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あなたと恋のワルツを  作者: 杏美
4/14

▼波乱の種-3-

60件到達。

ありがとうございます。

 ――災いは忘れた頃にやってくる。

 


 昔、そう私に教え、諭してくれたのは、栗色の髪を持つ優しげで儚げな、美しい女の人だった。


「聞いたわよ?アスカール侯爵様と婚約されるんですってね?おめでとう、リリー。」


「サラ様・・・。」


「あら、どうしたの?いつもの貴女らしくないわ、リリー。」


 今日はジェーン侯爵家でのパーティー。

 いつものメンバーと顔を合せるなり、私は皆から心配された。

 

「そうよ、いつもの貴女はどうしたのよ。」


 そうよ、そうよ、と、他のご令嬢方も声を合せ、私の様子を案じてくれる。


「ありがとう。心配してくれて。でもね、私、自分でもどうしていいか判らないの。」


 それを有り難く思いながら、扇をファサファサと扇ぎ、パサリと畳むのを何度も繰り返す。


 婚約だなんて早すぎる。

 それに婚約相手があの侯爵だなんて・・・。


「リリー、貴女はやっぱり私たちのリリーね。」


「普通なら、自慢するのにね。なんてたって、あのレヴィエ様と婚約ですもの~」


 どうにかならないかと苛々としている私のすぐ傍で、代われるものなら代わりたいわ。と、ころころと笑う彼女達を苦々しく思う。


 そう思っているのなら、是非とも代わって欲しい。


「なら、代わって下さるのかしら?アン、ローズ、メリッサ、そしてルエナ。」


「「「「絶対に嫌ですわ。」」」」


 そしていざ話を振れば、けろりと拒否する彼女達は、それぞれ好きな人がいる。

 ドーニス公爵令嬢であるサラ様も、王太子妃候補の一人として選ばれている。

 先日いじめていたご令嬢も、候補の一人だったらしい。


「私の夢はハーラント領で静かに暮らす事なのに・・・。」


「諦めなさい。それが貴女の役目なのだから。」


「なら、サラ様こそ、殿下から嫌われる様な事、やめたらどうですか」


 むむむ、と、いがみ合う私と、ドーニス公爵令嬢。


「それは出来ない相談ね、リリー。私は私を必要としてくれて、サラという『私』を愛してくれる人が好きなの。だから何がなんでも嫌われてみせるわ。」


「それなら私だって普通の人と結婚したいんです。誰があんなきらきら光って、夜光虫みたいに目立つ人なんかと!!」


 パーティーそっちのけで、本気で言い争う私とサラ様。


 周囲の目線も気にせず、派手にやり合う。


「だいたい、私みたいな女が侯爵と婚約したらどうなります?間違いなく笑い物だわ。」


「それなら私だって、勝手に候補の一人にされた時、どんなに悔しく惨めだったコトか!!あの方は私の気持ちを知っているくせに、何にも言わないんですのよ!?」


「好きでそうなったわけじゃないのにっ!!」


 ガシッ。


 両手を組み合わせ、瞳を合せ、ひしっと、抱き合う。


「「理不尽極まりないですわ(ないわ)!!」」


 言いたい事を言い終えた私とサラ様は、荒い呼吸を整える。


 パチパチと、何処からか拍手の音がして、私とサラ様は同時にその音の方へ振り向き、顔を引き攣らせた。


「ね、ねぇ、リリー」


「はい、何でしょうか、サラ様。」


「あ、アレッて・・・」


 顔色はお互い蒼白だったと思う。

 アン達も気まずいのか、やや逃げ腰だった。


「・・・、逃げるわよ。」


 サラ様の決断は早かった。


 走る事に適さないヒールの高い靴を脱ぎ、ドレスの裾を持ち上げ、私達は一斉に逃げだした。

 

 なんでこんな処にとか、どうしてだとか、そんな悠長なこと、考えたり思ったりしてられなかった。

 敵前逃亡。

 まさしく、今の私達はそれだった。



「逃げられちゃったねぇ~、レヴィー」


「・・・、殿下。」


「判ってる。そう睨むな。」


 クスクス笑うこの人は、本当に性格が悪い。

 皆、この笑顔に騙され、破滅させられていくのだ。

 その殿下に好意を抱かれているとは露と知らず、公爵令嬢は日に日に性格が歪んでいく。


「それにしても、随分嫌われてるな、レヴィー。」


「レヴィー、お前なんか嫌われる様な事でもしたんだろう」


「「「「それしかない!!」」」」


 声を揃えて勝手にそう断じたのは、あの公爵令嬢と、吊り目の少女達の周りにいた令嬢達に求婚を目論む貴族の子息達。


「・・・・・・。」


 すぐに反応出来なかったのは、逃げられた事に驚いたから。

 決して悲しんだりなんだリと言うものではない。


 だいたい、今回の婚約は政治的なものであり、甘い感情は伴っていない。


 それにそんな感情は、とうに10年も前に失くしてしまったのだから。


 今となっては、もう鮮明に思いだせない過去に、少しだけ胸を痛め、瞳を閉じ、重い溜息を吐いた。

 

 何処が波乱の種かは分からなくなってきましたが、更新します。

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