第10話:学校
「おっはよーー♪」
今日も優ちゃんは元気だ。
少なくとも昨日の朝よりは元気だ。
学校に行けるのがそんなに嬉しいのかな。
優ちゃんの笑顔を見てると僕まで自然と笑顔になる。
優ちゃんの笑顔はそれほどまでに素晴らしいのだ。
『行ってきまーす!』
「はい、行ってらっしゃい♪」
僕にとっては10分ほど早く家をでた。
よほど張り切っているのだろう。
昨日はせっせと(どちらかというとルンルンと)用意してたからな。
僕たちは墓地を抜け、商店街の脇を通り、学校まで行った。
ちなみに学校までは歩いて15分ほどかかる。
まぁ平均的な時間だろう。
校門を通ると、同じクラスの人たちを数人ほど見かけた。
声をかけられると当然、
「あれ、その子誰だ?」
と聞かれる。
優ちゃんほどの可愛さを持つ女の子が学校にいるならば、男子は知らない訳がないだろう。
「えっと…僕の従姉妹だよ。」
僕は閻魔様が設定した優ちゃんの素性を、つっかえつっかえ説明した。
「神田優です。よろしくね♪」
優ちゃんはいつも僕に見せる笑顔をクラスメイトに見せた。
なんだか少し悔しかった。
「こ、こちらこそ…」
クラスメイトの佐藤はほんのり顔を赤らめながら言う。
……分かりやすいやつだ。
その後、佐藤と優ちゃんは楽しそうにおしゃべりしていた。
僕はそれを止めるように優ちゃんに言った。
「優ちゃん。職員室行くんでしょ?」
「あ、そうだった。じゃあまた後で会おうね、佐藤くん、明ちゃん。」
僕より佐藤の方を先に呼んだのが悔しかった(ような気がする)。
僕と佐藤は教室に入った。
入るやいなや佐藤が優ちゃんの事を話しだすもんだから僕は質問責めに会った。
「その子さ、可愛いのか?」
「そりゃ―――」
「ムチャクチャ可愛いぜ!」
なぜか僕の代わりに佐藤が答えた。
『えーー!!すっげーいいなぁー!!』
周りの男子は僕を見ながら言った。
僕はうれしいような、残念なような微妙な気分でいっぱいだった。
「でもこのクラスじゃないかもしれないよ。」
「あー、そうかー。」
数人の男子は本当に残念そうだった。
それから先生が来て、朝のホームルームが始まった。
「……だから今日は…ん?どうしたんだ、今日はみんな目が違うなぁ。」
「先生!」
クラスの中でもお調子者と言われている谷本が立ち上がった。
「今日俺たちのクラスに転校生はくるんですか!?」
「おぉ、よく知ってるな。そうだ、お前の言う通りこのクラスに転校生が入るぞ。」
先生は
「入っていいぞ」
と言うと、やっぱり優ちゃんが入ってきた。
そして『おーー』という声が聞こえた。
なんだかおもしろくないホームルームだった。