第11話:クラスメイト
ホームルームも終わり、一時間目までのわずかな休憩時間へとなった。
やっぱり優ちゃんはクラスのほぼ全員の人に囲まれて質問責めにあっていた。
なぜか佐藤がしきっている。
僕は人垣のわずかな間から見える優ちゃんを離れて眺める事しかできなかった。
「大変だね、優ちゃんも。」
僕の心を見透かすように話しかけてくる人がいた。
僕はその、温かみのある声の方を振り向いた。
そこには苦笑気味の北原さんがいた。
実は北原さんは僕が密かに想いを寄せている人だ。
だって勉強はできるし器用で優しい。
もちろん可愛い!
僕にとって憧れの人なんだ。
「あれじゃなかなか話せないね。」
北原さんはやっぱり苦笑しつつ言う。
北原さんはおとなしく、引っ込み思案だ。
まぁ、僕も人の事を言えないけど。
そのためか、僕たちが話す事なんて滅多にない。
でも、今日は『優ちゃん』という話題がある。
たとえ話す内容が何でも、北原さんと話せるなんてすごくうれしい。
「そういえば中川くんと優ちゃんは一緒に住んでるんだっけ?」
「あ〜〜、うん。」
やっぱり一緒に住んでると誤解されちゃうのかな。
「毎日楽しそうだね。」
「まぁ確かにいろいろあったけど…」
僕は言葉を詰まらせてしまった。
そんな情けない僕のせいで、北原さんも黙ってしまった。
僕も何をしゃべっていいかわからずに黙ってしまった。
そうして二人で黙っていると、横から微妙にヒステリックな声が聞こえた。
「ま、まさしくあの子は霊よ!」
優ちゃんたちの所まではその声は届かなかったようだ。
しかし、僕たちの所には確かに聞こえた。
「あの子は霊に違いないわ!わたくしの霊感がそう叫んでいますわ!」
そう主張する女子の名前は林田 乃理子さん。
(自称)霊能力者だ。
基本的にはただのオカルト好きな人なんだけど、もしかして本当に霊感を持ってるのかな。
「やだぁ〜、乃理子ちゃんったらまた〜。」
北原さんはあくまでもいつものウソだと思ってるらしく笑いながら言った。
「それは優ちゃんに失礼だよ。ねぇ、中川くん?」
「え?ぁ、うん…」
い、言えない。
優ちゃんが幽霊だなんて……。
「いいえ!間違いなくあの子は霊だわ!!」
そう主張する林田さんに賛成する人もいた。
「そ、そう言われればそんな気もしますね!」
メガネをくいっ、てしながら言う男子は田辺 和夫。
彼も林田さんに負けず劣らずのオカルトマニアだ。
彼の話では、昔宇宙人に連れ去られそうになったとかなってないとか……。
「あの子からはなんか透き通った美しさを感じますね。」
そう言う田辺の顔が少し危ない。
なんてゆーか人として。
チラッと北原さんを見ると、苦笑しながらこっちを見ていた。
僕は、本当に優ちゃんが幽霊なだけに、なかなか笑う事ができなかった。
それからようやく学校が終わった。
僕はもう精神的に疲れきっていた。
いつ林田さんと田辺に優ちゃんの真実を知られてしまうのかと思うと気が気でなかったからだ。
「学校、楽しかったね。」
な〜んにも知らない優ちゃんが本当に楽しそうに言う。
「う、うん。」
単純な答えしか返せずに僕たちは家路を歩いていた。
これからこんな生活が続くのか。
…………。
ちょっと勘弁してほしいな、と思った一日だった。