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あなたと恋のワルツを  作者: 杏美
12/14

▼婚約者の過去

 命を奪われた神官は、神官としては未だ新人と言って良いほどの青年で、若いながらにも多くの人々に慕われていた神官だった。


 その彼が殺された原因を探る様にと、国王陛下より直々に命じられた私は、彼に特に目をかけていた神官長との面会を願い出て、顔を合わせるなり、殺された彼の私物の提出を求めた。


「サイラス下級神官の私物、ですか?」


 だが、神官長から返ってきた答えは。


「サイラス下級神官の私物は、嘗てのご婚約者様と、そのご家族の方が全てお引き取りになられましたよ。お可哀想に。お嬢様は当分立ち直れませんな。」


 殺害された神官の嘗ての婚約者と、その婚約者の家族に引き渡したというものだった。


 だが、私はそれをすんなりと信じる訳にはいかなかった。何故ならば彼が殺害された事は、極一部の人間を除き、未だ秘されているままだったからだ。


 それなのに何故、嘗ての婚約者が遺品を引き取りに来る事が出来たのか?


 ――疑わしきは罰せよ。



 王太子が常に口にしている言葉が一瞬、頭の中でよぎった。と、その時。


「レヴィエ殿。御令嬢のご家族は決して疑ってはなりませぬぞ。彼らは間違いなく被害者ですからな」


「ですが、」


「レヴィエ殿、あなたはご自分のご婚約者様とご家族様を疑われるのですかッ!!」


 大喝だった。

 私はそれにも驚いたが、神官長の言葉になおさら驚いた。



 何故ここで、私の婚約者が出てくる?



 驚きで声が出ない私に、神官長は顔を歪め、顔を逸らした。おそらく激情のままに口にしてしまった事を悔いているのだろう。


 神官はいかなる時でも平等で冷静であれ、と言われている。なのに、今回のこの失態。


「サイラス下級神官は、三年前のある日までハーラント家に騎士として仕えていたのです。歳が近い事もあり、サイラス下級神官とご令嬢は自然と恋仲になり、婚約を交わしましてな。それがあの忌まわしい事件で・・・、」


 だが神官長はすぐに持ち直し、切々と子爵家は被害者なのだと私に訴え続けた。そして神官長は最後にこう締めくくった。


 サイラス下級神官は、三年前の口封じで殺害されたに違いないのです、と。



 もしそれが真実であるのならば。


「婚約者、か。」


 神殿の帰り、夜空を見上げれば、星は空で燦然と輝いていた。

 まるで何かを探し出し、真実を照らすように。


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