第16話:恋愛
じいちゃんの件も一段落つき、僕は落ち着いて学校生活を送れるようになった。
「どうした中川。朝から疲れた顔して。」
「……まぁ、いろいろとね。」
本当に最近はドタバタしすぎた。
何かいい事ないかなぁ。
しかし特に何もなく日々は過ぎていった。
でも、何もないというのはいい事なのかもしれない。
平凡な日常こそが一番安定しているのだから。
ある日、僕が教室に入ろうとすると
「えっ、行けなくなったの?」
北原さんの声が教室から聞こえた。
「うん、ごめん。急に用事が入っちゃって…」
別の女子の声もする。
どうやら何かの約束についてのようだ。
「どうしよう。チケット二枚もあるのに…」
!!
その時僕の中で何かが輝いた。
チケットが二枚。
北原さんが一緒にいつ人を探している。
これはチャンスだ!
と、意気込んだのはいいが何しろ僕は積極的ではない。
なので北原さんの視界に入るような所で、なるべくゆっくり歩くのが精一杯だった。
(気づけ〜。気づけ〜。)
その願い(オーラ?)が伝わったのか、北原さんは僕に声をかけてくれた。
「あの、中川くん。もしよかったら一緒に遊園地行かない?チケットが余ってるの。」
「よ、よろこんで!」
僕はあまりの緊張と喜びで背筋が不自然なほどまっすぐになってしまった。
「じゃああと二人誘わなくちゃ。」
「え?チケットそんなにあるの?」
「うん。ペアチケットが二枚。」
「……そ、そう、なんだ。」
何かがしぼんだような気分だ。
その後流れで優ちゃん、そしてなぜか佐藤が一緒に行く事になった。
時は過ぎ、その日の帰り道。
僕はウキウキ気分で帰っていた。
なんだかんだ言っても北原さんと一緒に行けるのだから。
「嬉しそうだね、明ちゃん。」
「へへっ、まぁね♪」
「もしかして理奈ちゃんの事、好きなの?」
理奈ちゃん、とは北原さんの事だ。
それにしてもさすがに気付かれたか。
いわゆる女のカンってやつかな。
僕は、別に否定する必要もないと思い
「うん。」
と正直に答えた。
すると優ちゃんは急に黙ってしまった。
しかもうつむいている。
(もしかして優ちゃん、僕の事……)
とまで思ったが、いくらなんでも自惚れ過ぎな考えだと我ながら恥ずかしくなった。
僕が頭をふってその考えを振り払っていると、
「じゃあ私が明ちゃんの恋を手伝ってあげる♪」
さっきまでのしおらしい態度とはうってかわり、優ちゃんは明るく言った。
僕は少し心配しながらも、優ちゃんに任せる事にした。