第15話:祖父
中川健蔵。
今年で68歳。
職業は住職――兼、忍者。
別に忍者と言っても何か証拠があるわけではないけど。
本人の趣味が忍者ごっこなのだ。
だから普段はごくごく普通の住職。
でもたまーに忍者っぽい技を使う。
天井にはりついたり。
壁走りしたり。
一応手裏剣も投げれる。
僕がまだ小さかったころ、手裏剣の訓練をさせられた。
そのおかげで的当てや輪投げなどはすごく得意だ。
あ、ちなみに火とんの術とかは使えない。
それに100m以上走るとバテてしまう。
なんだかんだ言っても年なのだ。
それが母さんの父さん。
つまり僕の祖父。
そんなハチャメチャなじいちゃんが帰ってきたのだから、家が静かにおさまるわけがない。
まぁどっちにしろ最近はいろいろあって、忙しかったけど。
じいちゃんと優ちゃんは、お互いにどう思っているのだろうか。
「ふーむ。これは完璧じゃなー。」
「なにが?」
優ちゃんをじっと見ていたじいちゃんがつぶやいた。
「…スタイルが。しかしもうちっと胸があれぶぁっ!!」
「お父さん。ふざけた事は言わないで下さいね。」
な、何が起こったんだ?
一瞬のうちにじいちゃんが殴られている。
そして母さんの手にはフライパンが。
……母さんってこんなに強かったのか?
いつも笑顔だから分からないや。
とは言っても今も笑顔なんだけど。
「…じょ、冗談じゃ。まったく冗談の分からん娘だのー。まぁそれはおいといて。この子の輪廻は完璧じゃ。不安定な部分が見つからん。」
「不安定な部分が……ない?」
「そうじゃ。おそらくこの子にお経を聞かせても、成仏はせんじゃろう。」
「本当!?」
「うむ。」
「わーい、やったー♪」
優ちゃんはとても喜んでいた。
僕もうれしい。
そう簡単に優ちゃんは消えない。
僕たちはもっとたくさん一緒に過ごせる。
「そうじゃ明よ。」
「?」
「くない投げの特訓をせんか?きっと役に立つぞ。」
「遠慮しとくよ。」
きっぱりと言っておいた。
「じゃあ私がやるー。」
優ちゃんが手を挙げながら言った。
じいちゃんはうれしそうに微笑んで
「おぉそうかそうか。ではこっちにおいで。」
じいちゃんは、優ちゃんがついていくのを確認しつつ裏庭の方へ行った。
僕は宿題を済ます事にした。
そしてしばらくたって。
「母さーん。今日の夕御飯はー?」
「今日はおじいちゃんの好きなチャーハンよ。これから作るから待っててね。」
「うん。」
僕がキッチンから出ると、
「ねぇねぇ明ちゃん。」
「ん?どうした――のっ!?」
優ちゃんの姿に僕は驚いた。
なぜなら優ちゃんはくのいち姿だった。
さしずめじいちゃんのコレクションを借りたんだろう。
「えへへ〜。どう?似合う?」
「に、似合うけど……」
ちょっと露出度高いのでは?
「ふっふっふっ、驚いておるな。」
よく見ればじいちゃんまで忍者姿。
そういえば僕も昔着せられたっけ。
多分その時の写真がアルバムにあると思う。
「これで優もお色気のじゅ」
「あ、母さ―――」
ゴオォオォォォオォン
その日僕の家には大きな大きな音が響いた。




