▼毒と悪意
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ありがとうございます。
悪意はいつ、どこで買うか判らない。
なら、それを逆手にとれば、ある程度は予想できるだろう。
息苦しさを感じ、朦朧とした意識で瞼を開けば、見覚えのない天井が目に入った。
それを不思議に思い、起き上がり、自分の状況を確認しようと思った。
だけど、それは適わなかった。
「・・・・・・っ」
声を出そうにも、それも叶わなかった。
出るのは苦しい吐息と、咳だけ。
「リリー、目を醒ましたのね?あぁ、良かった。リリー。」
動かない右手を包み、瞳を真っ赤に染め、私を見下ろしてるのはサラ様とアン達だった。
みんな疲労がたまっているのか、髪も化粧もボロボロだった。
ここは何処?
そして、なんでみんなそんなに泣きそうなの?
私は平気よ。
「リリー?どうしたの?まだどこか苦しいの?」
「リリー、まさか、声が出ないの?」
「そうなの?リリー」
サラ様、アン、ローズが立て続けに私に詰問する。
その三人の興奮を落ち着かせるように、メリッサとルエナが仲裁に入る。
「サラ様、落ち着いて下さい。」
「そうですわ。辛いのはリリーなんですもの。五日間も生死の境をさまよったんですもの。私達が騒ぐだけ、リリーは心配しますわ」
メリッサとルエナの二人は、私達グループの中では、どちらかといえば精神的に人を追い詰めるタイプで、口で敵う令嬢はいない。
この二人もまた、深く、誰にも言えない事情を持っている。
「でも、リリーはっ!!リリーは、私のせいで、私のせいで、あの性悪王女達に!!」
「サ・・・ラ様ッ・・・。」
それは違う。否、例え真実がそうであっても、それ以上口にしてしまえば、いくら公爵家の令嬢とは言え、無傷ではいられない。しかもサラ様は今、微妙な立場に立たされている身。
掠れ、ヒリついた喉から発せられた声は、サラ様達の顔を益々不安に染めてしまった。
「リリー、無理しないで。今、侍医を呼ぶから」
「いや、その必要はない。」
サラ様が呼び鈴を鳴らそうとした時、聞き覚えのある声がした。
それは私が倒れる前に、サラ様に暴言を吐いた人のものだった。
その声が部屋に響いた瞬間、サラ様の纏う雰囲気がどこか変わった。