺だ。
早く行かないと優ちゃんに何をするか分からないから急ごう。
そうでなくても早く終わらせたいし。
しかし……
「なんだか、いつもと、ち、違うような……。」
「え?そう?」
「う、うん。なんかオドロオドロしいってゆうか……なんか火の玉とか見えそうってゆうか……。」
「まあ、墓地だしねー。居て当たり前だよ。」
優ちゃんは幽霊がいつも見えてるから平気なんだよな。
てか、優ちゃん自身が霊だもん。
怖いわけないか。
すると優ちゃんが横の方を指さして言った。
「あっ、そこにいるよ。」
「えっ……。」
まあ指さしても僕には見えないのだが、反射的にその方向を見た。
「ホラ、あの火の玉。」
「あっ本当だー、けっこうキレイな青だねぇ。」
ん?
見えてる。
いや、目の錯覚だろう。
ゴシゴシ。
僕は目をこすってもう一度見た。
……。
…………。
………………キレイな青だなぁ。
って……。
「見えてる〜〜!?」
「あとあそこも。」
見たくもないのに、どうしても指をさされると反射的に見てしまう。
「お、お、お……お化けだーーー!!!!」
僕は一目散に走り出した。
「ちょっ、ちょっと明ちゃーん!」
な、なんで今日に限って見えるんだ?
今まで幽霊なんて優ちゃんしか見た事なかったのに。
くっそー、何でだー!!
走ってる間にも火の玉やら幽霊やらが見える。
その時ふと僕の頭に変な重みを感じた。
頭に手を載せると何もない。
が、
「やぁ、こんばんわー♪」
何かドロドロしたモノが僕に四つの目を向け丁寧に挨拶をした。
「ひぎゃああぁあぁぁあ!!!!」
も、もうダメ……。
僕は耐えきれなくなり倒れてしまった。
「明ちゃん、明ちゃん!」
情けなく気を失いかけてる僕を、優ちゃんが起こしてくれた。
「うぅ〜ん。ゆ、優ちゃん……。」
「しっかりして。大丈夫怖くないから。」
そう言って僕を軽く抱きしめてくれた。
それだけの事なのに、なんだかとてもドキドキした。
実際の体温ではなく、心の中から暖かみを感じた。
「あ、ありがとう……。」
「どういたしまして♪」
まだドキドキしながらも僕は離れた。
怖いなんて気持ちはどっかに行ってしまった。
あれ、そういえばもう見えないや。
さっきのは何だったんだろう。
「それじゃあ行こうか。」
優ちゃんは僕の手を握って歩きだした。
僕は引っ張られるように歩いた。
優ちゃんの手は柔らかく、少し小さい。
普通の女の子らしい手。
でもとても冷たい。
生きていない事をその度に思い起こされる。
だから僕は悲しいと感じる。
愛しいと感じる。
「……うん。」
僕は優ちゃんにひかれながらゴールした。
その後しばらくして林田さんたちがゴールした。
なんだかとても興奮してる。
まさか優ちゃんの事がバレたのかな?
僕はおそるおそる聞いてみた。
「ど、どうしたの?何かあったの?」
「フフッ、私たちは良いものを手に入れたのですよ。」
「いいもの?」
「えぇ、これです。」
「あっ……」
それは僕の持ってきたお札。
いつの間にか落としてたんだ。
「これは素晴らしいんですよ。これを持っていると幽霊が見えるようなのです。」
へ?
そうなの?
って事はアレのせいで僕は……。
じいちゃん、そりゃないよ。
まあなんにせよそのお札は林田さんにあげよう。
喜んでるし。
でも林田さんって、元々霊感あるんじゃなかったっけ?
それは本人の言ってた事だから証明はできないけどね。
「面白かったね、明ちゃん。」
「えっ?あ、う、うん……。」
優ちゃんを見るとまだドキドキする。
もしかしたら僕は……。
そう思ってしまう僕がそこにいた夜だった。